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これはなんですか。それはペンです。では出陣します。


「ならば、朕自ら制圧してやろう」


王……いや、ニャンコちゃんがとんでもないことを言い始めた。

モンスター討伐のためにドラゴンが欲しいという話をしたところ、だったら出陣すると言い始めたのである。


「このような高価なものを献上されては、それくらいせねばな」


それは100円でございます。

このような高価なものとは、4色ボールペンのことだ。

この世界で青や赤の色を作り出すのはまだ難しいのである。


「ニャンコちゃんが戦うのは危ないんじゃない?」


陸が、王相手に全く物怖じせずに言い放った。

こいつよく王に向かってニャンコちゃんって平気で言えるな。

まぁ、俺が名付けたんだけど。

しかも見た目はワンコちゃんだし。


ニャンコちゃんは陸に向かって薄ら笑いで返答する。


「お主に言われたくないのう」


そりゃそうだ。

2歳児に心配されてもな。

本当に2歳くらいだと思われたままではこの先都合が悪いので、説明させていただこう。


「王……いやニャンコちゃん、うちの息子はこう見えても成人しております」

「ぬ、そういう種族であったか。それはすまぬ」

「そんな恐れ多い、中身は見てくれ同様まだまだ子供です」

「僕は子供じゃない」


この場面で口答えをするなっちゅーに。

そういうところが子供なんだよ。


「魔法だって結構使えるし」


自慢し始めたぞ、ますますガキっぽいな。


「ほお、それは凄いな」


彼女は頬を緩めて陸を見た。

ほら、この王の態度こそが大人ってことよ。

ただし超絶美少女である。たまらんな。

お姉ちゃんが弟を可愛がるような雰囲気だった。

うちの娘として転生してくれないかな。

できれば犬耳と犬のしっぽを持ったままで。


「朕はまだ11になったところだ」


11歳であらせられましたか。

さすが王様は威厳が凄いぜ。

うちの息子よりは全然大人だ。

陸は前世と現世を足したらもう20年近く生きているというに。


しかし、犬耳なら猫耳族のように成長が遅いのかと思ったがそうでもないようだ。

11歳にしては何もかも大人びている。

惜しむらくは非合法ロリだと言うことだ。

まぁ、成人してたとしても王様に手を出したら命の保証はないけどな。

なんにせよ見目麗しい王であらせられることは素晴らしい。

そして犬耳美少女は腰に手を当てると、号令を放つように手を振りかざして言った。


「猫耳族を救うなど、朕の初陣に相応しいではないか」


かっこかわいいなあ、この御方は。

確かに、本来モンスター討伐は国家の仕事だ。

王自ら戦に出るというのも、一般的なことである。

しかし、この容姿と年齢でモンスターなんて危険すぎて……とてもとても。

うっかり肌に傷でもついたらどうするんだ。

ここは僭越ながら具申しよう。

と思ったら、陸が勝手に話しかけた。


「足手まといはゴメンだぜ」

「うちの愚息が申し訳ございませええええええん!」


俺はセリフを聞き終わるやいなや、ジャンピング土下座で謝罪した。

陸のバカ息子っぷりは尋常ではなかった。

さっき何度か処刑されそうになってた記憶がないの?

そもそもこいつ、なんで偉い人に対して偉そうなの?

パパとママには全然そんなことなかったのに。

あの素直で可愛い俺の息子を返して!


「ふふ、そち達は本当に愉快だの」


一笑に付していただいたぞ、ありがたき幸せ。

なんかこの王様、土下座を妙に気に入ってないか?


「心配してもらったようだが、朕が身につける法衣を着れば魔法と飛び道具は一切効かぬ」


凄い法衣だな。

確かにそれならモンスターに近づかせなければいいのだから、それほど問題無い。

しかし、やはり何が起きるかはわからん。

俺は土下座のまま、陸の耳元に口を近づけて余計なことは言うなと言い含める。


「大変恐れ多いのですが」

「控えよ、朕は行くと言ったら行く」

「ははあ~~~」


セリフは途中で遮られてしまった。

王が行くと言ったら行く。

そう言われてしまっては何も言えない。


「それにペットの家族を救うのは飼い主の役目であろう」


そう言って、愉快そうに笑った。

冗談、のつもりなのだろうか。

こっちは笑えねえ。


「ははは、なんかパパみたいなこと言ってるね」


陸!? お前は笑ってんじゃねーよ!?

俺が土下座しているというのに何なんだこいつは。


「ははは」「ふふふ」


二人して笑い始めたぞ。

くそー、土下座している俺を嘲笑ってるような絵面になってるだろうが。

オレ一人が気苦労が耐えないの納得いかねえー。


「では、出陣の支度をする。お主らは客室に一泊せよ」


そう言うと、ニャンコちゃんはベルを鳴らして女中を呼び出した。

俺たちは女中について退室した。

客室に着いても俺たちの首輪は外してもらえないようだ。

そして風呂も当然入れそうにない。

日本はいいよなあ、毎日風呂に入れるし。

食事も出してもらえたが、茹でた芋とかスパイスの効いてない肉とかだ。

スーパー銭湯に行きてえ。

大きい風呂に入ったあと、冷たいビールで唐揚げを腹に流し込みたい。


海外に行くと日本の良さに気づいたりするが、異世界ならなおさら実感する。

でも、女の子の可愛さだけは別だな。


だって普通の女の子より、犬耳があったほうが良いに決まっている。



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