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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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16/20

15 いざ、初任務へ出発! ――馬車はギルドの経費でしゅ


 今日は初任務! 馬車で出発したら、みんなの様子がなんだか変で……?

 姫様のロマンチック探しは、朝から迷走ぎみです。



 翌朝。ギルドで手配した馬車に乗り込み、私はワクワクと外を見つめた。


 お屋敷の立派な馬車はお父様やお母様が使っているし、そもそも公爵家の紋章入りで『愛の逃避行』の調査には行けないからね。ちゃんとした馬車に乗るのは初めてで、何もかもが珍しい。なんたって、いつもは荷馬車ですもの。


 レオンは「俺は馬で行く」と言って譲らなかったけど、私は馬には乗れないし、帰り道、みんなで一緒に戻るのなら馬車は必需品だ。


 結局、私とギン、ジャック、ウィズが馬車の中に乗り込み、御者台にはホルンとケルンの双子が座った。レオンとクーガは馬に乗って、周囲に目を配りながら馬車を護衛するように並走している。

 ギンはトムじぃのところにいるからちょくちょく顔は見ていたし、一緒に薬草図鑑を読んでくれたこともある。


 今日は朝からレオンが一言も口を利かない。機嫌が悪いのか、緊張しているのかどちらかだと思う。思い通りにならないと機嫌が悪くなる人って最低よね。特に集団行動ではね。

 

 窓にへばりついて外を見ていると、ギンが不思議そうに聞いてくる。


 「何か面白いものが見えますか?」


 この景色を愛の逃避行で眺めたなんて、ロマンチックのおすそ分けじゃないかしら? でもギンにそれを言っても無駄な気がした。


 ちょっと残念な気持ちでギンを眺める。


 ぼさぼさのグレーの髪の毛。


 絵を描いたら、ただの汚れにしか見えないレベルだ。

 見せちゃいけないところを黒塗りにするっていう、あんな感じだ。


 ロマンチックのかけらもない。


 まずは髪の毛をとかすところから始めたいわ。愛の逃避行のロマンが逃げていくから。


 「ギンにはまだ早いでしゅね」


 私が言うと目の前に座っている、ジャックとウィズが笑う。


 「俺達は、姫様より大きいですよ」


 私は胸を張って言った。


 「こころでしゅよ。まだまだ皆様はおさないでしゅ」


 なんたって私には前世の記憶があるんですもの。


 皆よりずっと年上なの。見えないかもしれないけどね。


 10代半ばの少年たちに、愛の逃避行はまだ早かったかもしれないわ。


 馬車が街道を外れ、郊外の道へ入ったあたりで、空気がふっと変わった。


 さっきまで笑っていた護衛たちが、急に口数を減らす。

 馬車の進みも、どこか慎重になった。


 「揺れが強いでしゅね」


 窓にへばりついて外を眺める私の横で、ギンがそっと窓の外へ視線を向けた。

 その目は、いつものぼんやりしたものではなく、鋭い。


 「……姫様。ここから先は、少し……」


 ギンが言いかけたところで、馬が短くいななき、馬車がぐっと減速した。


 御者台のホルンが振り返る。


 「レオンが速度を落とせって。道が悪いらしいっす」


 クーガが馬車の外からホルンたちに声をかけていた。


 道が悪い?


 愛の逃避行の舞台としては、ちょっとワイルドすぎる気がするわね。


 愛はどんな困難も乗り越えなきゃいけないっていう試練の道かしら?


 このぐらいで音を上げるようだったら来てはいけない、なんちゃってね!


 いつになくまじめな皆の顔が気になった。


 ――あれ?

 なんだか、みんなロマンチックな気分じゃないみたい。


 「……姫様」

 ジャックが小声で言う。

 「この先は、噂のある場所なんですよ」


 まるで秘密を打ち明けるようなその様子に、私の好奇心が刺激されて目が輝く。


 「まぁ……素敵! 愛の逃避行には噂はつきものなんでしゅよ」


 君達少年にはまだ早いんだけどね。心の中でつぶやいた。


 (違う……違うんだが……)


 ジャックのつぶやきは小さくて、よく聞こえなかった。


 馬車はゆっくりと、山のふもとへ向かって進んでいった。


 馬車が止まり降りてみると、そこは小高い丘の上だった。


 ――ふっと冷たい風が吹き抜ける。まるで空高く舞い上がった鷹が地上を見下ろしているような、開けた視界に目がくらんだ。


 眼下に広がるのは、まるで古代の遺跡が眠っているような、手つかずの雄大な景色だった。


 東側には鬱蒼とした深い森が連なり、西側は切り立った険しい岩肌がむき出しになっている。


 目を凝らすと、西側の岩山にはヒビのような無数の穴が開いていて、東側の森に覆われた山肌には、ぽっかりと大きな洞窟の入り口が隠されているのが見えた。その入り口のそばには、粗末な丸太で作られた見張り小屋のようなものがポツンと建っている。


 華やかなロマンチックさは皆無だけど、山全体がまるで冒険映画の舞台みたい。あの暗い穴の奥には、まだ誰も知らない地下世界や、忘れられたお宝が眠っているのかもしれないわ。


 なんだか、怖いような、でもちょっとだけワクワクするような、不思議な寒気が背中を走った。


 「入り口は山を背にして3か所ある。どうする? 帰るなら今だ」


 馬車を停めると、レオンが挑むように声をかけてきた。

「帰るなら今だ。気が済んだだろう?」ということなのかな?


 山のひんやりとした空気が頬を撫でる。目の前の広大な自然に圧倒された。


 愛のロマンスっていうよりは、これ、完全に『冒険』って感じだわ。


 もしカップルで来るなら、わざと危ないところに行って「きゃー!」って言って、彼氏に守ってもらうスリルを楽しむ感じかしら?


 うーん……でもどちらかというと、少年の冒険のロマンな気がする。


 なんだか急に、あま~いロマンチックな気分がしぼんでしまった。


 「ロマンチックじゃないでしゅ」


 レオンが、「何をいまさら言っているんだ」と心の声が聞こえてきそうな視線を私に投げた。


 「みんなでかえるの。6人つれてかえりましゅ」


 私の言葉にレオンは諦めたように頷いた。


 「よし、どこから入るかだな?」


 「やることやって、さっさと帰るぞ」レオンは、そんな言葉が聞こえてきそうなくらい、てきぱきと指示を出す。それから、この日のために用意していた地図を広げた。


 地図には洞窟の中の通路が書かれている。ゲームのダンジョンみたいだわ。どうやって手に入れたのかしら。私が首をかしげている間にも、話はどんどん進んでいく。


 「レオン、ここにその6人がいるって、なぜ分かるんだ。証拠もない」


 ギンの言葉にジャックやウィズも頷く。


 「さぁな? こいつが言ってるだけだ」


 レオンはそう言うと私の頭に手を置いた。


 根拠はなかった。ポップアップが見えたわけでもない。いないかもしれない? と、自分自身に問いかける。でも、答えは「いる」なぜだか分からないけれど、そう確信していた。


 「カンでしゅ」

 

 レオンは「ほらな、あきらめろ」とでも言いたげに、私の方を顎でしゃくる。


 私は地図を見ると、一番気になる一か所を指さした。


 「ここにいましゅ。いなかったらかえりましゅ」

 「そこか。南の入り口が近いが、南から行くか?」


 ホルンがそう言ったとたんに、ピコンッと気配が跳ねて、ギンとジャックにポップアップが出た。『ダメだそこは危険』


 「南はダメでしゅ」

 「なら、西の坑道はどうだ?」


 するとまたピコンッと気配が跳ねて、ウィズにもポップアップが出てきた。


 「西はもっとダメでしゅ」

 「東……正面の入り口か」


 レオンが低くつぶやいた。気配は静かで、誰の頭にもポップアップは出ていなかった。


 「一番目立つ正面からですか……」

 「盲点ってやつでしゅね」


 ロマンチックじゃない作戦が始まる。


 イチャイチャしている最中に乱入しちゃったらどうしよう。ちょっと覗きたい。


 でも、皆の顔をうかがい見る。青少年には目の毒だわ!


 一抹の不安が胸をよぎった。



 明日はいよいよ作戦開始ですね。

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