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抱っこしておんぶして風魔法


「逃~げるんだよぉ~」


息子を肩車したまま、俺は駆け出していた。

斧を持った複数のカッパが相手だ。

接近戦になったらまず勝てない。

ヒット・アンド・アウェイが上策だろう。

ここには岩や木など隠れるような場所もない。


「パパ、僕の向きを後ろにできる?」


そうか、俺が逃げつつ後方を攻撃するのか!

考えたな、陸!

肩に乗った息子を反転させた。


って、前が見えないじゃねーか!

あと甚平越しだけど顔面にちんこを感じるのも嫌だ……。


気円斬きえんざん!」


陸は俺の頭上で気円斬のような風の魔法を繰り出した模様。

詠唱呪文スペルを唱えて魔法を発生した後、イメージを強めるために必殺技を叫んでいる。

2歳児の声は、悟天よりも幼い。


絶命の叫び声が後方より聞こえる。

倒せたか?

俺は一度足を止めた。

カッパはそれほど足が早くないので、きっちり逃げていれば追いつかれることはない。


「パパ、やつら逃げ始めた! 追って!」


な、逆にカッパが逃げたか!


「4匹は倒した。あと4匹いる!」


俺の鼻っ柱に股間を押し付けている息子を持ち上げ、おんぶに切り替える。


「どっちだ!」

「十時の方向!」


アナログ時計なんて2歳でよく理解してるな!

ママが教えたのかな?


「もっと速く走れないの?」

「おんぶされながら、よく言ってくれる」


少しスピードを上げた。

オフィスワーカーの俺にはこの運動量は堪える。

陸は背中で詠唱呪文スペルを唱える。

魔法を放ちやすいよう、俺はおんぶから抱っこに持ち替えた。


「我は放つ光の白刃!」


おっ!

今度は魔術師オーフェンか。

大きい風の刃が飛んで2体のカッパの背中を襲う!

腰のあたりから真っ二つになった。

こいつ、センスあるぜ!


抱っこしたまま、残りの2体を追う。

腕に乳酸がたまってパンパンだ。


「これで最後だっ」


陸はトドメの魔法を放つ。

逃げ切れないと悟って反撃を仕掛けてきた2匹のカッパはへそのあたりから風の刃を受ける。

上半身だけがズルリと前に落ち、内臓をぶちまけながら絶命した。


「やれやれ、終わったか。よくやった陸」

「パパもね」


お互い労をねぎらいながら、倒したカッパの頭に被られたぱんつを回収する。

なんと情けない絵面だろうか……。

とほほ、という顔の俺に対して息子の目は輝いていた。



「ペディさーん、全部倒しましたよ~」

「お姉さ~ん、ぱんつ取り返しましたよ~」


俺たちはペディのもとに凱旋した。


「ありがとうございますぅ~」


瞳をうるませて感謝を述べた。

これだけ喜んで貰えればお礼なんていらないよな。


「お礼に1枚いただいてもいいですか?」


俺の思いとうらはらに厚かましいお願いをする息子。

胴体を真っ二つにされたカッパが頭に被ってたぱんつなんて欲しいか?


「できれば今履いている方を」


こいつ、とんでもねえこと言うな。

親の顔が見たいぜ。


「ごめんね僕、お姉ちゃん今ぱんつ履いてないの」


ぶっ!

爆弾発言に吹き出してしまった。

俺たちが服を水浸しにしてしまったから抜いだのだろう。


陸はぽわ~んとピンク色のオーラを放っている。

ダメだこいつ。


「あの、ペディさん。こいつこう見えて17歳なんで……」

「ああっ!? そうでしたっ。あまりに見た目が幼いのでつい……」


肉体的には2歳なので無理もない。


「ところで、そのパパさん?」


どうやらパパという呼称を俺の名前だと思っているらしい。

こちらの世界では続柄で呼ぶ風習はないし、陸はこっちでもずっと”パパ”と呼んでいた。

しかし美女にパパと呼ばれるのはなんとも、背徳的な感じだ。


「はい、パパですが何か」


陸が俺をパパと呼ぶことの説明が難しいので呼び方はこちらで行こう。

やましい気持ちは微塵もない。

犬耳があって、もう少し若ければ話は別だが。


「パパさん、その握りしめてる私のぱんつ、返してください……」


俺は、謝罪しながら下着を返却した。


さて、ぱんつを取り返した……じゃない。

村を襲った奴らを成敗したわけだが。

これで解決なのか?


「こいつらは私の下着を盗んだだけですが、村の財産はほとんどアジトに持ち去られてしまいました。お礼は必ずいたしますので、ご助力いただけませんでしょうか?」


ふーむ。

別に村の財産なんて、たかが知れている。

俺の大事な猫耳娘、いや、陸の姉と恋人を一刻も救うほうが重要だろう。


「おまかせを!」


ピシッと敬礼する陸。

2歳児がやっても、おまわりさんのモノマネしてるだけというか。

微笑ましいだけだよ。

しかし、お前の恋人助けるためにこっち来たんじゃないの?


「まあ頼もしい」


膝を折って目線を揃え、陸の手を握るペディ。

陸はナイトとお姫様くらいのつもりでいるのだろうが、保母さんと保育園児にしか見えない。


……ん?

この匂いは……。


「陸、おまえうんこしたな?」


ピシッと固まる陸と、その手を握っているペディ。

冷静にバッグからおしり拭きを取り出す俺。

陸はオムツ離れは早かったが、おねしょやおもらしはまだする。

中身が17歳でも肉体が2歳だから、我慢できるほど筋肉がないのだ。


「えと……17歳なんですよね?」


ペディの容赦のないセリフ。

そっと手を離して、すっと離れていく。


「うう……そういう種族なんです……」


泣き出す陸。

うんこ漏らす種族なんていない。

しかしそういうことにしておこう。

美女の前でうんこを漏らす経験は俺にはないが、相当ショックに違いない。


「あんまトイレもないし、オムツにしておこうな」


息子はお尻を俺に拭かれながら、無言で頷いた。





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