19 唐揚げパーティーと人生三周目の疑惑
今日は唐揚げパーティー回です。わちゃわちゃ感をどうぞ。
今日は唐揚げパーティーをするんだ。
いわゆる、ご苦労様会ね。
入り口には、「祝・大作戦成功!」と書いた垂れ幕を飾った。
「あいの逃避行大作戦、大成功……でしゅ!」
ギルドマスターが言っていた「6人が同時にいなくなった」という事件。ギルドのみんなは深刻な顔をしていたけれど、その時、私にはピンときたの。
旦那様が家に帰ってこない。
それすなわち、浮気。
しかも6人も同時にいなくなるなんて、これはもう「集団駆け落ち」に違いないわ。
さすがに、その時に口に出したらレオンに「アホか」と言われそうだから、心の中にしまっておいたけれど……。
そして見事に私の勘は当たり、無事全員を保護したのよ。なんたって、6人は愛の証である指輪を作るために、自ら宝石採掘のために鉱山に行っていたんだから!
寝食も忘れて夢中になっていたらしく、鉱山の中で行き倒れていたらしいわ。
愛の力って、すごいのね!
そこを救出してきたのが私たち。バッチリ、行方不明者6名を連れて帰ったというわけ。
ふふふ、私の初手柄ね。
というわけで、今回は祝賀会のノリでやるんだ。皆でわいわいがやがやご飯を食べるのは楽しいに違いないわ。今日はトムじぃもテッドも、セバスチャンも呼んだの。
セバスチャンは忙しいみたいで、「お気持ちだけ頂きます」なんて言っていたけれど。
離れと違って母屋は色々大変なんだと思う。あの両親だからね。後でお裾分けだけしてあげようと思うわ。
今日のメニューは、チキンの唐揚げハニーマスタード添え。お芋のフライにケチャップ添え。かぼちゃのスープ。デザートは大好きなホットアップルパイのアイスクリーム添え!
テッドに教えるのは大変だったわ。特にチキンの下味をつけるのが珍しいらしかった。
出来上がりを味見して、彼は感動のあまりしばし固まっていた。壊れたネコ型ロボットみたいでおかしかったわ。これからも色々作らせちゃうんだから!
皆はテッドが料理をよそうワゴンの前に、トレーを持って一列に並ぶ。給食みたいで面白い。私はテッドの横に椅子を持ってきて監視する。影(護衛隊)の子たちは食い意地が張っているから、油断も隙もないんだから。
「押さないでくだしゃい。ちゃんとみんなの分はありましゅ!」
「姫様、お替わりありますか!?」
皆が口々に言う。はっきり言って、うるさい。
「静かにしないと、ありましぇん!」
あっという間に静まり返った。10代後半の少年たちなんだけど、まるで幼稚園児みたいで可笑しかった。この世界の子供たちは、精神年齢が低めなのかしら?
……いや、違うわね。この子たちは、孤独と死と隣り合わせで育ってきたんだわ。
そう考えると、皆を幸せにしてあげたい気持ちで胸がじんわり温かくなった。
その気持ちをそっと胸にしまいながら席に着くと、レオンに挨拶をさせる。
「隊長からの挨拶をお願いしましゅ」
レオンは立ち上がると、つまらなそうに言った。
「明日から訓練を再開する。2チームに分けて行うから。いいな」
そう、影たちは「のんびりしていると、テッド化(肥満化)してしまう」とレオンがぼやいていたの。それはちょっと失礼だと思うけど、特にレオンは暇すぎるらしい。
3歳の私の護衛なんてすることないものね。ほとんど出かけないし。
やっぱり、カステラ屋さんをやって、浮気調査をガンガンしないとダメだわ。私は心の中で、今後の計画を練っていく。
「あっ、お前の唐揚げ、俺のより大きくないか?」
クーガがウィズの皿の唐揚げをフォークで刺した。途端にウィズが「倍返しだ!」とばかりに、ジャックの皿から違う唐揚げを奪い取った。もはやあちこちでフォークが飛び交う奪い合いが始まったわ。
「静かにしろ」
レオンが低い声で言うと、皆がピタリと固まった。私はすかさず立ち上がる。
「騒ぐ人にはお替わりあげましぇん!」
ほんと、幼稚園児だわ。この子たちは手がかかる。それにしてもレオンは一番若いはずなのに大人だわ。それだけ死地を潜り抜けてきた数が違うのね。
しみじみと保護者のような気持ちでレオンを眺めていると、私の小さな頭にコン、と軽い拳が落ちてきた。
影たちがクスクス笑っている。
「……痛いじゃない!」
ポンポンといつも『もぐらたたき』みたいに叩くのはやめてほしい。背が伸びなくなったらどうするのよ!
恨めしげに見上げると、レオンは心底嫌そうに目を逸らした。なんなのよっ、一体!
「100歳のばばぁみたいな眼差しで見んのはやめろ」
「ひゃっ、100歳って何っ!?」
「お前、心は、ばばぁだろう。……たまに、人生3周目みたいな顔してるぞ」
口の端を上げて笑うレオンが、憎たらしい。当たらずとも遠からずなのが、余計に悔しいわ。
そんなにお年寄りじゃありません。ちょっと「お姉さま」なだけなんだから!
「れおには、お替わりなし、でしゅ!」
私が言うと、レオンは私の皿から唐揚げをひょいとつまんだ。
「なにしゅるでしゅか!?」
「お前がお替わりすればいいだろう」
「はいっ!? なんてことを……レオンは悪知恵の権化でしゅ!」
知らん顔で唐揚げを食べるレオンが、心底憎たらしかった。
私は自分のお皿を全身で隠した。
食べ物の恨みは怖いんでしゅからね!
ふんっ!
お読みいただきありがとうございます。
明日は夕方の投稿になります。
金曜の夜に、ちょっと笑ってもらえたら嬉しいです。




