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近未来ヒト型戦闘兵器ジャナンジャー  作者: 三鷹たつあき
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Episode 2 こどものつとめ おとなの仕事

 翔はマスコミというものに大きな疑問を感じていた。いや、仕事をするおとなというものすべてに怪しさを感じていた。人が「もの」の近くにいるということは、その命が狙われる可能性が非常に高い。なぜ、命を賭けてまで報道という仕事をする必要があるのだろう。おとなにとって仕事とは一体なんなのだろう。翔にとって仕事とは人命を守ることである。「もの」を殺すことは二の次なの。人々が「もの」を怖れて、その場から逃げきってしまえば敵を殺す必要はない。ただ、追い払えばいいだけなのだ。人の命を失わないことが一番肝腎な使命なのだが、おとなはなにを考えているのか危険の前に身を晒そうとする。それが勇気であり、美徳であると思っているようにすら見える。命と引き換えても仕事をまっとうすることを優先しているようだわ。おとなが愚かな行動をとらなければ、翔は戦わなくても、殺しもしなくてよいのだ。つまり翔は自分の命まで掛ける必要はないのだ。ただ、おとなはそれでは満足しない。翔とものの戦いを期待する。「もの」の殲滅に期待する。おとな達は自分が死ぬかもしれないという自覚があるのかどうかは知らないが、彼等が自分の身を守るという行動をとらないから翔は仕方なくものと命を懸けて戦わなくてはならないの。翔はまるで自分がおとな達の商売道具になっているようだと無念を感じる。おとなも仕事よりも命を大切にしたらよいのに。時々おとなが嫌になる。


 そして、翔は再びジェット機に乗せられてクリプジオンの本部に帰る途中で独り言を言うのよ。

「今日も死ぬかと思った。ギリギリ勝てた。人を喰らう「もの」から多くの人を守れた。また殺した。人を守る為にはなにを処分してもいいんだよね。人を守る為に敵を殺した僕は褒めて貰えるこどもなんだよね。胸を張っていいんだよね。」 

 

 あたしはおとなから期待されることも励まされることも嫌いだった。翔は逆にそれを望んでいるみたい。


 おとなはこどもに将来の夢や目標を持つことを期待する。いや、強要する。自分の目標をはっきりさせて、それに向かって努力するのがこどもの務めだと思っているようだわ。そんなおとながあたしは大嫌いだった。あたしはおとなになってもこどもにそんなことを要求するおとなにはなりたくなかった。もしもあたしがおとなになるまで生き続けられるのであればこどもにはそう接したいと思っていた。


 こどもに未来の夢や目標を持たせることが厭わしかった理由。ひとつは、こどもはもっと自由な生きもの。明日には今日まで興味のなかった将来に夢を見るのは当たり前のこと。ひとつは、こどもは未来の為に生きているのではないということ。こども達は今日一日愉しければそれでいいの。あたしももちろんそうだった。未来の自分より、今日の自分を大切にしたいの。その理由のひとつは、あたし達がおとなになるまで生きているとは信じられなかったから。人はいつどこで死ぬのか分からない。そんなあたしが将来への投資ばかりに気をとられてしまうのがバカバカしいから。あたしは、捻くれた女なのかしら。別にそう思われても構わない。誰に説教されようともあたしは今日より未来を大切にしようという考えを死んでも受け容れることはない。明日が今日よりも幸せなわけがないわ。今日がこんなに素晴らしい日だったのだから。明日が今日よりもっと素晴らしい日であるなんて過剰な期待。明日は今日よりずっと虚しい日。あなたも未来に期待しない方が幸せに生きられると思うけど。

 

 ジャナンレッドを身に纏う神谷翔は動植物に感謝しつつ、その命を頂こうという思想を広めた神谷啓の息子。翔は幼い頃から父が語る人がものを殺して喰うべきだという思想を聞かされていた為、必要があれば生きものを殺すことに抵抗はなかった。


 「もの」は、人を喰らおうとする存在なのだ。それから人の命を守る為に戦うことは卑しいことではない。ただ、抵抗がないこととすすんで取り組むというのはまったく違うことなのよね。翔は「もの」ですら殺したくはなかった。ただ、「もの」より人を上に置いているだけ。人の命を守る為の理由が必要なの。もしも、翔が人より「もの」を上に置いたら?今はやめておきましょう。そんな怖ろしい話は。


 翔はあたしと同じで自分に、自分の行動に自信を持てない性質であったが、自分や他人が納得、満足する行為は思い切ってやり遂げようと努力する。そこがあたしと大きく違う。自信を持ったときの翔はみなもとの中でも随分と高い戦闘力を発揮するの。もともと有能なみなもとであるのに、自分に自信がないのでそれをなかなか発揮出来ないだけなのね。

 

 翔は人がもっとものを怖れなければならないと考えている。助けてくれと叫んで欲しいのだ。「もの」を殺して欲しいと願う人の声が聞こえれば自信を持って戦えるのだからね。

 

 自分に自信がないのはあたしも翔も一緒だけれど、あたしは翔とは違って誰かの為に生きるのが嫌いだった。他人に期待されると吐き気さえした。あたしを見て誰かが悦ぶ顔を見るのも好きではなかった。笑って欲しかったのは友達くらい。だから自分の価値は小さなものだと思い込んでいた。そのことが恥ずかしいとか情けないとはまったく感じなかった。誰かに褒められたり、感謝されるだけで気持ちがよくなる翔のことが少しだけ疎ましくて羨ましかったわ。


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