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Life 135 I'm really thinking about the future. 未来のために その2

「で、興味はあったんだ。」

「うん、すごく面白そうだと思った。夢みたいな話でしょ?」

「まあ、出来過ぎな話だけど、君の立場を理解してくれる人たちが提案してくれたということは、君になってほしいってオファーを出したってことだよ。僕もいいと思う。」

この前の話、ずっとオトーサンとおねえちゃんには隠してた。そこでとどまることを許してくれそうだったから。

おねえちゃんにはどう話したらいいのか、私は少し悩んでいた。私の就職活動は、これで最後でもいいのか?自問自答していても分からないけど、「私」が私の立場なら、この話はどう思うのか、疑問があった。


「でも、僕も支部の人の話の通り、足掻く時間は必要だと思ってる。新卒である以上、その切符をみすみす手放す必要はないよ。君がここで満足しているならそれでもいいと思うけど、僕にはそう見えない。」

「私はすごく乗り気だったんだけどなぁ。」

「後悔がなければいいと思ってる。僕より強いから、選択肢に後悔をすることはないと思う。けど、父親としては、もっと面白い仕事もあるかもって思っちゃうかな。僕が特殊な生き方をしてるからなのかもしれないけどね。」

「そっか...、分かる気がする。漠然とした目的があったら、少しは変わったかな?」

「感じたことに素直に動ければ、自ずと目的は見えてくるかもしれない。けど、僕みたいな人間を参考にしちゃいけないんだ。あの人みたいに堅実に生きていたら、どうしてなのか部長職になってたっていうほうが、ある意味正しい。」

「ある意味?」

「僕は同じ会社に勤められたかなって。長く在籍した会社で仕事をしていたときは面白かったけど、それだけだった。日本のあらゆる研究機関に入っていけたのは良かったと思うよ。でもね、はっきりと分かったのは、僕の生き方はお金にならないってこと。僕の好奇心の強さは、職人的な考え方だった。僕の生き方は広く浅くだったはずなのに、広く深くなっていった。社会不適合者と呼ばれる所以だと思う。僕がもう少し堅実に仕事をしていたら、どうなってただろうって思ったよ。」

「面白さがお金に勝ったってこと?」

「まあ、そういうこと。だめな父親だと思うけど、娘がいる状況下でも、なお面白さを求めてしまう。多分、浮気とか不倫とかをしちゃう人と、感覚的には同じなのかもしれない。」

「女性関係はさっぱりなのにね。」

「救われてる。少なくとも、君と、あの人と、...なんかよく分からないけどあの人の後輩さんだけの面倒を見れば、僕はそれで幸せかなって。」

「あれぇ~。後輩さんが入っちゃうんだ。」

「君の「おねえちゃん」が君たちにそっくりな子を連れててくるからだよ。どうしてか分からないけど、君たちとまるで生い立ちが違うのに、三人揃えば同じように見える。」

「そんなに似てるかな?すごく綺麗じゃん。」

「そういうフィルターもあるかもね。理想の女性がいて、理想の恋人がいて、理想の...娘かな?いや、娘だと彼女に失礼かな。世話の掛かる子がいるなって。」

「あ~、なんか分かる。初めて会ったときから、私たちは残念な部分ばっかり見てるもんね。」

「どこか幼さが残ってるからね。君が強くて世話がかからない分、来たときにはあの子の面倒ぐらい見てあげないとだめかなって。」

「本人が聞いたらどう思うかな?喜びそうだよね。」

「喜んでもらっても困るんだけどなぁ。最近、無自覚で髪の毛乾かしてもらえると思ってたりしてるじゃん。」

「ちょこんと座るよね。オトーサンも、なんかよく分からないけど、やってあげちゃう。」

「そういう場所だと彼女が思っているなら、僕はその場所を守るべきだと思う。恋人さんはどう思う?」

「私だけに特別なら、ここを守って欲しいな。」

「無理だって知ってて言わないでほしいかな。」

「無理だって知ってて聞かないで欲しいな。」

「......どこで、そんなに似てる感じになったんだろうね。」

「オトーサンになりたいって。私は周りからそう見えてるらしいよ。そういうことみたい。」

「なるほど。恋人に近づくんじゃなくて、恋人自身の考えを理解できるようになりたいってことか。なんか、ごめんね。」

「難しいことを理解するのも、その人を知ることでしょ?オトーサンを知れば知るほど、好きになれるし、尊敬も出来るよ。」

「模範となる自分がいるのに、贅沢な悩みだね。」

「おねえちゃんは模範かな?色々、だらしないと思うけど。」

「そう見えるなら、君も完璧主義に近いんだろうね。本人の抗えない気質までは違いが出ないんだろう。」

「おねえちゃんは私を私として見てくれる。私はそれに救われてる。だから、この話をするべきなのか、少し悩んでるんだ。」

「話してみなよ。君が迷ってることをそのまま話したらいいよ。あの人も決めるのは君だと分かって、話を聞いてくれると思う。心配しなくていい。僕はその仕事、立派な仕事だと考えているよ。」

「じゃあ、なんで足掻く時間が必要なの?」

「その話をもらって色々考える時間より、遮二無二色々な企業の人に「会う時間」として面接を受けに行って、一人でも多くの人に君がどう思われているのかを知ったほうが、今の君よりも明確に立場が分かると思ったからね。」

「私の立場...こんなにあやふやなのに?」

「そのあやふやな社会的立場を固めてくれるって仕事の話をもらえたことに安心してはいけないと思う。君がこういう人物で、こういう風に生きていくと考える時間...ってのは、やっぱりこの歳にならないと分からないよね。」

「色々な人と話して、色々な考え方を聞いて、自分自身がこうだって言えるようになってから、お仕事を受ける覚悟を持てってことだよね。」

「...やっぱり、僕と違ってストレートに話が出来て分かりやすい。理解も出来てるから、心配しなくて良さそうだね。」



「まあ、アンタがそれでいいなら、私は反対しない。私もその話、すごく面白いと思った。」

「そう思うんだ。私だから、当たり前なのかな。」

意外にも、おねえちゃんは押してくれていた。おねえちゃんなりの優しさなのか、人事部長としての考え方なのか、シビアな現実を話す。二人でランニングを再開したから、色々頭がスッキリしたのかも。

「本音を言う。アンタのせいじゃないのは重々承知だけど、この人が作った資料、それと生物学的な証明、その上での履歴書を見てて思ったのよ。頑張ってレジュメ3枚程度しか書くことのない現代の大卒に対して、アンタの資料は即ゴミ箱に行く。」

「やっぱり読んでもらえないんだ。」

「僕も覚悟はしてたけどね。でも、その中で声をかけてくれる会社があるってことは、望みありってこと?」

「なんとなくだけどね、会ってみたかったって可能性が高いのかなって思った。どういう人が来るのか、どういう話をしてくれるのか、そこに興味がある人事の方が呼んだというのが正しいわね。」

「......オトーサンが言っているように、興味がある同士で話すと、会話も盛り上がりそう。」

「そう、本当に人となりを知りたいだけ。アンタを戦力として見るのではなく、多様性の観点でモデルケースにしたいって思惑も少し見えてしまうのよ。」

「なるほど、そう考えるんだ。あなたは案外ドライだよね。」

「あなたも気づいてて、こういう資料を作ったんでしょ?この娘の取説みたいなものがこの資料には書かれている。なぜそうなったのか、そしてこういうことが出来ます、こうすれば使いこなせるはずです、ってね。」

「人事をちゃんとやれてるじゃない。昨年度は新卒採用に関わってないわりに、よく読んでる。」

「一方で、この資料は現状のこの娘の限界を示している。大卒なのは確定していると思うけど、こうすれば使いこなせるはずですっていう部分は、あんまり関係ないことなのよ。」

おねえちゃんはそういうところに目ざとい。言いたいことも分かる。オトーサンがなぜこのような資料を作ったのか、それは年齢に対するハンデを埋めるためだったけど、逆効果なのかもしれない。

「あくまで人材を使いこなすのは、入社する会社なのよ。添削しなかった私も母親としての責務を果たしてないわ。けど、ドラマチックな話と、実際の配属先は切り離して書くべきだった。今の私が言えることはそんなところ。」

「そっか、そういうところまで考えが及んでなかった。」

「アンタの年齢でそこまで考えてたら恐ろしいのよ。手に余る新卒採用はしたくない。日本社会において、従属的な関係を覆すことは難しい。新人は組織というところへそうやって自分を適応させていく。私が苦労している理由、分かったでしょ?」

「う~ん、あなたが言いたいことって、そんなに面倒な新卒を入れるぐらいならって、書類すら受け取らないところもあるってことだよね。」

「うちの会社も来年度の内定者を出してるわけよ。その人間は、基本的に新卒求人サイトからエントリーしている学生。コストの面を考えるとそうなるわよね。この娘にはそのバックボーンを必要とする場合、うちの会社ではパッと見では理解されないのよね。ここが困ったところ。実際に後輩から新卒面接を聞いた限り、今年の内定者の基準はよく分からないと言う。彼女ですら4年前、問題ありで入社しているんだもの。本音を言えば、この娘をそのまま縁故採用してあげたいぐらいに、うちの会社の上はその辺は甘い。でも、ルールはルール。この娘の顔が割れてる以上、うちの会社では採用出来ない。じゃあ、他の会社は?って考えた場合、この娘は薬ではなく毒になると私は判断する。」

「え、私って毒なの?」

「猛毒よ。色々あってフルタイムのバイトを2年しながら高卒認定を取って、大学へ進学してるわけでしょ?そのままバイトを続けて、気がつけば現時点で5年ですって、普通は新卒扱いはされない。この辺の考え方は少し違うかもしれないけど、私は一箇所に留まって働いたという実績を買ってしまうわけ。危険なのは承知よ。さっきも言った通り、日本社会において従属的な関係を覆すことは難しい。でも、逆に捉えれば忠誠心はあるとも読める。」

「実績を買い、忠誠心も買うけど、それが自社にとってメリットになり得ないというわけか。立場もあるし、実力主義とは言いにくい日本社会だとこの娘は確かに生きにくいね。」

「...もしかして、オトーサンはそこまで考えて、世界との違いを捉えてたの?」

「いんや、そんなことは微塵とも思っていない。でも、留学したいって思った、もっと言えば今の...え~と、なんだっけ?学部?」

「国際文化学部ね。」

「ああ、そうそう、その学部に入った目的って、コンビニバイトが原点だったわけでしょ?少し世界を意識してたってことは認めるでしょ?」

「まあ、世界のことをもっと知りたいと思ったけど、留学して痛感した部分が克服出来てないし、何も感じなかったっていうのが事実かな。私には自信をもって「これは負けません」って言えるものがないと思う。」

「......半年間で、それを克服出来るの?私には無理があると感じる。親の贔屓目、もっと言えば私自身だからそう見えちゃうのかもしれないけど、アンタの経験って、日本国内にいながら多言語を操るという異次元の作業を平然とやっていることになるのよね。そんなことをやってる人間に、課題を感じることがあるの?と私は思ってしまう。アンタが留学から帰ってきて発想力に乏しいって言った時、私は羨ましいと思った。今の私は、完全に会社の傀儡だから。」

「傀儡とは言え、人事部長の責務...会社の広告塔もやってるわけでしょ?企業人として、その感覚は正しいと思うけどね。」

「あなたがそういうと正しく思えるのよ。私の夫が少しおかしいって認められてるからこそよね。それはともかく、アンタが発想力を持つ必要性があるとしたら、それはアンタが起業でもする時よね。今のアンタはすでに違いが生み出せている。アンタが私に夢を見させる理由は、そういうところなのよね。私がこの人のように破天荒な人生を生きていたらどうなったのか?という答えを、私は別の視点で見られる権利を得た。親バカというより、自分が好きすぎなのよね。」

「そこまで言う必要はないと思うけど、僕も発想力なんてものは自分で持ち合わせているとは思っていない。あの時、君は僕みたいにその場しのぎのアイディアが出せることが羨ましい、クリエイティビティがないって言ってたけど、今の僕にはそう見えないんだよ。その結果が、コンビニでのオファーじゃないのかな?」

「同感。私もコンビニの業態まで知らない...まあ、食品卸の会社に勤めていて、その話はおかしいと思うけど、そんなポストは聞いたことがない。アンタの経験が、エリアマネージャーや支部の人を動かしたとも言える。それに応える自信...なんか、この人と暮らす前にもそんなことを言ってたっけ。思い出しちゃった。」

「三人で暮らす前の話?この娘がそんなことを言ってたんだ。」

「その話はしなくていいよ。でも、ちょっと似てる感覚かもしれない。あのときはオトーサンと対等な立場になりたいって思いへの自信。今は与えられるポストへの自信。社会性が問われてるから、自信が必要なのかも。」

「高い望みね。やっぱり、アンタが羨ましい。堂々と立ち向かう自信か...。」

「......あなたは逃げてもいいと思うけど?」

「そう思うのなら...と言いたいところだけど、そんな真面目に仕事をこなして、バリバリ稼いでくる旦那様、私はまっぴらゴメンかな。あなたと同じ景色を見たいのだから、真面目なあなたは求めてないのよね。」

「真面目な話をしてると思うんだけど。」

「そう見えないのがあなたの良さであり、悪さでもある。本音を探り出すにはちょうどいい熱量なのよ。ズルさというか、人徳というか。」

「酷い言い草だよ。それはともかく、とりあえず自信を付けてからでも答えはいいと思うよ。さっきも言ったけど、就職活動は続ける。これは絶対条件。選択肢を増やすことは悪いことではないからね。」

「そんなに簡単な話ではないと思うけど、私は今のアンタでも自信をもって送り出せるわ。でも、自分でそう決めたのなら、足掻いてみてもいいと思う。あ、あなたも、資料は修正してね。」

「んじゃ、取説部分は切り取って置こうかな。」

二人のそれぞれの意見、オトーサンは伸びしろを作れるといい、おねえちゃんはあの頃に思ったような自分自身に自信を付ける時間だという。それが今の私の仕事...かな。


「難しい顔してる。アンタは顔に出るわね。」

「おねえちゃんも私みたいに顔に表情を出す時はあるの?。」

「だって、今の私は嫌だと言っても、立場上嫌な役回りをしなきゃいけない。アンタと同じような新卒の子と会って、面接で良い顔だけをしているわけには行かないのよ。表情豊かなことすらマイナスになる。人を選ぶって大変ね。」

「でも、君の立場だと、どうも選考出来るような話はしてなかったような?」

「私は後輩のお目付け役よ。それに、面接官4人に対して、就職希望者は2人と決まっている。時間は60分。補佐と後輩が履歴書について聞き、私ともう一人がフリーの質問をぶつける。」

「就職希望者に対しては厄介な存在だよね。そこにドラマを求めるなんて。」

「履歴書やテンプレどおりの返答じゃ面白くないでしょ?まして、男性恐怖症の後輩よ?あの子に出来るのはギリギリ履歴書に関する質問ぐらい。それですら男性には若干引き気味に履歴書のことを尋ねる。補佐や彼の部下を彼女は慕っているけど、やっぱり就職希望者含め男性だけの空間に入れるのは、ちょっと怖いと思ってね。」

「姐御肌ってやつだね。」

「それで、この娘ぐらいすごいと思える子がいないと。」

「変人に囲まれてる私の感覚がおかしいのよね。あなたたち二人もそうだけど、部長補佐がいなければ、人事部は完全に崩壊するぐらい。そういう人たちを目の前にして、私は自信をなくしっぱなし。そういう人を統率する難しさよ。」

「......だってさ、オトーサン。」

「僕からしたら、君よりもこの人の取説のが作りにくいよ。プライベートで付き合えばもれなく肉体改造出来ますって?」

「あなたも走ればいいんじゃない?ようやく時間も空いて、身体を動かせるようになった。あなたとの運動じゃ、やっぱり気持ちしか回復しないのよね。」

「おねえちゃんぐらいケロっとしててもいいのかも。私は、ランニングでもスイミングでも一緒にやるよ?」

「今は、私の悩みよりも、アンタの悩み。私はアンタ。アンタも私。だから、分からないなら、一緒に悩みましょう。母親役だし、それぐらいさせてね。」

「頼りにしてる。私。」


私の両親は、私自身と恋人だったのを、久しぶりに思い出した。どこかズレてる。でも、この関係だから、私は今を生きられる。半年後、私は自信を持って、私自身の仕事を引き受けられるかな?




つづく

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