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間話 リフレ王国の荒廃

 砂漠地帯をぬけてリフレ王国の辺境地帯に辿り着いた俺達は、その荒廃ぶりに言葉を失った。

俺達は人の気配、いや生物の気配はまったくしない村のなれの果てにいた。

かつては豊かな田園風景が広がってたと思えるだけに、人気のなさは不気味なほどだ。

白かったはずの家の壁は黒ずみ、ぼろぼろになってる。

木の扉や屋根を支える柱は乾燥し、今にもぽきりと折れそうだ。

村の中央にある井戸は、水が枯れていた。


 俺は根っからの田舎もんだ。

荒廃した大地がどんなだか、よく解る。

米を作らなくなった田んぼ、短期間にどれだけ廃れるかずっと見てきた。

そんなのが子供だましに思えるほどの、凄まじい荒廃ぶりだ。

大地は白くなって、ひび割れ干からびてる。

草一本生えない、不毛の大地だ。

砂漠にのまれるのも、きっと時間の問題だろう。


「マナが、魔力がほとんど感じられません。

 往きにこの村で宿泊したのは、ほんの三週間前ですよ」


片手を大地について、シャーマインがつぶやく。


「青き水竜王の加護も感じられませんね」


両手を広げ祈りを奉げたロベルトも、眉間に皺を寄せ空を見上げた。


「村人は、王都に避難したようだな、避難勧告の立て札があった」


「そうみたいだぜ、荷物をまとめて出て行ったみてえだしよ」


手分けをして村を調べたアルフレッドとリックが、情報を交換する。


「アルフレッドさん、王都に急いだ方がいいんじゃね?」


俺は何かに急かされるような気がして、そう言ってみた。

こう、首の後ろあたりがチリチリしやがるんだ。

なんつうか、悪い予感がするってゆうか、そんな感じ?


「リュージ殿の言うとおりだ。長居は無用だな。

 依頼された砂漠の発光現象は、リュージ殿の界渡りのせいと解明したしね。

 こうも砂漠化の進行が早いとは思わなかった。

 今はリュージ殿を一刻も早く王都に案内するのを優先しよう」


「俺もそう思うぜ、なんだかゾワゾワするしな。

 遺跡や迷宮と違って、誰もいねえ廃墟ってのはぞっとしねえ」


俺もリックの意見に激しく同意だ。

動画検索で廃墟訪問ての、よく見かけるけどよ。

映像で見る分にはいいけど、実際に足を運びたいとは思わない。

特に生活してた痕跡の生々しいのは、どうもいけない。

生理的に受け付けないらしい。

スケルトンとか、乾いたのはいいんだけどよ。

ゾンビとかの腐れナマモノ系は苦手とゆうか…なんかちげえな、うん。


「転移の魔法を使いますか、アルフ」


転移って空間魔法だよな、簡単に言うとワープとかテレポートっての。

さすがエルフ様、チート魔法使えんのか、すげえな。


「この人数で魔力は大丈夫か、シャーマイン?」


「リュージ殿の魔力をお借りします」


「俺のでなんとかなんの?」


「大丈夫です、こうしてリュージ殿のお手を貸していただければ」


シャーマインはいそいそと、俺の両手を握りしめた。


……をい。

いくら美景のエルフ様でも、男と手を握り合うのはよぅ。


「なんとも力強い貴方のマナの流れを感じますよ、リュージ殿。

 魔力酔いしそうなほどに」


うっとりとした熱い視線をよこすシャーマインに、俺はフリーズするしかなかった。

リュージとシャーマインの薄い本が、オタクの祭典で売られたらどうしよう。

俺はシャーマインの手を振りほどかないよう、最大限の努力をした。

これはあれだ、シャーマインのまだ見てない妹さんだ。

と自己暗示をかけてな!


「みなさん、私とリュージ殿につかまってください。

 リフレ王都の冒険者ギルドまで転移します」


アルフとリックが俺の肩に手をおいた。

ロベルトはシャーマインの肩に手をおく。

四方を男に囲まれた俺は、なんだか泣きたくなった。

王都の冒険者ギルドに、カワイイエルフ様がいますように。


頼むぜ、異世界主人公補正ってばよぉ。


次の瞬間、俺達は白い光と浮遊感に包まれた。

ついで下へと落ちていく感覚、そして大地を踏みしめる感覚。


「着きましたよ、リュージ殿」


シャーマインの声が俺に伝える。

俺が救世主として呼ばれた国、リフレ王国に着いたことを。


今日の更新です。



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