黒いドラゴン(後編)
学園物って難しいですね、このまま妹をもう2人増やしたりとかやろうかなーと妄想中。たぶん、やりません。
『ダークドラゴン』
闇に囚われたドラゴンのことを指す。別称、災厄。光以外の属性すべてに耐性がある。ドラゴンとは空想上の生物でも伝説上の生物でもない。実在する生物であり、世界最強の生物とも呼ばれている。
ドラゴンは通常、滅多に人間を襲わない。人間がドラゴンを攻撃したりすれば別だが。
ドラゴンが町を攻撃したり、人間を喰ったりしないのだ。本来、ドラゴンとは自分以外の生物の監視や守護を使命としている。そのため、数々の伝承や昔話の中にはドラゴンに救われた話は多い。例えば創世記1194年黄夏の月、アルースンの町が突如大量の魔物に襲われた。警備隊が必死の応戦にも関わらず、魔物は町を占拠され人が虐殺寸前の時、空から大きな赤いドラゴンが現れ灼熱の炎を吐き魔物を一掃した。襲撃後もドラゴンは町の近くに留まり町を守護し続けたという。このことからアルースンは年に一度供え物をドラゴンに捧げ、ドラゴンに守護してもらうという町として有名となった。この出来事を発端に竜信教が始まったという。そんな守護者とも言えるドラゴンだが、心が闇に囚われた場合のみ人間と敵対する。暗黒に堕ちたドラゴンは理性を失い、野生の本能のみで暴れまわる。なお、ドラゴンは固有のドラゴン語というものを扱うことでドラゴン魔法を行使することができる。この魔法はドラゴン特有のものであり言葉を紡ぐだけで魔法陣を介さず魔法を発動できるため、最強呪文とも言われるが未だドラゴン語の解読はできていない。
―ドラゴン全書より抜粋
夜になり竜人族の村に着いたゼロ一行は族長と会っていた。
「それで御用はなにかな?神竜に認められし者よ」
「実はダークドラゴンの調査に来ているのだが、心当たりはないか?」
こう聞いたのには理由がある。竜人族とは太古の時代に竜と人間が血を交えた事が発端と言われている。血を交えたことにより人は竜と同等の力を持つことができるようになった。しかし、竜の血が濃ければ濃いほど人間の外見はなくなり竜化するのだ。よって竜人族は二つの外見がある。一つは人間型、二つ目は人型ではあるが皮膚や顔、腕、足が竜化してしまう半竜化である。そして例外として三つ目が存在する。竜の血が濃すぎるために人型を捨てドラゴン化してしまう現象。これは竜人族にとってよくあることなのだ。世に出現しているドラゴンが人を襲わないという理由がこれにあたる。しかし、もし、闇の心に囚われたままドラゴン化してしまうと・・・。
「ふむぅ、なるほど。どうやら隠し立ては不要のようじゃな・・・」
「やはり、この村の出身者か」
「・・・さよう。風の噂で聞いておるよ、山間の町を襲う黒い竜の話を。そして、その進路がこの村に向かってきているというのも。間違いない、ドールセンじゃ」
「ドールセン、それがやつの名前か」
「うむ、ドールセンはこの村でその自らの手で妻と子供を二人手にかけた男じゃ。ある日突然起きた出来事じゃった、村を出て行く前彼の両目は赤く光っていたらしい」
「闇の力の暴走か」
「奴はなんでも力で解決し力を求める傾向があった。より強大な力を求めるうちに闇に手をだしてしまったのだろう」
「なるほど、確信が持ててよかった。世話になった族長」
立ち上がり小屋を出て行くゼロに対し族長は悲しそうな目をして見送った。
「ドールセンを闇から解放してくれ、ドラゴンマスターよ」
ゼロは通信機を取り出すと蒼穹の翼本部に繋いだ。
「俺だ、ダークドラゴンの裏が取れた。これより討伐を行う。メルス山は討伐完了まで立ち入り禁止にしろ、山の中にいる人間には退去命令を出せ」
そう言うと一方的に切る。
「ゼロ様」
レイラ、ジン、アドラがこちらを見ている。
「これよりダークドラゴン討伐を開始する。気を引き締めろ」
「「御意、」」
「問題は奴がどこにいるかだが・・・「グオオオオオオォォォォォ!!」・・・近いな」
「東の方角ですね」
「行くぞ!」
4人は風のように駆けて声のしたほうに向かう。森を抜けたその先には開けた草原があり、そこに黒いドラゴンがいた。
「戦いにはちょうどいい場所だ、アドラ、援護しろ。ジン、レイラ、確実に当てろ。俺は奴の動きを止める」
「「了解!」」
4人はダークドラゴンを取り囲むように突撃する。
「闇の侵食が激しいな、70%といったところか<我らを光で包み護りたまえ、オーラヴェール!>」
ゼロが呪文を唱えると4人が光に包まれる。敵は闇属性にして闇属性の攻撃をしてくるとなれば対抗策は闇属性の反対、光属性だ。
「グオオオオオオオオォォォ!」
ダークドラゴンが口を大きく開いて黒いブレスを吐く。
「<我らを光で守護せよ、シャインシールド!>」
アドラが咄嗟に防御魔法を展開しダークブレスを防ぐ。
「<光よ、無数の矢となりて、敵を貫け、シャインアロー!>」
すかさずゼロが2個魔法陣を展開し光の矢をダークドラゴンに向けて放つ。大量の矢がドラゴンに当たっていく。
ドドドドドドドドッ
「グギャアアアアアア!」
無数の光の矢をまともに受け怯むドラゴンをジンは見逃さなかった。鞘から抜いていない刀を持ちながらドラゴンに突っ込んでいく。
<カミナギ流抜刀式禍ツ風参連斬!>
スバババババババババ!
ジンの抜刀術による攻撃でドラゴンの胸に傷ができる。
「はああああああ!」
続いてレイラが剣を両手で構えながら駆けドラゴンより高く跳び剣を真っ直ぐ振り下ろした。
<地滅斬!>
ドォォォォォォォン!
土煙が上がりレイラが着地した。
「どうだ?」
「グオオオオオオオオオオ!」
「どうやら無事のようですね」
「やはり本気でやらんとだめだったか」
土煙が晴れてくるとダークドラゴンが姿を現した。体に傷がいくつかついているのにもかかわらず元気な様子だ。
「しかたがない、とっておきをやるか。少々準備に時間がかかる。ジン、レイラ奴を引きつけろ。アドラ、二人をサポートしてやってくれ」
「ゼロ様は?」
「俺は大丈夫だ、頼んだぞ」
「はい!」
3人が突っ込むとゼロは距離を取り詠唱を始める。
≪我、求める力は万物の力、破壊の力≫
アドラが魔法を放つ、「<光よ!槍となりて敵を貫け!フォトンランス!>」
光の槍がドラゴンに突き刺さる。
≪其の力、生命を壊し、燃やし、破滅させる≫
「避けてみろ・・・」
ジンが刀と体を大きく後ろに下がらせて構える。
<カミナギ流奥義月光破連斬!>
瞬速の抜刀術は目で捉えられないほどの速さでドラゴンに無数の傷を負わせる。
≪呪われし力よ、破滅の力よ、理のすべてよ、其の力のすべてを集め解き放て≫
レイラが光り輝く両手剣を構えながら走る。
「ゼロ様より授かったこの剣と技を受けるがいい<シエルセイクレッドエッジ!>」
剣に纏っている光が煌々と輝きを増しレイラより大きく膨れ上がった。レイラはそれを大きく振りかぶってドラゴンに叩きつける。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
連続して攻撃をまともに受けダークドラゴンは大きくのけぞった。
ドラゴンの頭上ではゼロの魔法陣が6個展開している。
≪闇を切り裂け、≫
詠唱が終わろうとしているのにアドラが気付き叫ぶ。
「ジン、レイラ!そろそろ来ますよ!こっちへ早く!」
防御魔法陣を展開しつつジンとレイラをシールドの中に入れる。
≪光の柱よ、輝け、命の火をかき消せ、ディヴァインジェノサイド!≫
ダークドラゴンは危険を本能的に察知して飛ぼうとしたが光の速さには勝てなかった。
光が落ち爆発が生まれた。光の爆発は周囲を昼より明るく照らす。爆発は周囲の木々をなぎ倒し大きく半球を描きながらすべてを消滅させながら突き進む。
『光属性SSSランク魔法ディヴァインジェノサイド』
光属性のなかでも究極といわれ忌まわしき光とさえ呼ばれるその魔法は光で闇を切り裂くのと同時に光で命とその存在を消すという。通称、神の光とも呼ばれる。
爆発が収まり光が収束していく、ゼロの魔法はメルス山に深刻なダメージを負わせたようだ。山の一部が消失していた。それは遠目から見れば山の形に違和感を覚えるほどの大きさであった。4人はドラゴンのいた場所と思われるクレーターに近づく。クレーターの中心には虫の息のダークドラゴンがいた。翼は消失しており、左足と右手がない。
「あれほどの攻撃を食らわしてまだ生きてるとは・・・」
「たぶん、闇の全エネルギーを使って防御したんだろうよ」
「なるほど、防御されなかったダメージ分を受け死にかけているわけですか」
「しぶといやつめ」
4人は冷静に淡々と感想を述べる。
「レイラ、お前が止めを刺せ」
ゼロがレイラに命じた。
「私でよろしいのですか?ドラゴンを倒すとその魔力と力を自分の物にできるという言い伝えがあります。ゼロ様が受けるべき栄誉だと思いますが」
レイラは不思議そうに聞き返した。
「俺には必要のない栄誉だ、レイラお前がその栄誉に相応しい」
「ですが、ジンやアドラがいるではありませんか」
「俺は次の機会にするさ」
「自分はゼロ様の命に従うまで、ゼロ様の判断にまかせます」
「・・・だそうだ。大人しく引き受けろ、それとも俺の命令が聞けないのか?」
と、ゼロがいじわるっぽく言う。
「・・・わかりました。その栄誉引き受けましょう」
レイラは剣を抜くとドラゴンに近づくと渾身の力を込めその首を切り落とした。
光がドラゴンから出てレイラを包み込む。
「不思議な感覚です、まるでドラゴンになった気分です」
「おめでとうレイラ、ドラゴンスレイヤーになれたな。そのドラゴンソウルは大事に使えよ」
「ありがとうごさいます、この力ゼロ様のためにのみ使用します」
「さて、本部の報告はお前らにまかせる。俺は帰るよ」
「わかりました、またいつでもおよび下さい」
ゼロは3人と別れ一人自宅にへと向かう。自宅にはサリアの姿はまだなかった。まだ合宿だろう、少し心配になってきたので妹の実力を見に行くだけなら問題はないだろうと思い、家を発つ。なぁに、授業見学みたいなものさと見つかった時の理由を考えながらゼロは自宅を後にした。
次回の話はサリア課外授業編にする予定です。