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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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22 倍返しでしゅ!


 子供をナメるとどうなるか、教えてあげましゅ。

 3歳児、ギルドマスターの家庭事情を暴露するの巻。


 子供をカモにするなんて許すまじ、ギルドマスター!


 私はルリア3歳。15歳のレオンとギルドマスターと向かい合っている。ぽこんとお腹の出たギルドマスターは、どう考えてもレオンの敵ではない。


 でも、ここでぶちのめすわけにはいかないのよ。

 そこが頭の痛いところ。


 「昨日のお夕飯は、トマトのスパゲティーだった。お肉は入っていなかったでしゅ」


 ギルドマスターは口ひげを撫でていた手を止める。はて? うちの夕飯と同じとでも思ったのかしら?


 「本当はミートスパゲティーだったのに、息子がお父さんが帰ってくる前にお肉を全部食べちゃったからでしゅ」


 「……気の毒な家ですな。我が家はそんなことはないですな」


 ギルドマスターは書類の束をトントンと机の上で揃えた。

 彼は平静を装っているけれど、私は見逃さなかった。揃えたはずの書類の角が、微妙にズレている。


 ふふふ、動揺していましゅね。


 「情報はパワー」でしゅ。


 たとえ夕飯の献立みたいな小さなことでも、

 筒抜けだと思わせるだけで人の心は折れるものでしゅ。


 さあ、ここからが本番でしゅ。


 「息子はお父さんが帰ってくる前に、お父さんの大事にしている年代物のワインを全部こぼしてしまった。昨日は珍しく奥様が白ワインを勧めてきた。いつもお酌は手酌だった。でも昨日は違った。そうでしゅね」


 「はっ!? それがどうした。どこの家も同じようなものだ」


 ギルドマスターの額にじわりと汗が浮かぶ。

 手に持った書類が、かすかに震えていた。


 ギルドマスターは書類を机に置き、落ち着かない様子で口ひげを撫でだした。


 「左のお尻のほっぺにほくろがありましゅ」


 ギルドマスターは口ひげを撫でる手を止めた。

 部屋の空気が、ほんの少しだけ重くなる。


 「おくしゃまは、そこにハートマークを書くのが好きでしゅ」


 ギルドマスターは「はうっ!」と奇声を発し、口ひげを撫でる手を止めた。


 「ぶっ!」


 隣でレオンが吹いた。

 レオンは肩を震わせて笑いをこらえている。

 「続けていいぞ」と小声で囁いてきた。


 ギルドマスターの顔がみるみるゆでだこみたいに赤くなっていく。


 「だ、誰にもほくろはあるもんだ」

 「その人は自分のラッキーナンバーを決めていましゅ」

 「……何番だ」


 隣でレオンが面白そうに聞いてくる。


 「16でしゅ。本棚の右から16番目の本の16ページに何があるか知ってましゅ。いいましゅか?」


 バンッ!

 ギルドマスターが机を叩いた。

 部屋の空気がぴたりと止まる。

 真っ青な顔のギルドマスターが立ち上がった。ポッコリしたお腹がぽよんと揺れた。


 「もういい、何が望みだ」

 「遠慮しないでくだしゃい。まだまだつづきはありましゅよ」


 そう言って、ギルドマスターの後ろに掛けられた“あの絵”を指さした。


 ギンからの報告では、あの絵の裏には「とても人様には見せられない趣味の肖像画」が隠されているらしい。……前世でもこういう、表の顔と裏の趣味が違いすぎる人、何人も見てきたのよね。


 「……っ!!」


 ギルドマスターが椅子の角を掴んでガタガタと震えだす。威厳あるギルドマスターの「乙女な秘密」がバラまかれそうになる。


 ふふふ……面白いかも。


 ――けれど、それは彼にとって、社会的死を意味していた。何より奥様には知られたくないはず。


 頬がにやけて、ひくひくしちゃうわ。


 「わかった。報奨金は規定通りだ、受け取ってくれ」


 私がレオンを見ると、レオンは首を振った。


 「助けた人間1人につき、小金貨100枚だ」


 小金貨。この世界では小金貨が10枚もあれば、庶民なら1年は遊んで暮らせる。

 ……それが600枚。さすがにギルドマスターの顔が引きつるわけだ。


 おお、レオンいいふっかけ……いや、いい交渉術ではないですか。出来ればもっと早くやってくれれば、ギルドマスターも信号機みたいに赤くなったり青くなったりしなくて済んだのに……。


 「……6人分だと!? 小金貨600枚なんて、そんな予算がどこにある!」

 「本棚の16ページに書いてあった『予備費』なら、ちょうどそれくらいだった気がしましゅが……?」


 私が小首を傾げて追い打ちをかけると、ギルドマスターはついに白目を剥いて、そのまま魂が抜けたように動かなくなった。

 ……あ、やりすぎたかしら。

 本当に今この瞬間に全額金庫から出させたら、このおじさん、ショック死するか破産してギルドが潰れちゃうかもしれない。


 それはそれで困る。私の「銀行」代わりになってもらわないと。


 「……まあ、いいでしゅ。おじさんが可哀想になってきまちた」

 「えっ……?」


 ギルドマスターが、微かな希望を見出したような目で私を見た。私は指を3本立てて見せる。


 「今日持って帰るのは、半分の300枚だけでいいでしゅ。残りの300枚は、このギルドに『預けて』おいてあげましゅ」

 「あ、預ける……?」

 「そうでしゅ。私が大きな買い物をする時まで、ギルドで管理しておいてくだしゃい。……もちろん、タダでとは言わないでしゅよ? ギルドの運営資金に回してもいい代わりに、私が使う時は優先的に便宜を図ること。それと、多少の『色(利子)』をつけてもらいましゅ」


 ギルドマスターは、一瞬だけ安堵の表情を見せたが、すぐに「結局は逃げられないのか」と悟ったように深くため息をついた。それでも、今すぐ600枚を現金で用意するよりはマシだと思ったのだろう。ガタガタと震える手で、彼は承諾のサインを書いた。


 「……影ってのは、あんなに恐ろしいもんだったか……」

 ぽつりと呟く声が聞こえた。

 ギルドマスターは、恨めしげに顔を上げ、私が指さした絵をそっと見上げて震えた。


 「……あれも、見たのか」

 「ひ・み・つでしゅ」


 レオンが肩をすくめ苦笑した。


 「ルリアに逆らうからだろ」

 「では、現金の300枚だけいただきましゅ。あと……ミルクティーも飲みたいでしゅ。おじさんのおごりで」

 「なぜここでミルクティー……それに俺の財布まで狙うのか……」


 ギルドマスターが呆れた声を出す。


 「勝利の味でしゅ」


 私はミルクティーで勝利を祝うとギルドを後にした。


 部屋を出たところで、レオンがぽつりと言った。


 「……おまえ、やっぱり頭いいな」

 「当たり前でしゅ」


 胸を張ると、レオンは小さく笑った。


 下の受付で、受け取りの順番を待っていると、店内が気になった。


 活気があっていいわね。にぎやかな店内を眺めていると、ふと別の考えが浮かんだ。


 こんなところでカステラ屋さんを始めたら、きっと売れるんじゃないかしら?


 入り口から外を見ると気になる看板が目に入る。


 『貸店舗あり』


 これはもう、運命ってやつじゃない?


 「カステラ100個……ううん、カステラ御殿も夢じゃないでしゅ!」


 ここにしよう!


 また一つ良いことを思いついた。





 ギルドでの小さな攻防戦、楽しんでいただけたら嬉しいです。

 次は、ルリアの新しい思いつきが動き出します。お楽しみに。


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