第4話
現状を真面目に考える事を完全に放棄して、一番自分が落ち着くルーティーンとしての調理と食事をする事で、一向に現状は変わっていないのだがひとまず落ち着く事が出来た。
「ああ魔王様! これ程までに素晴らしい食事をしたのは初めてです!」
「まさにその通り! 身体中に力が漲ってくるようです!」
「いや! 実際レベルが上がっているぞ!」
「ホントだ!」
「まぁ! 本当ですわ!」
「さすが魔王様!」
「レベルって何のレベルですか?」
「強さなどが数値化されたものです」
「我が能力を示せ、と念じれば心の目で見ることが出来ますよ」
「ホントですか?」
「はい、やってみて下さい」
私は心の中で『我が能力を示せ』と念じた。
-------------------
真央 真人
レベル:1⇒2
生命力:10⇒20
魔法力:10⇒20
持久力:10⇒20
攻撃力:10⇒20
防御力:10⇒20
素早さ:10⇒20
幸運度:10⇒20
魅力 :10⇒20
【魔法】
回復 :1⇒2
雷撃 :1⇒2
【スキル】
威圧
飛行
調理(新)
-------------------
「あ! ホントだ! レベルが2になってる!」
「オォーーーッ!」
「まだ、戦いに勝利もしていないのに、レベルアップとはさすが魔王様!」
「さすが魔王様! しかも魔王様の料理を食べた我等もレベルアップしたというのは、紛れもなく魔王様の力のおかげだ!」
「オォーーーッ!」
「ところで、皆さんのレベルはどれくらいなんですか?」
「私はレベル10です」
「我は12になりました」
「わたくしは10です」
「私めも10です」
「自分も10です」
「……、15になりました」
予想外な事に全身マントの小人が一番レベルが高かった。
その後、巨大ゴキブリが皿を回収して厨房に向かったので私も後について皿を洗おうとしたが、皆から魔王のする仕事ではないと言われたので、私は機転を利かして皿洗いをする事で気分転換になり良い考えが浮かぶかも知れないと説得してなんとか皿洗いをすることに成功した。
隣で一緒に皿洗いをしている巨大ゴキブリはかなり丁寧で綺麗好きなのがその仕草から良く分かり、見た目はともかくその所作にはなかなか好感が持てた。
また、どこから流れているのか分からないが絶え間なく流れてくる水は澄んでいて、そのまま飲んでも美味しいのは実に有難かった。
その後以前人間の町で手に入れたという酒を取り出して、やはり遠慮していた異形の者達にも配って皆で飲んだ。
「あっ、この果実酒美味しいですね!」
「はい、悔しいですが人間どもの食べ物や酒は実に美味しいです」
「昔はこうした酒も飲み放題だったと聞きます、なんとも悔しい限りです」
「う~む……」
外見上はどうあれ中身は人間の私としては、どうにかして人間と何かしら和平を結んで、こうした飲食料品を安定的に手に入れたいと考えた。
「ところで、皆さん以外の人達はどこで何をしていますか?」
「高レベルの者達は皆戦って死んでしまいましたが、レベルの低い者達や非戦闘員は奥地で細々と暮らしています、しかし我らが大地は厳しい自然環境にあるため、日々生きるのに精一杯というところです」
「そうですか……」
酷い見た目だからといって彼等に生きる権利がないというのはあまりにも理不尽で不条理だ、というか私もそちら側の存在になってしまった以上は何とかして生存権を獲得したい。
そこでまず私はもっとこの世界の事を知る必要があると考え、早速この世界の地図を見せてもらいながら、より詳細にこの世界の事を教えてもらう事にした。
新聞紙程の大きさの地図が広げられたので見てみると、一番上に描かれていた大陸が世界の果てと呼ばれる私達のいる大陸で、その下に広大な楕円形の大地があって、その全てが人類が住む大陸だった。
人類が住む大陸は10区画に区分けされていて、どうやら国家が形成されているようだった。他にも小さな島が点在していたが、南極大陸らしきものは描かれていなかった。
この地図は人間が持っていた物だったらしく、それとは別に人間の地図を真似て魔物達が作ったこの大陸の地図があると言われたので、それも見せてもらう事にした。
先ほどの世界地図と異なり、結構詳細に描かれていたが、明らかに自然と資源に恵まれた豊かな大地ではないのが一目見て分かった。
そして今いる所は大陸の北東部にあり、最も寒く過酷な場所との事で地上に出れるのは極一部の種族のみで、それでも晴れた日の日中で限られた時間だけとの事だった。
ただそのような厳しい自然環境であったため人間達がやってくる事はなく、その点では安全だとの事だった。
また、その反対に南西部では活火山があるそうで、その地は灼熱の大地という事で、やはりそこでもほとんどの種族は活動出来ないそうだ。
とりあえずこの世界を良く知るためにも、現地視察の必要はありそうだと考え、まずは自分が今いる世界の果てと呼ばれる大陸を見て回りたいと要請すると、皆すんなり承諾してくれた。
今から行くかと聞かれたので、今は何時ごろかと逆に聞き返したところ、異形の者達は顔を見合わせてから全身マントの小人の方を見ると、全身マントは先ほどの紙を取り出して光の円柱の中に入っていき、十秒程で戻ってきて昼過ぎだと教えてくれた。
私は全身マントが今行ってきた場所はどこかと尋ねると、世界の果て大陸の南にある場所で、そこからさらに南下すると人間達のいる広大な大陸との海峡があるとの事だった。
まだそこには人間達はいるかと聞くと、今はまだいるが、恐らく近日中に撤退するだろうという意見が全員の一致した見解だった。
その理由を尋ねると、この不毛な大地にいてもなんら得るものがない上に、ほぼ完膚なきまでに魔物達を撃退したので、人間達はこの先少なくとも100年以上は安泰だと考えているだろうというのが理由だった。
それを聞いて私はこれは不幸中の幸いだと思った。100年以上も時間的猶予があるのは実に有難い。もしかしたら私が生きている間は人間達と戦争にならずに済むかもしれない。魔王とやらが何歳まで生きるのか知らないが……
私は生き残っている魔物達が多くいる場所はどこかと尋ねると、ほぼ散り散りになって逃げ延びているので確証はないが、地下水源があって地上も比較的ましな自然環境がある場所にいる可能性があると教えてもらい、その場所まで行くのは可能かと聞くと、その近くまでなら全身マントが先ほどの魔法で連れて行く事が出来ると言ってくれたので早速行ってみる事にした。
全身マントの小人は別の紙を持ってくると言って小走りで別の通路に行って、小さな鞄を肩にかけて戻ってきた。
そして別の模様が描かれた紙を開いて地面に置くと光の円柱が出現したので最初の3人と一緒に私は光の中へと入って行った。




