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まおうが魔王になる物語  作者: キクメン


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第6話

 5分ほど洞窟の奥深くへと進んだところで、広いホールに出た。


 中央部には直径5メートル程の池があり、少し距離をとって小さなトカゲ人間達と緑色の肌の小人達が肩寄せ合っていた。


「聞け皆の者! 魔王様が復活なされた! これまでにない程にお早い目覚めで、早くも今しがたガガラを倒してレベルアップなされたのだ!」


「左様! 今度の魔王様は強さは無論の事、大変慈悲深く、極めて聡明で、まるで人間のように食べ物を美味しくする能力をお持ちだ!」


「その通りです! 今度の魔王様は必ずやかつての栄光を取り戻し、それを超える繁栄を我等にもたらす事でしょう!」


「オォーーーッ!」


 魔物達は目を輝かせて喜び合い、それを見た私は彼等を庇護する事に決めた。


「さっきの目印をここに持って来て、僕等の洞窟と行き来出来るようにしようと思うのですが、どう思いますか?」


「良いお考えだと思います!」


「御意! 魔王様の仰せのままに!」


「素晴らしい考えです! 魔王様!」


「では手伝ってもらえますか?」


「はい!」


「かしこまりました!」


「私も参ります!」


「私達も!」


「あ、皆さんは待機していて下さい、またガガラの肉が手に入りそうだったら運ぶのを手伝ってください」


「分かりました!」


 私と側近の3人はもう一度洞窟の出入り口まで戻って外の様子を確認したところ、ガガラはいなくなったようで少し残念な気がした。


 それはそれで安全に目印を持って来れるので良しと考えて、警戒を怠らずに足早に目印の場所まで向かった。


 先ほど倒したガガラの生々しい血の跡を横目に目的の目印を回収して、洞窟へと急いで駆け戻った。


 ガガラが戻って来て不意を突かれる事もなく無事に洞窟まで辿り着き、そのまま駆け足で洞窟の奥に辿り着き、すぐに全身マントの小人に光の円柱を出してもらって双方向通路を開通させた。


 全員私達の拠点で保護しようと思ったが、側近達も洞窟で身を寄せていた者達も平伏して断ってきたので理由を尋ねたところ、魔王様の拠点に赴く事が恐れ多いというのと、拠点の所在を知るわけにはいかないからとの事だった。


 皆がそう言うのでここはそれに従うとして、私は拠点に戻って皆のために料理を作る事にした。

 厨房にいた巨大ゴキブリに別の食材は何かないかと尋ねると大きな備え付けの箱のフタを開けて見せてくれて、その中にピンときた麻袋があったので外から触ってみると間違いなく米の類が入っているのが分かったので、すぐに固く結ばれていた紐を解いて中を見ると、玄米に似たものが入っていたので私はとても喜んだ。


「私にはそれをどうすれば良いのか分かりませんでした」


「これは煮炊きすると美味しいですよ、早速これを使って雑炊を作りましょう」


 私は大きな鍋を取り出していくらでも使える美味しい水をタップリ入れてまずはガガラの鳥ガラを使ったスープを作り始めた。


 その際玉ねぎに似た野菜とりんごに似た果物などを少しカットして味見してから入れた。


 さらに小さなゴキブリ人間達が食べるといった内臓を取り出して綺麗な水で洗うと、巨大ゴキブリが手伝うと言ってくれたので私が指示して洗ってもらった。


 彼は冷水でもまったく平気だとの事なので大助かりで、しっかり内臓にこびりついた血と老廃物を洗い流してもらい、さらに鋭利な爪で細かくカットしてもらった。


 そうして出来上がった内臓の肉を私がボウルに入れて塩コショウで手もみし、柑橘系の果物を絞ってふりかけてさらに手もみした。


「本当は炭火で焼いて食べたいところですが、金網がないのでフライパンで焼きましょう」


 私はかまどに向かって人差し指を指し示して威力弱めでカミナリと心の中で念じてみた。


 パチッ!…………ボウッ!


「やった!」


「お見事です! 魔王様!」


 4本の腕で拍手する巨大ゴキブリを見ると、いよいよ私は巨大ゴキブリが嬉しそうな表情をしているのが分かるようになっていて、ますます好きになってきてしまった。


 ジャァーッ! ジャァーッ!


「とても良い匂いがします!」


「味見してみますか?」


「はい!」


 私は塩ホルモン焼きの一つを小皿の上に置いて巨大ゴキブリに差し出した。


「熱いから気を付けて下さい」


「はい、いただきます」


 巨大ゴキブリは小さな肉片を両手の先端の爪で持って少し冷ましてから音を立てずに食べた。やはりその所作は上品に思えた。


「美味しい! 凄く美味しいです!」


 巨大ゴキブリは目を丸くして驚き、その後ニッコリ微笑んだように見えた。これは相当私も魔物慣れしてきたと言わざるを得ない。


 そうして大皿に大盛の塩ホルモン焼きを盛り合わせて、巨大ゴキブリに小さいゴキブリ人間達に食べさせるように持っていってもらった。


 他の魔物達には別の料理を作っているので、もうしばらく我慢して欲しいとも伝えた。


 ガガラ肉を作った鳥雑炊はまだ時間がかかるので、私は他の部位のガガラ肉を使って別の料理を作る事にした。


「片栗粉があればなぁ……」


 本当は鳥唐揚げを作りたいところだが、さすがにこの状況下においては無理な話しだった。


「金網があればなぁ……」


 せめて金網があれば塩味の焼き鳥が作れるのだがそれも難しく、しかもなるべく早く沢山作りたいので先程と同じ味付けでガガラ肉のソテーを作る事にした。


「さっきの塩ホルモン焼きの取り合いで喧嘩してなければいいけど……」


 何せ周りは皆魔物達なので、食べ物をめぐって奪い合いの喧嘩をしそうだと思い、私は手早く料理を提供する必要性を感じていた。


 程なくして巨大ゴキブリが戻ってきたので、様子を聞くと他の魔物達は腹を鳴らしながらもちゃんと我慢しているそうで、私はその報告に驚きながらも早く他の魔物達にも料理を届けなければという思いで手を動かした。


 程なくしてガガラ肉のソテーが完成したので、大皿に盛り合わせて巨大ゴキブリに運んでもらった。すぐにおかわりも用意するので慌てないようにと言い伝えた。


 洞窟の奥にいる魔物達は30人程で、全員の腹を満たすには雑炊に入れた玄米と鳥ガラスープで胃袋を満たす必要があったが、少なくともまだあと1時間程は欲しかった。それまで皆我慢してくれれば良いが……


 そんな心配をしながら次のガガラ肉のソテーを大皿に盛り付けていると、巨大ゴキブリが戻ってきたので様子を聞いてみると皆喧嘩せずちゃんと我慢しているとの事で私は大いに感心した。


 どうやら最後まで我慢して待っているのはトカゲ人間達のようで、私は少しサービスして仕上げに果実酒をサッと振りかけて軽くかき混ぜて肉に馴染ませた。多分肉が少し柔らかくなって味わいも豊かになるだろう。


 その後、雑炊の方に本格的に取り掛かったが、正直なところもっと煮込んでいたいのだが、全員腹を空かしている事だろうと思って、まだ早いが雑炊を仕上げる事にした。


 巨大ゴキブリに玄米が入っていた麻袋を丁寧に洗ってもらって、身体の大きいトカゲ男に来てもらって鳥ガラスープの入った大きな鍋を持ち上げてもらい、巨大ゴキブリの4本の腕と私の腕でしっかり麻袋を広げて保持して鳥ガラスープを麻袋で漉してスープだけを移し替えてもらった。


 あらかじめ軽く炊いていた玄米をスープに入れて、巨大ゴキブリと一緒に細く裂いたガガラ肉を全て鍋の中に入れて、白菜と玉ねぎとにんじんに似た野菜も入れて煮込んだ。


 アク取りを丹念におこなっていると、大きなトカゲ男は腹から大きな音を鳴らしてとても恐縮したが、正直なお腹の方は一向に鳴り止まなかったので、何か用があればお呼び下さいといってその場を離れた。


 それから20分程煮込んでひとまず完成として、大きなトカゲ男を呼んで鍋を持ってもらい、私と側近達全員で器を持って洞窟へと向かった。木製の簡素な器が人数分あったのは良かった。

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