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Life 105.9 アンフェアなのは許さない

「お帰りなさい。あら、珍しいわね。アンタがぐったりしてるなんて。」

帰ってきた私達を、おねえちゃんはいつものように迎えてくれた。

「ただいま。なんか、すごく疲れちゃった。」

「あなたも疲れてる顔してるけど、なにか憑き物でも取れた?」

「そうかもしれない。あなたといつもいるから、ついつい自分の気持ちを忘れてしまいがちになってた。」

「ふぅ~ん。お盛んね。ま、楽しかったなら、それで良かったわ。私も、オンライン飲み会やってたし。」

「空き缶、ちゃんと捨てといてよ。おねえちゃんしか、普段お酒飲まないんだから。」

「はいはい、分かってます。......アンタ、少し休んだほうがいいわね。夕飯、何がいい?」

「じゃあ、とんかつ。上ロースで。」

「どこに買いに行けばいいのよ?ま、可愛い娘のためだし、ちょっと探してみましょうかね。」


私は、このあと夕飯の時間まで、昼寝をしてしまった。友達のLINEも気づかず、ずっと深い眠りに入っていた。

普段はここまで体力を使うことはなかった。いかに私と彼が、長時間、疲れも知らずに求め合っていたのか、自分の体力で分かってしまった。



「楽しかったんだ?」

「あなたには申し訳ないと思ってるけど、僕にはこれしか浮かばなかった。」

「私がしたことは、あの娘にもさせてあげないと、可哀想よ。それに、あなたが楽しめたなら、結果オーライよ。」

「自分の恋人が、他の娘と楽しんでるのに、あなたはそれでも優しく迎えてくれた。なんで、そんなに優しくなれるの?」

「あなたが好きなのは当然だけど、あの娘も私は好きなのよ。私は、あの娘が社会に出るまでは、甘い思いをさせてあげたいと思ってる。でも、バイトしてるから、社会にはでてるようなものよね。」

「本当にそれだけ?快く送り出してくれたことに、最初は疑問だったんだ。」

「そうねぇ。私が、普段あなたと愛し合ってる時に、あの娘は我慢して、私達を待ってる。その頻度が多くなってるから、やっぱり後ろめたさがあるのよね。」

「それは、僕も好きでしてることだから、僕も同罪だよ。」

「だからよ。あなたは一人、私達は二人。あなたは、私達を受け止める役目があるの。この前、失態を犯してしまったけど、あの時、私すごく楽しかったのよ。だから、あの娘にも楽しんで欲しかった。そのために、あなたには犠牲になってもらった。」

「やっぱり、あなたは僕が好きな君だよ。僕が、ただただ情けない男になっていく。僕は、惨めだ。」

「なんでそう思うのよ。あなたは私達を受け止めるだけで、何か不満?」

「それでいいのかなって。僕は、あなたを受け止めてる?」

「十分、あなたを振り回してるじゃない。優しいのは、あなたも一緒。けど、私達が楽しんでる間、あの娘が我慢してると思うと、私も惨めに思えるのよ。自分をほったらかして、自分の欲望のままに、あなたと楽しんでいる。こんなの、母でも、姉でもない。私達にしか分からない、私達二人だけの嫉妬が、そうさせてる。」

「......悩んでたんだね。僕もあの娘をどうすればいいか、本当に分からなくなってきている。」

「だから、私の失態とはいえ、同世代の、私の後輩と気が合ってくれて、大学の友人と仲良くなって、だんだんと外に関係を作ってほしいと思ってる。でも、あの娘が戻って来るのは、あなたの元。それは、私の元に、あなたが戻って来るのと、同じなのよ。」

「そう、この三角関係、お互いが認めあって、好きだから、複雑な心境になってしまう。夫としても、恋人としても、親としても、男としても、僕は堕落している。」

「堕落してると思うなら、あなたは、私が楽しんだだけ、あの娘とも楽しめばいいだけ。役得よ。」

「役得...、やっぱり、僕はおとぎ話の中で生きている、大人になりきれない子供が、甘やかされてるだけ。」

「甘やかされる相手がいることは、大切なことよ。人間、いつまでも強く生きることは出来ないし、私だってそう感じることが増えてきた。あなた達と生活していて、どれだけ救われているか。私がそう思うのだから、あなたも、あの娘も、弱くて、守られて、それでも生きることをやめなければ、楽しいことがあるって思って欲しい。」

「今回は、君が、僕達にくれたプレゼントだと思うようにする。僕も、また君を守っていけるように、一緒に生活する。だから、また頼って。」

「もちろんよ。私が、君なしじゃ生きていけないことを知ってしまった以上、君を頼って、君を守る。あの娘も、私達が頼って、守っていく。それが、今まで通りの生活ね。」


「そう言ってみたけど、やっぱり、私はダメね。送り出したのに、寂しくて、なかなか寝付けなかった。」

「寂しい思いをさせたけど、今日はまた三人。あなたは僕と二人のほうがいい?」

「本音はね。でも、いいの。あの娘だから許せる。私だから許せる。まあ、私を無視して、あの娘と抱き合って寝てたら、強引にでも剥がすけどね。」

「気をつけます...とは言ってみるけど、それはあなたと抱き合って寝てても、あの娘はそう思うんじゃない?」

「そういうことよ。ハーレムがいいことばかりじゃないって、もう十分経験してるのに、今でもそんなことを思ってるなんて、なんか心外よね。」

「僕はそこまで器用で、気遣いが出来る人間じゃないよ。こう思ってる自分が情けないんだ。」

「情けなくていいじゃない。私達は、そういうあなたが好きだから、一緒に生活して、あなたにも甘えられる。普通の女性なら、あなたは捨てられてるわよ。」

「そうだよね...。」

「でも、少しは自信を持ってね。人前に出ることが少ないとはいえ、彼女の結婚式に出席して、私を介抱して、後輩にまで気遣い出来るんだから、十分だと思ってる。」

「甘やかすなぁ。甘えていいの?」

「甘えるだけじゃないことを知ってるしね。それに、今から付き合ってもらうわけだし。」

「えっ、もしかして、帰ってきたばっかりなのに、これからとんかつを買いに行くってこと?」

「とんかつは帰りでいいの。たまには、一緒にウィンドウショッピングしない?」

「本当にそれだけ?」

「本当にそれだけよ。もうずっと、夕飯の買い物だって、あなたに任せっきりだし、私も少しは生活感のあることをしたいの。」

「こういう時だけ、可愛く話すの、ずるい人。」

「ずるいのは、お互い様よ。さ、疲れてるところ悪いけど、あの娘のために美味しいとんかつを買ってきましょう。」

「結局お惣菜なんだね。まあ、揚げ物は僕も慣れてないから、仕方ないか。」



寂しかったから、会いたい。寂しかったから、甘えたい。彼女は、あの娘にも平等な思いをさせたいと言いながら、常に葛藤し、ジレンマを抱えて、あれこれと試行しているのだろう。せめて、弱音を聞くぐらいのことを、僕はしてあげられるようにしないとダメだ。楽しいだけが、家族じゃない。だから、立ち向かう勇気を、僕は持ち続けなければいけない。悪いことを考えるな。今は、三人で暮らせる幸せを噛みしめる生き方しか出来ないけど、その先の不安を考えないようにしたい。


でも、荷物持ちだしなぁ。先のことより、今日の帰りのほうが不安だ。まったく、日毎にどんどん可愛くなる奥様には、娘以上に困ってしまうな。甘えたいのに、甘やかしたい。




つづく

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