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美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます   作者: 網野ホウ
巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目

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嵐の後で 4 ウィーナの受難 ウィーナの視点から

 昨夜、店主から使いを言われてその帰りが遅くなったミール。

 今、同じく冒険者チームの呼び出しという用件ができて、また同じように帰りが遅くなっては適わない、ということで、姉のウィーナが外出。

 行き先はやはり冒険者チームの拠点。

 だが今回は『クロムハード』。呼び出す用件は、依頼品完成ではなく依頼の装備品を作るための下準備。採寸である。


 斡旋所を中心地とした拠点区域。

 拠点はあるものの、仕事がない時は必ずしもそこにいるとは限らない。

 冒険者チームの拠点は土地勘のある都市や地域には必ず拠点を置いている。

 だから国内全都市に拠点を置いてあるチームはかなりある。

 天流法国の僻地の一つ、ベルナット村は、そんな所でも拠点を持つチームはかなり増えた。

 巨塊討伐絡みの影響である。

 現地のバルダー村では地震が頻発。食料になる農作物もその影響で実りが少なく、訪れた冒険者達の胃袋を満たしきることが出来ない。

 そこにも斡旋所はあるのだが、それらをここベルナット村の斡旋所と合併することで、万が一の事態を事前に回避することも兼ねて、一時的ではあるがかなりの賑やかさを見せるようになった。

 その区域内での拠点のは玉石混交。居住地はカテゴリーや知り合い同士などではなく、その地域に来た者達の早い者勝ち。『ホットライン』とは意外と離れている『クロムハード』の拠点。彼女の『風刃隊』とも離れている。


「呼び出すだけで、なんでミールってばあんなに時間かかったんだろ。今んとこもそうだけど、あっちのチームの拠点だって何回も行ったことあるのに……っと、ここだね」


 冒険者達の往来が激しい通りの中にある目的地につき、呼び出しのベルを鳴らす。


「はーい、どちら様ー?」


 窓のないドアの向こうから聞こえてくる声は、ウィーナはアローと記憶している。


「『法具店アマミ』から来ましたー。『クロムハード』さんからの依頼を受けられるようになったのでさいすぐぁっ!」


「え? あ、あぁっ! ご、ごめんね、えーと、ミールちゃん?」


「ウ、ウィーナです……痛い……」


 いきなり開いたドアがウィーナの鼻先に激突した。


 待ちに待った装備品作製の第一歩の報を聞けは誰でも喜ぶ気持ちは抑えられない。

 喜びに満ちた顔が一転、思わずしゃがんで悶絶するウィーナに慌てて詫びるアロー。


「手当してあげるから中に入って」


「いえ……実はかくかくしかじか」


 ミールは『ホットライン』に怪我の手当てをしてもらった。

 同じく自分も怪我をした。ここで時間を取られたのかと納得したウィーナはアローに事情を説明し、全員についてきてもらうことを伝えた。


「うちのアローが申し訳ない」


「い、いえいえ。こちらこそ模擬戦ではお世話になってますし、そん時の傷のこと考えるとこれくらい平気ですよ」


 それでも気に病むアロー。

 模擬戦での負傷と日常での怪我では意味合いが違う。


「じゃ、じゃあまた無報酬で模擬戦お願いするということでおあいこにしません?」


 とは言っても、ちょっと気にしすぎと思うウィーナは取引を思いつく。

 実力に格差がある両チーム。何か付き合う、あるいは付き合わせるにはそれなりに理由が必要な場合も出てくる。

 低い方のチームの実力に近い者達からやっかみの感情が降りかかってくることもあるからだ。

 しかも『風刃隊』の場合は、『法具店アマミ』を介しての縁。

 しかし顔見知りになったとしてもその事情を知れば、それまではあまりに周りから恵まれなさ過ぎたこれまでの経歴だったとしても、『風刃隊』をうらやましがる者も現れる。

 けれどもそんな些細な理由であったとしても、理由は理由。

 『クロムハード』はと言えば、それで気が済むのであれば、とその提案を歓迎した。


「それにしても、斡旋所からの仕事がなかなか来ないってのもなぁ」


「何か裏でもあるのかね」


「あるわけないでしょ。新人ばっかりのチーム相手に裏のある事情なんてありゃしないわよ。運がとことん悪かっただけじゃないの?」


 怪我の功名。

 バイト中とは言え、店外でも親しく話をしてもらえたウィーナの心は弾んでいる。

 確かにバイト先では見慣れた冒険者チームの一つ。しかし彼女達から見れば、手の届かないくらい高い地位にいる存在である。

 バイトが終わったら、仲間達に持っていけるいい話が出来たということで、仲間達の喜ぶ顔を見たくてたまらない。

 そんな気持ちのまま『法具店アマミ』の自動ドアを開ける。


「テンシュー! ただぶっ!」


 『クロムハード』の拠点のドアでぶつけた鼻に再び強い衝撃を受け、尻餅をついて茫然とするウィーナ。

 ウィーナは目の前にいる人物を見て、自分がどんなことをされたのか理解した。


「なんで私、テンシュに足蹴にされてるの……?」


 その後の店主の言葉はウィーナの耳に入らなかった。

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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。


勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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