#終幕
(物語の幕が降り、舞台に再び明かりが灯り、現れるのは一人の語り部)
――さてはて、こうして父様の仇討ちを果たした娘。
(語り部の言葉に弦楽器による合いの手が掻き鳴らされる)
――そして一人と一匹の物語は終わる。
(軽い拍子の囃子が鳴らされると、観客は語り部に訊ねる)
――なんだって?その後、娘と"獣"はどうなったのか、だって?
(語り部はそう言うと、ニヤリと笑いこう答えた)
――そんな野暮な事は聞いちゃいけね。ただ、一人と一匹は結ばれて大団円でめでたしめでたしさ。
(語り部がそう継げると観客たちは待っていたかの様に拍手喝采)
(やがて語り部は立ち上がると一礼し再びの拍手喝采)
(その余韻を残しつつも、舞台は幕を下ろし一つの物語が終わる)
(物語の最初は一人の語り部により語られ、その終わりは観客たちの喝采によって終わる)
(そして、また語り部が舞台に上がるとその語り出しを、人々が固唾をのんで待ちわびる)
――さてさて、今日の物語りは……。
こうしてまた、新たな物語が語り部の口から語られ、人々はその物語りにジッと聞き入るのであった。
-人獣奇譚:完-




