11 姫様と七人の影
年上の少年たちを従えて、3歳児がまさかのボス就任。
ちいさな野望が、思わぬ方向へ転がり始めます。
「今日から”飛影”をたちあげましゅ」
私は先日、焼き出された影たちを食堂に招集した。
メンバーはレオン以下7名。ずらりと並んだ10代の少年たちを見上げる、ちんちくりんな3歳の私。端から見たら、年上の少年たちを幼児が従えている不思議な光景だわ。
ふふふ……これで七人の侍、なーんちゃって!
気分はイケメン騎士を従えるお姫様。
「今、何か言ったか」
「なんでもないでしゅ!」
それから教訓という名のお約束事を書いた紙をみんなに渡した。嫌がるスーザンに書いてもらったのだ。私はまだペンがうまく使えなかったからね。
「隊長はレオン。
文句があるなら、たたかって決めるでしゅ」
1.挨拶は大きな声で
2.感謝をする
3.お風呂には毎日入る
以上が教訓で、毎日顔を見せに来るように、というのが飛影の決まり事だ。
これは単に私がみんなにポップアップが出ていないか確認したいだけなんだ。一応保護者なのでね。
「文句がある人は手を上げるでしゅ」
皆、隣と顔を見合わせたが、文句はないみたいだった。
「私のことはボスと呼んでくだしゃい」
すると次々に皆が手を上げる。
「姫様は姫様です」
茶髪のクーガが言う。皆一斉にうなずいた。
私の頬がぷくっと膨らんだ。
ボスの方がカッコいいのに。
「諦めろ」
レオンが短くそう言って、私の頭に手を置いた。
なぜか姫様呼びが定着してしまった。
レオンが言うには、集会所で私が神託を降ろしたことになっているらしい。口から出まかせで言っただけだったんだけど……
内容はあっているから、まっ、いいかしら?今後も使えそうな手だしね!私は心の中でほくそ笑む。
「自己紹介を始めろ」
一番年少なのにレオンが偉そうに言う。皆が従うのは、彼の実力が桁違いだかららしい。
クーガは「レオンに敵うやつはこの世にいない。あいつは影の中でも別格だ」と、目をキラキラさせて教えてくれた。
そんなこともないと私は思う。ポップアップ多そうだし、意外と危うい気がするんだ。
あの子は危なっかしいから、私が見てあげるわ。
つまり私が一番強いのよ。
ふふふ……
「調子に乗るな」
にやけているとポンとレオンが拳を私の頭に軽くあてた。
えっ?
レオンを見上げれば知らん顔。
まさか、心の中を読んだ?もしや心眼の持ち主?
そんな私を放っておいて、さっさとレオンの合図で、みんなが順番に名乗り始めた。
いきなりの自己紹介に……正直、私の頭は大混乱だ。
茶色、灰色、緑、くせっ毛。
年上ばっかり。
無理。
3歳には無理よ。
特にホルンとケルンなんて双子だから、どっちがどっちだか分からなかった。
「しっぽのある方がケルンだ」
レオンにそう言われて、私の目がきらっと輝いた。
しっぽ!? この世界には、しっぽの生えた人がいるの!?
レオンが私の頭にこんと拳骨を落とす。
「髪だ。首の後ろ、三つ編みだろ」
しっぽ!?
……と思ったら、ただの三つ編みだった。なんですかそれは……。
ただの三つ編みね。前世でも見たことがある髪形だった。
しっぽがケルン。これは覚えたわ。
……他は、まぁ、ゆっくり覚えればいいわね。
今はこれでいいんだけど、私にはいろいろ計画がある。
カステラ屋さんをしたいんだ。でも3歳の私はお金を持っていない。どうするかな?
「スーザン、何か金目のものはありゅ?」
部屋に戻ると、早速スーザンに聞いて見る。
「はいっ!?」
スーザンは、フリルがいっぱいついたかぼちゃのパンツを整理しながら、驚いたようにこちらを見て固まった。
別にカツアゲをするわけじゃないけど。最近はどっちが主人だかわからない。
スーザンは大きなため息をつきながらも、私の頭を軽く撫でてから向こうへ行ってしまった。
もしかして、無視された?その態度はどうなの?いくら私が3歳の幼児だとは言え……。
ふぅーーっ。今度は私が大きなため息をついた。やっぱり稼ぐのが先ね。
よし、まずは小銭稼ぎからいくわ!
部屋の外に立っているはずのレオンを呼ぶことにした。
ドアを開けてレオンを手招きする。レオンはめんどくさそうにこちらにやってきた。
「なんだ」
「『なんでしょうか?』でしゅよね」
レオンの眉がぴくりと動いた。怒ってはいない。たぶん。
いちいち言葉遣いを注意するのも面倒なんだけどね。
「ギルドで依頼を受けることにしましゅ」
「殺しか?」
私はしばし固まった。3歳児が殺しを受けることはない。ってか殺しはダメだから。
前世だとお縄案件だからね!ここも教育しないといけないんだわ。やれやれ……
再び大きくため息が出る。最近はスーザンに似てきてしまったかもしれない。やだやだやだ。
「ちがいましゅ。なくしものとか、うわきのちょうさするんでしゅ」
「浮気が何か知ってるのか?浮き輪じゃないからな」
(浮き輪なんてこの世界にあるの?)
まぁ確かに3歳で浮気は変かもしれない。
「旦那さんが家に帰ってこないんでしゅよ。どこにいるか調べるんでしゅ」
「はっ?おまえいくつだ」
「ルリア、3歳でしゅよ」
もう忘れたんですかね。あきれていると、いきなりレオンが私の頬をつまんで引っ張った。
「い、いった!!!なにしゅるでしゅか?!」
涙目でレオンをにらむ。
「魔物が化けてるわけじゃなさそうだな」
「あたりまえでしゅよ!!!」
真っ赤になった頬をさすった。
本当にやめて欲しい。
(痛いんだからね……でも、この頬の痛みは夢じゃない証拠。
金貨のおふとんで寝る日も近いわ……ふふふ。 飛影の初仕事、絶対成功させましゅ!)
飛影の初仕事に向けて、まだまだ騒がしくなりそうです。
続きはお昼と夕方に投稿しますので、ぜひ覗いてください。
P.S プロローグも入れましたので、良かったらそちらも覗いてみてくださいね。




