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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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9 深海の青と、炎の夜


 今夜は夜襲。

 明日のご飯のために、私はがんばる。


 レオンは私を落とさないように、紐で自分の身体にしっかりと固定した。


 レオンの指先は驚くほど丁寧で、でも迷いがなかった。


 ぎゅっと結ばれる感触がして――なんだか子連れ侍みたいだ。やっぱり、パパと呼びたい。


 「きつくないか?」


 短く、それだけ。

 私はこくりと頷く。


 「……パパと呼ぶなよ」


 んっ?

 気付かれた?

 心読まないで!


 呼びたくなるでしょう。これじゃあまるで子連れ狼よ!


 ”ちゃん!”


 まっ、仕方ない。明日のご飯のためだからね。


 準備ができ次第、全員で里の外の草むらへ身を潜め、時を待った。

 空気が張りつめている。レオンの体温だけが妙にあたたかくて、私はその胸にしがみついた。


 しばらくすると、屋敷に忍び込む複数の影が見えはじめる。

 闇を裂く合図とともに、火矢が放たれた。


 ――一瞬で火の海。


 敵は味方の火矢だと思ったのか、ほんの一瞬だけ戸惑いの動きを見せた。

 その隙を逃さず、外に潜んでいた影達が滑るように闇へ溶け、火矢を放った者たちから順に倒していった。


 (さすが影達……鮮やかすぎない?)


 影の里に夜襲なんて――一体だれよ?


 無謀すぎるでしょ?


 逃げ惑う敵は次々と拘束され、最後までこちらへ向かってきた数名だけがレオンの前へ残った。


 レオンのまとう空気が変わった。


 ひやりとした気配が一瞬で場を冷やす。

 深海のような青い瞳が、すべてを閉ざしていた。


 レオンは一言も発さず、ただ淡々と、容赦なく刀を振り下ろした。


 鋭い音が夜を裂く。


 刀が空を切る音がして、風が頬を撫でた。


 私は怖くて、ぎゅっと目をつむる。


 前世は平和な時代に生まれたから、殺傷沙汰は苦手なの。


 中身大人でも無理なものは無理!


 「……もういいぞ」


 レオンの低い声に、そっと目を開けると、すべてが終わっていた。


 煙の匂い。

 夜風。

 レオンの鼓動。

 動き回る人影。


 皆、無事みたい。


 そう思った瞬間、胸の奥がふっとゆるむ。


 安堵すると、その全部が心地よくて……私は眠気に包まれていた。


 ――でも、火は止まってくれなかった。


 影達が次々と敵を縛り上げていく一方で、屋敷の方では炎がどんどん大きくなる。ぱちぱちと乾いた木が弾ける音が夜気に響いて、あっという間に半分ほどが崩れてしまった。


 「レオン……!このままだと全部燃えますぜ!」


 誰かが声を上げる。


 そりゃそうだよ。

 ……だって、思いっきり火を付けたんだもん。


 レオンは腕の中の私を支え直し、燃え上がる屋敷をじっと見つめていた。


 「……仕方ない。火の回りが予想以上だな」


 低い声でそう言ってから、皆の方へ向き直る。


 「全員、負傷者を確認しろ。生きている奴は縄をきつくしておけ。――それと」


 そこで一拍置き、ちらりと屋敷を見る。


 「燃える前に運び出せる物だけ持ち出す。急げ」


 忍び達が一斉に散っていく。


 私はその肩越しに、赤い炎が夜空を舐めるのをぼんやりと眺めていた。


 炎は夜空を食べる獣みたいに、屋敷を飲み込んでいった。


 「明日からどうします? ここじゃもう暮らせませんぜ」


 忍びの一人が戻ってきて、焦った声で言う。


 レオンは短く息を吐いた。


 「こういうときの準備はすんでいる。そうだろ?それに夜襲は成功したと思わせておけば良い」

 「つまり、襲った奴らも全員全滅したと?」

 「そう言うことだ。ノブを連れてこい」


 縄でグルグルに拘束されたノブがレオンの前に転がされた。


 「お頭の命令だな」


 レオンの低い声にノブはガタガタと震えながら頷いた。


 「お頭は、誰についた」

 「知らねぇ。ただ、出世させてやるって言うんで。それにレオンは、この世には、もういないはずだとも」


 ああ、やっぱりあの罠はお頭の仕業だったんだ。


 ぼんやりとレオンの懐から彼を見上げるけど、表情は読めなかった。影となる者は感情に蓋をしているからだ。


 「お前が生き延びたければ、俺たちは全員始末したと言え。相打ちだったとな」


 レオンは片手でノブの顎を掴んだ。


 「いやなら、明日の朝は拝めない」

 「レオン、こいつ殺さないんですか?」

 「いつまた、お頭が仕掛けて来るとも限らない」


 そこまで聞いて私は納得した。ノブを二重スパイにするつもりなんだ。


 お頭の行動がおかしな事は、レオンならとっくに気が付いていただろう。皆を守るためにはいい方法だと思う。さすがのノブも、もう裏切らないだろう。全部バレちゃっているからね。


 こういう小者は、強いものにつく。

 ……少なくとも今は、レオンの方が上だ。


 ノブはほっとしたように頷いた。死ななくて済んだんだからね。


 いつの間にか、皆の頭上からポップアップが消えていて、

 私は心の底から安心した。


 これで明日のご飯も美味しく食べられる。


 最後に、ただの親切で言ったの。


 「明日は皆でご飯たべりゅの。うちのご飯は美味しいの」


 ニッコリ笑うと、私は至極満足して眠気に身をゆだねた。


 レオンの鼓動が子守唄みたいで、私はそのまま落ちていった。


 ルリア3歳今日も良いことをしました。


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