第3話:「決戦! 古代魚との戦い!(エンシェント・フィッシュファイト)」開幕ッ!!
ズシン……ズシン……!
シーラカンス王が浜辺を踏みしめるたび、汗と潮が混じった異臭が島全体に広がる。
こいつはただの魚じゃない。筋肉と汗と歴史をまとった、最古の戦士だ。
「グォォォォォ……!!!」
その雄叫びが熱気を振動させ、ひげとおっさんの体中に染み込んだ汗がさらに吹き出す。
「クソ……汗臭さが限界突破してきたぞ……!」
ひげはサバを握る手をきつく締めた。
サバの表面はすでに汗で滑り、力を込めなければポロリと落ちそうだ。
「ひげ……俺たち、ここでやられたら一生この島で汗と魚の匂いにまみれて生きることになる……」
おっさんが、背中から流れ落ちる汗を豪快に振り払う。
その汗が地面に落ちると、ジュワッと蒸発し、サウナ室ばりの蒸気が辺りを包み込んだ。
「それだけはごめんだな……! 行くぜッ!!」
ひげは地面を蹴り、サバを構えてシーラカンス王へ突進。
「サバ・スラッシュ!!」
銀色の魚体が空を切り裂く——が、
「甘い!!!」
ゴッッッ!!!!
シーラカンス王の分厚い鱗に弾かれ、サバが跳ね返された。
「なにぃ!?」
「こいつ……防御力がバカみてぇに高ぇ……!!」
おっさんが即座にマグロを構える。
「だったら、こっちはパワー勝負だ……!!」
おっさんの腕に汗がにじみ、そのまま巨大なマグロを振りかぶる!
「マグロ・クラッシュ!!!!」
ズオォォォン!!!!
直撃。
だが——
「……効いてねぇ!?」
シーラカンス王は微動だにせず、ニヤリと笑うと、そのままヒレを振り上げた。
「これで終わりだ……」
「シーラカンス・メテオ!!!!」
次の瞬間——
巨大なヒレが、まるで隕石のように振り下ろされる!!!
「クソッタレェェェ!!!?」
ひげとおっさんは咄嗟に飛び退くが、地面が粉々に砕け、衝撃波が辺り一帯に吹き荒れる。
衝撃で熱気がさらに激化し、汗が止まらない。
「……くっそ、汗が目に入って前が見えねぇ……!!」
ひげは額を拭うが、拭っても拭っても汗が吹き出す。
だが——その時だった。
「……待てよ。」
何かが、ひげの脳裏に閃いた。
「おっさん……こいつの硬さに対抗できる手がひとつだけあるぜ。」
「なんだと……!?」
ひげはニヤリと笑い、握りしめたサバを指差す。
「このサバ……乾燥してカッチカチになってる。」
おっさんの目が見開かれた。
「……まさか、お前……」
「そうだ。サバは乾燥させればするほど硬くなる!!」
「なっ……!? つまり……“汗まみれ一夜干し”……!!?」
ひげはゆっくりと頷いた。
この島の狂った熱気と、体から流れ続ける汗……
それがサバを極限まで硬化させ、もはや鋼鉄の刃と化していた。
「今がチャンスだ……! いくぜ、おっさん!!」
ひげは全力で地面を蹴り、サバを振りかざす。
「サバ・エクスカリバー!!!!」
渾身の一撃が、シーラカンス王の顔面へ炸裂——!!
バギィィィィィィン!!!!!!
硬化したサバが、歴戦の鱗を貫いた。
「グォォォォォ……!!??」
シーラカンス王が悲鳴を上げる。
そのまま後ろへと倒れ込み、巨大な水しぶきを上げて海へと沈んでいった——。
「ぜぇ……ぜぇ……。」
「……やったのか?」
ひげとおっさんは荒い息をつきながら、滝のように流れる汗を拭った。
その時——
「……素晴らしい。」
タイが静かに呟いた。
「貴様らの戦い、実に見事……認めよう。」
周囲の魚人たちがどよめく。
「試練は終わった……次なる試練へ進む資格を与えよう!!」
「なに……?」
ひげとおっさんは顔を見合わせた。
「次なる試練って、まだあんのかよ……?」
タイはニヤリと笑い——
「……もちろんだ。次は伝説の魚との戦いだ。」
「伝説の魚……!?」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
遠くの海が渦を巻き、空が暗くなる。
「やべぇ……なんかすげぇのが来るぞ……!」
汗が吹き出す。いや、もはや止まることを知らない。
そして次の瞬間——
巨大な影が海の中から姿を現した。
「嘘だろ……アイツは……!?」
その姿は、今までのどの魚よりも巨大で、どこか神々しさすら感じる。
魚人たちが一斉に跪き、口々に叫ぶ。
「……伝説の魚……!!」
「“神のマグロ”……!!」
「オオマグロ様……!!!!」
果たして、ひげとおっさんはこの灼熱の試練を乗り越えられるのか——!?
次回、「最終決戦! 汗と魚臭の極地」、開幕ッ!!!!