第22話 流石ボク!
「敵襲だー!!」
「相手はたったの二人だ!!さっさと殺し、ぎゃあああ!!」
無人島の中心部。
そこには結界で隠された魔人のアジトが確かにあった。
天然の洞窟を利用した迷路のように入り組んだアジトで、先ほどから魔獣や魔人が引っ切り無しに襲いかかってくる。
探査魔法を使用したところ、魔人の数は10体と魔獣が数十体程といったところであった。
「なんか思ったより居るね」
正面から飛びかかってきた魔人の体を一太刀で上半身と下半身に分け、そのまま蒼い炎で焼き払う。
リオンが使う聖剣からは蒼い聖なる炎が激しく立ち上り、辺りを蒼く照らしていた。
斬撃と同時に炎による浄化を行う彼の基本の戦い方であり、特に魔に属するものに対しては無類の強さを誇る。
「そうだな。王都からそんなに離れていないってのに不用心なことだ。魔王が倒されて平和ボケしてるんじゃないか」
ジャスも負けじと横合いから飛び出してきた犬の魔獣を右の短刀の一閃で撃退する。
本当は魔獣の牙を右で受け、左の短刀で斬りつけようと思っていたのだが、受けた刃がそのままスルリと魔獣を真っ二つに切り裂いていた。
そのあまりの切れ味に思わず冷や汗を流す。
短刀が鈍く虹色に輝く。
「あ~それボクらの怠慢って言ってるんですよね?ジャスさんも気が付いてなかったくせに~」
「俺は一般人だから良いんだよ。帰ったらお偉いさんに魔人達の隠れ方が思ったより巧妙だってことをちゃんと報告しといてくれ」
「そうだね。ん~これ世界的に色々なところ見直さないといけないかもね」
魔王討伐後、世界各地で魔人や魔物の掃討が行われており、それは今でも続いている。
魔に属するものは、人類及びそれに類する種族の命を糧としているため共存は出来ない。
それに個体の強さは魔人の方が人類より圧倒的に強く、たった1体の魔人で町が消えることもあるのだ。
この島にはその魔人が10体も潜伏している。
これは世界を震撼させる大事件である。
のだが、
「いや~今回はボクの勘が冴え渡ってたお陰で事なきを得ましたね!流石ボク!」
大事件の第一発見者の当の本人に全く緊張感がない。
ちらっちらっとジャスの方を見る青い瞳は明らかに「誉めて?」と言っていた。
口並みに何を言っているか分かりやすい目である。
「油断しすぎだ。やられても知らんからな」
呆れながらジャスは微塵も思ってもいないことを口にする。
先程からリオンは軽口を叩いているが、常に姿が霞むような速さで敵に対応している。
正直、ジャスはまだ本気を出していないであろうその動きですら全てを捉えきれてはいなかった。
(あいつ、前見たときより強くなってないか?って前に見たのは魔王と戦う前だから当たり前か)
ジャスが最後にリオンと戦線を共にしたのは、魔王直属の部下である三魔貴族を討った時である。
リオンはその後3人の仲間と共に魔王との死闘を繰り広げ、世界に平和をもたらしたのだ。
更に成長しているのも頷ける話である。
「それにしても罠が多いね。ジャスさんがいてくれて助かるな~」
聖剣を凪ぎ払い、扇状に広がった炎で2匹の魔獣を焼き尽くす。
そのリオンの足元には炎が立ち昇る魔方陣が設置されていたが、既に魔方陣の一部がジャスによって削られており発動することはない。
先程から設置型の魔方陣が多数見受けられていたが、そのどれもが二人に害をなすことなく尽く沈黙している。
稀に発動を許したとしても、そこはリオンの驚異的な身体能力やジャスの速やかな結界で事なきを得ていた。
「お前は無警戒に突っ込みすぎだ。即興で解除するこっちの身にもなれ」
ジャスは片腕ほどの長さの氷の矢を10本程発生させ、目前の魔獣の群れの中心部に放つ。
慌てて左右に別れて矢を避けた魔獣達であったが、左に避けたもの達は発動したトラップの爆発にやられ、右に避けたもの達は、突如地面から突きだした石の槍によってバラバラに引き裂かれる。
その様子を戦いながら見ていたリオンが眉を潜める。
「うわぁ、さらっとエグい事を。今のどっちも相手の罠でしょ?よくそんな上手いこと誘導出来るね。ボクには真似出来ないなぁ」
「お前はそんなことしなくても十分強いからな。俺みたいな中途半端な奴は小細工が必要なんだよ」
左右の短刀を軽く振り血を払う。
魔法を撃った際に気が付いたが、この短刀は魔法使いが使う杖のような魔力を効率よく魔法に変換する機能も付いていた。
しかもかなり高性能な。
(おかげでかなり戦闘が楽になったけどいくらなんでも高性能すぎて怖いくらいだな。今度ルルエンティにちゃんとお礼しないとな)
「とりあえずこの周辺は一段落だね。後はこの先か~」
聖剣に付いた汚れを蒼い聖火で浄化しながら奥へと続く2本の通路を見る。
ここまで倒した敵の数は、魔人7体に魔獣50体ちょっとなので、この奥に魔人が3体いるということになるのだが。
「分かれ道でしかも一人ずつしか通れない変わった魔術付き、か。左に魔人三体、右はなし。どうする?」
「二手に別れましょう!時間をかけて対策をとられる方が面倒だし」
「それしかないか。くれぐれも気を付けろよ」
「了解~ジャスさんも気を付けて!いざとなったら転移で逃げちゃって良いからね!」
ばいばーいと手を振って魔人がいる左側の通路を駆けていくリオン。
その足音もすぐに聞こえなくなり、洞窟内は静寂に包まれた。
ジャスはリオンを見送ると右の通路に向かいながら呟く。
「じゃあ俺も行くとするか。何にもなきゃ良いんだけどな」




