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第十四話

 女盗賊プーラン・プアラニは『天空の花』という二つ名を持つ盗賊、の娘らしい。

 pualaniは天空の花、という意味がある。

 鑑定スキルに図らずも教養を教えられ、俺はひとしきり感心した。


「ふ、ぅっ ふぁっ」


 同時にphoolanの名にもまた花という意味がある。


 サンスクリットの言葉で花の意味、という鑑定スキルの言葉を信じれば、名前に込められた意味までこのスキルは見抜けるらしい。

 というかサンスクリットって何だよここ異世界じゃないのかよ。


「はっ! ぐ、ぅぐ、ふっ」


 とにかく、『天空の花』マハーディ・プアラニの娘、プーラン・プアラニは、盗賊一族の娘にして、一人前の盗賊らしい。


 だからこそ、隠密Lv.2、気配察知Lv.2、そして短剣術Lv.1、暗殺術Lv.1を持っているのだ。

 中々に多才で、俺といい勝負だ。


「ふぁっ! や、やめっ あっ」


 暗殺術と短剣術は使われると適わない。なので、俺は彼女を無力化することを急いだ。

 ブラックジャックで頭を打ってから、顎を重点的に攻めてよろつかせ、鑑定スキルにより暗器をざっと把握。


 格闘術Lv.1と舞踊Lv.1を駆使してプーランを押さえ込んだ俺は、暗器を使われる前に一本ナイフをせしめて首に突きつけ「動くと殺す」と脅し込むことに成功。


「ふっ、ふぅぅっ、あ」


 そのまま武装解除まで漕ぎ着けて(交渉スキルを用いたことは言うまでもない)、一瞬の隙をつき彼女の自由を奪い取った。

 俺のマントローブで彼女の体を簡易的に拘束したのだ。


 ここからは尋問の時間である。


「や、やめっ ひっ ぅぅ!」


 俺は彼女に「お前たちは盗賊団『天空の花』だな、答えろ」などと言うように質問を重ねた。

 しかし彼女プーランは強情に口を割らない。


 イエスノー形式の質問ならば、鑑定スキルの心理グラフで見破れるだろう。

 しかし「お前たちはどうしてこんなことをした」などのオープンクエスチョンになると全くお手上げなのだ。


「ーーっ!」


 四回目か。

 何がとは言わないが。


 プーランの体が落ち着かない間でも、俺は慈悲は与えない。そのまま尋問と責め苦を続ける。

 こちらは指先一つ二つしか使ってない、せめて房中術の経験値になってもらおう。


「だかっ だからっ、今は、駄目っ」


「今も何もあるか。話せ」


「鬼かっ、鬼っ」


「鬼も何もない、話せ」


 肩でぜいぜい息をするプーランに、俺はほとほと呆れていた。

 涙目になって息も途切れ途切れ、蚊の鳴くような声をくぅくぅ鳴かせて心身ともにすり減っているであろう彼女なのに、まだ口を開こうとしない。

 いや口は、ぱくぱく開いたり我慢するように真一文字に結ばれたり我慢できずに開いたりと忙しいのだが。


「し、死ぬっ」


「死ぬかもな」俺は淡々と答えた。「テクノブレイクは心臓発作が原因とも言われている。要は女も死ぬには死ぬのだ。嫌なら話せ」


「やぁっ やだっ!」


 やだっ、て。子供かよ。


 目の前の盗賊の立派な忠誠心をよそに、俺は内心考えた。


 別に俺は正義漢ではない。むしろ人道的にあらぬことを平然と行うことができる。

 マルクに手を下すことも出来た。いとも簡単にだ。

 そしてこのように、女盗賊プーランに対しても、正義のための拷問という大義名分をふりかざして、この有様だ。


(倫理観も何もあるものか。潔癖なんか忘れてしまった。なるべく正しくありたいとは思うが、努めて、というほど清廉に努める気持ちはあまりない)


 正直、俺は房中術スキルがLv.3になったあたりから楽しくてこれを続けている。

 スキル上げの作業は普通に楽しい。こういう地味な作業は俺は好きだ。

 ヘティ相手だとこう思いっきりスキル上げを、とする訳にはいかないから、またとない機会だ。


「ーーっ! ぅぅっ!」


 あ、まだ四回目の波が続いてたのか。

 さっきから境目が微妙になってきたというか、プーランの反応がそぞろになったというか、本当に死んでしまうのではと思うぐらいにぐったりしている。


 鑑定スキルを使って調整する必要があるだろう。


(しかしまあ、誰も来ないものだな)


 俺とてうつけではない。

 プーランに「ここにくる予定のものは一人か? 他にも仲間が来るのか?」と質問をして、心理グラフの反応でプーラン一人のみがここを任されているのを確認している。


 しかしそれでも、ヘティが俺のために増援を呼んでくれるはずでは、と思っていたのだが、全然その気配すらない。


(冒険者ギルドに何かあったか?)


 プーランに既に「狙いは冒険者ギルドか」とか「狙いは人材コンサルタント・ミツジか」とか何やら、馬鹿馬鹿しい質問かもしれないが、まず俺たちに危害を加えるつもりなのかどうかは念入りに確認した。

 プーランの反応は、ノーであった。


 おそらく彼女の狙いはもっと別の物にあるはずだ。


「あっ ぁふっ ぁぁぁぁぁ……っ」


 口を小さく開けて、振り絞るように声を鳴かせて、女盗賊プーランはひとしきり震えていた。

 端正な顔が何かを諦めたかのように打ち震えていて、恐らくひどく長い五回目を迎えたようだった。


 鑑定スキルの心理グラフの変動によると、指は差し抜きではなく、圧し緩めであるそうだ。

 体が痙攣するあのリズムで圧し緩めを繰り返すと、どうやら人間という生き物は酷く『感じる』らしい。


(あ、房中術がLv.4になったか)


 スキルの加護により指先の感覚が鋭敏になり、動きが器用に柔らかくなった気がする。

 伴って、彼女プーランの反応が少しばかり変わった。追い詰められた蛇のようにのたうち回って悶絶していたのが、嵐に震えて過ぎ去るのを待っている子鹿のようになってしまった。


 もう怒る気力もないようで、止めてくださいと哀願するような、それでも喋るものか感じるものかと頑ななような、悲壮な覚悟の表情だ。

 ただ思ったよりも性的刺激に過ぎるらしく、戸惑いの様子がちらほら見て取れる。


 五度目の絶頂は、四度目より長く続いている。


「ふぁぁぁぁ……っ」


 涙目でか細い声を漏らす彼女を見ると、もうこれ以上は可哀想な気がしなくもない。さっきから狂っているのではというほど収縮の痙攣が収まっていない。


 だが続ける。

 俺は感情でこんな責め苦をしてるわけではなく、房中術のためにしているのだ。可哀想だからという感情でやめるのも同様に筋が違うのだ。


(さて、もう少し頑張るか)


 房中術がLv.5になるまで。

 心の中で勝手に目標を定めつつ、俺はスキル上げに邁進するのだった。


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