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下着泥棒に気円斬


「なにこれ、すっごく軽くて暖かい」


そうだろう、そうだろう。

ウルトラライトダウンだからな。

びしょ濡れになった犬尾族の美女ペディは、俺の渡した服に着替えていた。


「下は無くてすまないな」


当然だが俺はスカートなんて持っていない。

ズボンだとしっぽが邪魔で履くことができないのだ。

ペディのしっぽはお尻よりも大きく、長さは膝の裏まであった。


「もうほとんど乾きましたし、大丈夫です」


革のスカートから出た銀色の毛のしっぽをふりふり答えるペディ。

火消し活動中に、ある程度は乾いたのだろう。

それにしても犬耳があって、もう少し若ければなあ。

美女なのに、惜しいぜ。


村を鎮火させた俺達は、襲撃したカッパを追いかけていた。

陸は歩かせると遅すぎるので、おんぶして移動している。


「やつらの目的って何なんです?」


俺はペディに疑問を投げかける。

カッパが村に火を放つなんて聞いたことがない。


「窃盗のようです。村人が逃げている間にいろいろ盗まれています」


火事を起こして火事場泥棒ってわけか。

日本の法律だったら大犯罪だな。

確かにカッパはキラキラ光るものを好むとは言われていたが……。

ここまでされたら村人だって黙っちゃいない。

そこまでして欲しかったものがあるということか?


「見つけた、あそこで休憩していますよ」


池のある場所で休んでいるカッパ達に追いついたようだ。

ちなみにカッパというのは俺の翻訳であり、頭に皿はない。

単純に水を飲んだり、魚を食べようとしているようだ。


「陸、竜破斬ドラグスレイブで一気にやっつけようぜ」


スレイヤーズに登場する強力な呪文だ。

あれならカッパ全員を池ごと消滅させるだろう。


「あんな超強力な魔法使えるほど魔力ないよ」

「やっぱそうだよな」


俺の魔力では話にならないが、陸でも全く無理らしい。

この世界、俺の知る限りでは何体ものモンスターを一発で一網打尽にすることは難しい。


池の脇にある岩のほうなら死角のはずだ。

少し近づいて様子を見る。


「ああっ!? わ、私の……私のをっ……」


なんだ?

カッパを見たペディが当惑している。

ペディは相当目が良いのだろうが、ずっと現代日本に居た俺にはここからではよく見えない。

小さい双眼鏡を取り出して観察する。


――ん?

なにやら布切れを頭に被っている。

どいつもこいつもだ。

見覚えがあるような、ないような?


陸は何故か顔を真っ赤にしている。熱でもあるのか?

ペディも顔を真っ赤にしている。なんだ?


「取り返してください……」


しっぽを逆立てて怒りの声をあげるペディ。


「取り返せって、あの表は妙に凝った刺繍で、裏は妙に面積のない布を?」


俺の問いに、キッと睨んだまま返答する。


「私の、私のぱんつですっ!」


あ、あー。

あれ、ぱんつか。

犬尾族のだから、しっぽを逃がすためにお尻側の布地が無いけど。


え、じゃあ何?

奴らは下着泥棒するために村を燃やしたの?

とんでもねえエロガッパだな……。

すると背中にいる息子からぼそっと声が聞こえた。


「ほ、欲しい……」


ここにも居たよ、エロガッパが!

カッパが被った下着なんて欲しがるなよ!

お父さんは悲しい。


「パパ、ぱんつを取り返すためには火の魔法は使えないよ」


お前、真剣だな!?

なんだこいつのモチベーション。

2歳児の顔がここまでキリッとするかって思うくらい凛々しいけど、俺は複雑だよ。


「……そーだな。火を使わずに頭部もそのままで倒すしかないな」

「となると、胴体を真っ二つにする、とか?」

「風の刃の魔法……それで行くか」

「イメージは出来たよ」


頷きあう俺と陸。

俺はおんぶしていた陸を抱っこに変えて、戦闘の準備完了だ。


「ペディさんはここに隠れていて、僕があいつをやっつける」


謎のイケメンっぷりを発揮する息子。

抱っこされて言うセリフじゃねえ。


「えっ!? その子が戦うんですか?」


正気なのかと俺に問うペディ。

そりゃそうだよな。

まだベビーカーがお似合いのルックスですから。


「息子はこう見えても17歳なんですよ」

「ええっ!? そんな種族もいるんですねえ」


ペディは感心したように頷く。

そんな種族いないけど、一応納得したようだ。


西日を背にして俺たちはカッパとの距離を詰める。

日が沈んでしまうと夜目が効くモンスターに有利だ。

敵はおよそ8,9体といったところ。

戦闘に入る前の奇襲の魔法で何体倒せるか。


「ここから仕掛けよう、パパ」

「届いても当たらないと意味がないぞ?」

「大丈夫」


自信満々の息子を信じることにした。

俺は風の刃を生む魔法の詠唱呪文スペルを教える。


「肩車して」

「あいよ」


俺は抱っこしていた息子を肩車する。

陸は右の手のひらを空に向け叫んだ。


気円斬きえんざん!」


風の刃が円状に発生した。

右手を振り下ろすと、ヒュウッと音を立ててカッパ目掛けて飛んでいく。

気円斬のイメージで風魔法を使うのか!

しかしやはり遠い。

真っ直ぐ飛んだ気円斬はカッパの横をすり抜ける。

だから当たらないと言ったのに。


「まだだよっ」


陸が人差し指と中指を曲げると、繰気弾そうきだんのようにクンッと曲がった。

腰の上からスパッと胴体が真っ二つになるカッパ。

やるな、陸!

こいつにドラゴンボールを見せておいてよかったぜ……。


左手からも気円斬を繰り出す。

もう一体も倒した。

こちらの襲撃に気づき、近づいてくるカッパども。

獲物は村から奪ったであろう斧だ。

あんなもん食らったら、陸はおろか俺もお陀仏だ。

肩車のまま後退する俺だが、これではすぐに追いつかれるぞ。


どうしよう。





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