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プロローグ 風に舞う、影の記録
これは、誰にも知られなかった影の裏側の物語。
光の物語が始まる前に、ほんの少しだけ覗いていってほしい。
光の当たらぬ場所で生まれ、影として死ぬはずだった者たち。
その定めが揺れたのは、1つの小さな手が闇に触れた夜だった。
ホルンは、ほのかな灯りの下で静かに筆を走らせていた。
影として過ごした日々を、誰に見せるわけでもなく、ただ手元の紙へ落としていく。
「……ここまででいいか」
小さく息をついた瞬間、扉が勢いよく開いた。
「ホルン! 姫様が食堂に集合だってよ!」
ジャックの声が明るく響く。
ホルンは肩を跳ねさせ、慌てて立ち上がった。
その拍子に、机の紙束がふわりと浮く。
窓から吹き込んだ風が、そのうちの1枚をさらっていった。
ひらり、ひらり。
影の宿命を綴った紙は、床に舞い落ちる。
「……あとで拾えばいいか」
ホルンは小さく笑い、部屋を出ていった。
誰もいなくなった部屋に残されたのは、風に揺れる1枚の紙だけだった。
そこには、影たちの“かつての姿”が克明に記されていた。




