三大魔法学院対抗戦-苦悩-
長くなりそうな予感、話の内容的に。
魔法大会管理委員会の理事の1人ベルナルド・フォーリーは悩んでいた。毎年恒例行事でもあるこの大会には多くの人が集まる。今年は去年に比べ倍以上の集客とも言われている。委員会としては当日、トラブルがなるべく起こらないように念入りに警備兵と調整し話を詰めていくことが肝心だ。というよりも、現在その課題について会議しているのであり、理事の1人が休憩場所の設置とお土産グッス関連の売り込みに力を入れることに熱く語っているのだが、正直なところベルナルドの悩みはそこではない。悩みというのは隣で寝ている人間だ。こいつは顔は銀色と青色のマスクを着けマントは青一色、銀と青の混ざり合ったローブを着ている。『蒼の虚無』と世間一般的に呼ばれている者だ。
魔道士ギルド最高戦力にして、大陸最強、歴代最強魔道士、英雄等々様々な通り名を持ち、素手でオーガを1000匹倒したとか、ドラゴンのブレスを片手で止めたとか、悪の帝国を一日で消滅させたとか、大陸を魔法で削って地図を変えさせたとか等と噂も多い。しかし、それでも中には真実があったりする。例えば、とある町では蒼の虚無に助けられたことがあり街の中央広場には銅像が立てられているとか、一番有名な話はフィクナーレ皇国騒乱である。
フィクナーレ皇国は一時謎の秘密結社により内戦状態に陥り国は壊滅的危機になったことがある。その時蒼の虚無が窮地に落とされた皇女を救出、内戦の黒幕が秘密結社だと見破り、結社を壊滅させ、皇国を救ったとか。この事件後、フィクナーレ皇国は蒼の虚無を英雄扱い、皇女や皇室、国民からの絶対的な信頼を受けている。
そんな人物が隣でうたた寝をしているのだから信じられないわけだが、問題はそこではない。問題は、この最強の魔道士をどう扱えばいいのかということだ。最強の魔道士といっても所詮は人であり、1人だ。つまり、ギルド最強クラン『蒼穹の翼』のように配下に数多くのクランがついているものであれば警備でも活躍できる。だが、ひとりとなると配置に悩む。各国の王が来るのは大会最終日だ。つまり、最終日に王のガードをさせればいいのだが、それまでどこに配置すればいいかということだ。適当にその辺にでも座らせて放置するのも手だが、それをするとフィクナーレ皇国から抗議が絶対に来る気がする。そんなわけもあり、この人物を最終日までどこに配置するか非常に悩んでいるのだ。
三大会議の依頼は『蒼の虚無』を三大魔法学院対抗戦大会における警備責任者とし会場内の安全を守る事だが、元々一匹狼で単独行動が多いものを責任者にしても大して役に立たない気がする。名目上責任者にしておいて、実質的権利は蒼穹の翼に譲渡しよう。
そんなことを考え、議題がそろそろ蒼の虚無について触れそうだったので自分の考えを話した。が、反応はやはりというか、みんなそれぞれ「そんなことをして『蒼の虚無』が失礼にあたらないか?」と言う。ベルナルドが一瞬戸惑ったとき、隣の人物が突然口を開いた。
「それでも別にかまわん、そのほうが動きやすいし。むしろ好都合だ」
と、そういうことらしい。
本人の許可を得たのだ、文句はない。あとはもう流れていくだけだ。警備上重要な点について再度確認をするが隣の人物は夢の中に戻っていった。
お兄様の特訓が始まって2週間が経とうとしていた。1年代表戦は団体戦と個人戦があり、お兄様はSクラスの皆さんを団体戦、私たちとアカネさんを個人戦にエントリーする予定だとか。Sクラスの皆をひとまとめにしたのはSクラスは人数がまとまっていてちょうどいいのと他クラスとの対立意識が異常に高いから連携は難しいかららしい。それに比べ私たちは個々の能力が高く個人戦向きだと言われた。
お兄様から直接魔法を教わるのはとても嬉しかった、できれば二人きりのほうがもっとよかったのだけれど・・・。でも、アカネさんは元々氷属性だったらしく、覚えが早く、一気に私を追い抜いてしまった。これにはお兄様も驚いてアカネさんを褒めていた。(羨ましい)それでも、なんとか追いついた私は今、氷魔道士の戦い方をお兄様から教わっている。とはいっても、直接ではなく観るほうだけれど・・・。お兄様とアカネさんが戦っているのを観察するだけ。お兄様が氷魔道士、アカネさんが氷魔剣士という役割。
本当なら魔法剣士のほうが有利のはずだけど、押されているのはアカネさんのほう。
でも、お兄様、その動きを覚えるのってすごく難しいのですが・・・。
そんなサリアの様子をチラリと見てから、アカネとの戦闘に集中する。ここ2週間足らずでアカネはよく成長したといえる。元々、才能があったのだろう、もし、魔法が使える状態で入学してきたら間違いなくSクラスに進学できたはずだ。いや、このレベルなら今からでもSクラスに行けるはずだ。そんなことを考えながらもアカネの剣を防ぎ攻撃する。
「くっ!なんで近づけない!」
アカネはだいぶ苦戦しているようだ、なかなか接近戦に持ち込めずにいる。
飛んでくるアイスアローを避けながら、身体強化で一気に距離をつめようとする。この作戦はゼロに教わったものだ。ゼロ曰く、『魔法を一度使った魔道士は次の魔法を発動するまで時間が少しかかる。理由は簡単、最初に発動させる魔法で、決めたがるからだ。要するに、先手必勝で決めにかかるわけだ。それを避けながら相手に一瞬で接近し一撃を加える。接近されれば魔道士は手が出せない、そこをつくわけだ』とは言われたもののそれを実行するのは難しい。なぜなら、近づこうとするとなぜか動きを読まれているように魔法に当たるからだ。
「近づけないのはお前の動きがわかりやすすぎるからだ!」
ゼロの叱咤が飛ぶ。
「いいか、魔法で身体強化をしても魔法式によって魔力を使っているんだから魔力が見えるんだ。なるべく外の消費を抑えないと魔力の移動で動きがわかってしまう。うまく抑えながら戦うんだ!」
「わ、わかった!」
「あ、あの~お兄様?ちょっとよろしいでしょうか?」
「どうしたサリア」
「魔力の流れってどうやって見るのですか?」
「ん?見えるだろ?」
「いえ、見えません。目を強化したりするのですか?」
「いや、そんなことしなくても、普通に見れば見えないか?」
「見えませんが・・・」
「・・・。」
予想外の反応にゼロの手が止まる。その隙をアカネが見逃すわけがなかった。
(今だ!)
卑怯とか関係ない。彼は戦闘中止とは言っていない。つまりこれはチャンス、一撃を与えて彼を見返してやるのだ。そう思った時にはすでに体が動いていた。魔力を身体に集中させ脚力を強化、間合いを一瞬で詰めて剣を構える。あと一歩・・・!この間合いで――
足が地面に触れたその瞬間冷たい風が足下から吹き上げ地面から氷の鎖が飛び出してアカネを拘束した。
「こ、これはアイスチェーン!?魔法トラップか!」
「ちょっとそこで待っててくれ、サリアと話がある」
「このままでか!?せめて鎖を解いて――」
「訓練だ、抜けてみせろ」
「うっ・・・・」
そういい残すとゼロはサリアの元に向かう。鎖に縛られて身動きのできないアカネを残して。サリアに近づくとゼロは右手に魔力を集中させる。
「サリア、これが見えるか?」
ゼロの右手がうっすらと青白いオーラのようなものが浮かび上がる。
「ええ、はっきりと」
「じゃあこれは?」
今度は身体強化の魔法をかける。なるべく魔力を多めに使い外の消費を多く出す。
「あの・・・見えません」
「・・・ちなみに解析魔法とか授業で習ったりしたか?」
「いえ、そのような授業は一度も・・・」
「解析魔法なんて高難易度の魔法は学院ではやりませんよ?」
ミリアが会話に割り込んできた。
「そもそも解析魔法など王宮魔導師や大賢者くらいしか扱えるものがいなくてよ?」
「そうなのか・・・?」
「ええ、まさか、あなた使えるの?」
「あー・・・いや、物の例えだ」
「ふーん、そう?それよりもそろそろ帰ってもいいかしら?」
「む、そうだな。じゃあ解散しようか、明日も早いしな」
「それじゃあ、また明日」
そう言うとミリアは帰っていった。明日も特訓があるわけではない。明日は移動日なのだ。大会の会場は毎年ガイアの中心部にあたる都市セルナグレイで行われる。この都市は古都とも呼ばれその昔、古の魔道士一族が住んでいたという。古の魔道士の一族のことを魔の始祖とも言い、この世界で魔法を創り出した者達であり、3つの国を統べる皇帝の役割を果たしていた。しかし、ある時惨劇が起こり始祖の末裔は途絶えてしまったという。
魔法の始まりの土地という意味を込めてここで毎年大会が行われている。
さて、このセルナグレイはガイアの中央に位置しており、カルパニア王国はガイアの東側に位置している。そのため、カルパニア王国からは列車でも3日はかかる距離なのだ。
なお、3カ国の中でもカルパニア王国が一番遠い。
レンとエル、アカネも帰っていった。サリアはゼロと帰るがその様子はちょっと不安そうだ。なぜか?なぜなら強くなった気がしないからだ。
お兄様に不満はない、むしろこっちが勝手に頼んだことであり、逆に感謝したいと思う。これまでやってくれた特訓の内容は他のみんなは充分いい経験になったと思う。しかし、自分はどうだろうか。特訓といっても氷魔法を教えてもらい、あとは戦い方を教わったくらいだ。お兄様と一番近くにいて一番長くいたのといえばアカネさんが時間が長いと思う。特にお兄様がアカネさんの魔力を復活させた時なんかはアカネさんの喜び方といったらすごかった。あれからだろう・・・、アカネさんがお兄様に接近し始めたのは・・・。
正直なところ、今は大会とかそんな気分ではなかった。お兄様と一緒にいたい気分だ。
でも、お兄様はそれを許さないだろう。私を大会に行かせるはずだ、なぜならそれがお兄様の望みであり、期待でもある。私はお兄様の期待に応えなくては・・・。
お兄様と食事を取り、お兄様と一緒に寝たけれど(お風呂は一緒に入ってくれなかった・・・)気持ちは変わらないまま移動日が来てしまった。お兄様は見送りに出てきて「心配ない、訓練通りにやればいい」と、言われたけれども私なんかで役に立つのか不安になってしまう。こんな時どうすれば・・・?
こうして、サリアは気持ちが沈んだまま大会へと向かった。サリアの様子も気になるが、今は大会の警備のほうが心配だ。『蒼の虚無』なんかに責任者なんかにして三カ国は何を考えているのだ。蒼穹の翼のメンバーと会うためにゼロは合流地点へと向かっていった。
遅くなりました。なんか展開はグダグダしてきておりますが、なんとか修正をかけていけるよう努力いたしますので今後ともよろしくお願いします。




