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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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24 ~謎の美女・トメ夫人~


 カステラ屋さん開店に向けて、影たちが新たな修行を始めます。

 “トメ夫人”という名前には、ルリアだけの秘密があります。



 私はルリア3歳。カステラ屋さんを計画中。

 

 私の趣味……いえ、実益を兼ねた趣味です。


 「みなしゃん。お話がありましゅ」


 いつものように影たちを食堂に集めた。


 「今日は、みなしゃんの隠密スキルを上げるお勉強を始めましゅ」


 「隠密スキル?」

 「スパイのことか?」

 「潜伏だろうな」


 「先生を紹介しましゅ。トメ夫人です。どうじょ」


 私が入り口を指すと、鈴の音を微かに響かせ、しずしずと1人の踊り子が歩み出た。


 アラビアンナイトの踊り子のようなゆったりしたパンツに、ふんわりとしたベール。怪しげな鈴の音がする腕輪を付け、腰をくねらせるその姿は、どこから見ても妖艶な踊り子だ。


 「およっ……!? ここまでとは思っていましぇんでした……!」


 自分で頼んだものの、まさかここまでの仕上がりとは思わず目を見開いた。


 「うわっ、懐かしいぜ、おさの女装かぁ~」

 「相変わらず、うなじのラインまで完璧だな……」

 「ビビるぜっ」


 次々に皆が声を上げる。そうか、5年前まではこうして潜入のイロハを子供たちに教えていたんだね。


 それにしてもあのトムじぃが……。

(さっきの踊り子、正体はトムじぃだ)

 このクオリティーは凄すぎる……皆はどんな美人さんになるのかしら?


 想像しただけで、ほっぺがゆるんでしまう。

 思わずニマニマしてしまった。


 「姫様、俺たち女装して潜伏ですか?」


 一番元気なクーガが手を上げた。


 「半分正解でしゅ。女装してカステラ屋さんをはじめましゅ」

 「カステラ屋さん? ですか?」


 「では、後ろの衣装に着替えてくだしゃい。一番きれいにできた人にはスタンプ押しましゅ」

 「スタンプ案件ですか?」

 「はい、そうでしゅ」


 食堂が一瞬ざわっとどよめいたと思ったら、私が言い終わらないうちにみんなあっという間に着替え始めた。

 後方の棚には、手鏡とお化粧道具も用意してある。


 「れおも、でしゅよ」


 レオンは感情のない冷たいまなざしを私に向けると、あっという間に旅芸人の踊り子へと変身した。


 「ふほぉぉ~~、きれいでしゅ」


 私がため息をつくと、レオンは心底嫌そうにそっぽを向いた。


 こんな塩対応の踊り子さんがいたらみんなメロメロになるんじゃないだろうか?

 ——近寄ったら刺されそうなのに、

 それでも目が離せないタイプだわ。


 「みなしゃん、できましたか」


 振り向いた私は、

 思わず小さくつぶやいた。


 「……これは売れましゅ」


 「姫様……どうでしょうか……」


 最初に出てきたのはクーガ。

 ふんわりスカートに三つ編み、やけに似合っている。


 その後ろから、静かに歩み出たのはギンだった。


 「……ギン?」


 「はい、姫様。毒草をモチーフにしてみました」


 ギンの髪飾りには、よく見るとトリカブトを模した布花がついている。

 色合いも深い紫で統一されていて、妙に完成度が高い。


 「ギン……それ、毒でしゅね?」


 「美しいので」


 即答だった。

 トメ夫人が「なんでそんな危ないもんつけてんだい」と額を押さえる。


 続いて、勢いよく飛び出してきたのはウィズ。


 「姫様っ! 見てください! この衣装、魔道具を仕込むスペースが、完璧なんです!」


 「ウィズ……女装でしゅよ?」


 「はい! でも魔道具はロマンです!」


 腰のリボンの裏に小型の魔道具がぎっしり詰まっている。

 レオンが眉をひそめた。


 「……お前、それで踊れると思ってるのか」


 いや、カステラを焼くだけだから踊らない。

 そう思ったけれど、少年たちのやる気に水を差すのはやめておいた。


 「踊れます! むしろ魔道具で補助できます!」

 「黙れ」


 一瞬のうちに冷気が部屋を包む。

 彼らは全員、静かに「隊長を怒らせてはいけない」と学習した。

 レオンの冷たい一言で、ウィズは胸を押さえて崩れ落ちた。


 「ひ、ひどい……でも尊い……!」


 影たちがざわつく中、私は小さな手を叩いた。


 「みなしゃん、とってもきれいでしゅ! では、これからカステラ屋さんの練習をしましゅ!」


 「「「お、おう……!」」」


 女装した影たちが、ぎこちなくも真剣に頷いた。

 その中でギンは毒草の髪飾りを整え、ウィズは魔道具のスイッチを入れようとしてトメ夫人に止められていた。


 「ウィズ、それは押しちゃダメでしゅ」


 私も慌てて声を出す。まさか爆弾?


 「はっ……はいっ!」


 こうして、カステラ屋さんの女装潜入訓練が始まった。


 「隊長、うなじキレイっす」


 ギンが赤い顔をしてレオンを見上げて、ボコられていた。


 あらっ、いけない扉が開く予感がしましゅ……ふふふ。


 「お嬢様。この子たち、飲み込みが早いので、これなら1週間もあれば、街のどんな噂話もカステラの匂いで釣り上げられるようになるでしょうな」


 「期待してましゅ、トメ夫人」


 私は腕を組み、皆を見渡す。

 これで、カステラ屋さんは順調に開店できるわね。


 「よくできた人にはスタンプを3個押しましゅ」


 「「「「「「やったぁ!!!」」」」」」


 影たちの声が部屋中に響き渡った。

 スタンプカードの威力は計り知れないのだった。


 ちなみに「トメ夫人」という名前には、

 私だけが知っている秘密があります。


 それは――


 もう少し先のお楽しみ。


 ……ふふふ。


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