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Life 107 成長過程

もう7月か。なんか、人生が短いというのも、歳を重ねるごとに分かるようになってしまう。

気づけば、僕もまた一つ歳を重ねてしまった。43歳か。う~ん、僕が43歳?そう考えると、三つ子の魂百までというのは、あながち間違ってないなと思う。


三つ子の魂...ねぇ。


「フワァ~......。う~ん。」

今日も今日とて、カーテンの隙間から夏の日差しが差してきてる。7月なのに連日30度を超えてるし、通勤だけで一苦労だ。

と、強い光に照らされた、美しい裸身が目に入った。あ、ショーツは履いてるから、裸ではないか。

「おはよう。今日も暑そうね。」

「あ、うん、おはよう。」

奥様は相変わらず変わらないなぁ。本当に、彼女の身体は本当に美しい。僕に見られるぐらいでは、もう動じることもない。しょっちゅう体を重ねてるのだから、今更恥ずかしがるようなこともないのだろう。体の凹凸に合わせて、陰影が浮かぶ。情けないけど、目がバッチリしてしまう。多分、一日で彼女の身体が、一番キレイに見える瞬間だと思う。

「あの、その...。」

「ん?、ああ、ごめんなさい。パジャマを脱いで、伸びをしてたところ。起こしちゃったわね。」

「うん、本音を言えば、そのままもう少し...。」

「はいはい、バカなこと言ってないで、起きるなら起きる。二度寝するなら、30分ぐらい寝てなさいよ。さすがに、もう少し早起きしないと、あなたを抑え込むことは出来ないわよ。」

「そこまでは思ってないです。ごめん。」

また目をつぶり、布団を被った。僕がドキドキしてしまう。見慣れてるけどさ...男心が分かってないよ。



彼女の解釈では、彼女の身体は、僕が願った結果、成長も老化もしないようになったという。そう思ってくれるのは嬉しいけど、ふと気になったことがあった。

もし、僕がほんの少しだけ、胸が大きくなったり、もっとはっきりとしたくびれが出来たりして欲しいと今願ったら、彼女の身体は変化するのだろうか?

いやいや、今だって十分、いや、十二分に僕の好みをパーフェクトに押さえているのだから、これ以上はないものねだりだし、まして、彼女がほぼ半生を掛けて鍛え上げた身体だ。そうそう僕の望み通りに変化しても、それはそれで、僕に何の権利があるのだろうか。



「またくだらないことを考えてるよね。そんなので、おねえちゃんの身体付きが変わったら、今頃おねえちゃんだって、私みたいになってるって。」

「君だって、成長速度が異常だと思うよ。この2年で、どんだけ胸が大きくなったの?」

「う~ん、今はFカップだけど、二人で暮らしてた時は、多分AカップとかBカップとか?その頃はおねえちゃんと下着を共用しても、大丈夫だったし。」

朝からこんな話に付き合ってくれる娘には感謝しかない。我ながら、本当に性欲まみれだと思う。

「それで、そう思ってみてるわけ?」

「思うだけならいいかなと思ってね。しばらく考えてても、どうせ効果なんてあるとは思えないけどね。あの人がまっすぐに家に帰って来る日は、大抵やる気のある日だからさ。その時に自分で確かめるよ。」

「願いは叶う...かぁ。オトーサン、ロマンチストだもんね。」

「今までで一番くだらない願いだと思う。それなら、君のインターンがうまく行って欲しいとか、そっちを願うべきだよね。」

「そっか、インターン。あんまり興味ないんだよなぁ。」

「あれ、いくつか応募してなかったっけ?」

「うん、応募して、8月に3社、計10日間働いてみるつもり。その後、バイトもするんだけどね。」

「勤労なことだ。僕ならとっくに諦めてるな。」

「さすが就職浪人。言うことが違うね。」

「いや、インターンなんて、僕の時代にはほとんどなかったからさ。まだ就職課に行って、求人票を見たり、回線の遅いネットで求人を調べたりしてたよ。」

「私もそういう世界だったかもしれないもんね。おねえちゃん、やっぱり凄かったんだね。」

「だって、今は大卒の就職率は、9割超えてるだろ?僕らの時代は、かろうじて6割だったからね。同級生も、ほとんどがブラック企業に就職した。あの人の会社は、中規模の企業の割に、ホワイトな企業っぽいからね。優秀なんだよ。僕より人が出来てる。」

「まあ、でも、そんなおねえちゃんも、今は支えてあげる番になったし。」

「会社の考え方が昭和なんだよなぁ。スタートアップ企業とかで、広報にアイドルみたいな容姿の人を雇うとかはあるかもしれないけどね。大企業もイメージ戦略があるから、経歴がはっきりしている芸能人を広告塔にしてることが多いけど、あくまで広告。あの人は接待要員に近い。」

「この前、会社の後輩さんと話をしてて、おねえちゃんが嫌そうに役員室に入っていって、出てきたらすぐに営業さんと出かけていったとか、そういうことも多いみたいだよ。」

つまり、会社の失態への、ご機嫌取りみたいなこともやらされてるということか。弱音を吐きたくもなるし、欲も抑えられなくなる。こんなことで、自慢するべきことではないけど、彼女は、僕らにとって、自慢の妻であり、母であるとしみじみ思う。僕も、しっかりしなきゃいけない。

「僕らがあの人に出来ることは、出来るだけしてあげなきゃダメだよね。」

「そうだよね。だけど、健康に気をつけてあげるのも、私達の役目だよ。ワガママもいいけど、それで体を壊しちゃうのは止めないと。」

「僕はその辺甘いからね。君の厳しいチェックのほうが、よほどアテになる。」

「その代わり、オトーサンは、自分も元気にならなきゃね。毎日求められても、応えるぐらいにならなきゃ。」

「僕もたいがいエッチな男だけど、努力はするよ。」

とは言ったものの、僕はそっちでも情けないからなぁ。今のこまめなエッチのほうが、彼女には応えてあげられてると思うけど、満足させてないよなぁ。はぁ。



後日、娘が変なことを言い始めた。奥様がお風呂に入ってる時、その話を聞くことになった。

「昨日、またスイミングに行ったじゃん。その時に、おねえちゃん、下着のサイズが、なんか変わってきてるって言ってる。」

「まあ、そりゃデリケートな問題だけど、女性は多少なりとも、ホルモンバランスで、体型が変わったりするんじゃないの?君だって、たまにものすごくいやらしく見えたりする時があるし。」

「それは私の魅力に、オトーサンがやられてる時でしょ?娘なのか、恋人なのか、そうやって見方を変えてるの?」

「雰囲気があるんだよ。妖艶な魅力みたいなのを発してる時。もちろん、あの人にも感じるけど、君は比較にならない。」

「そう感じてくれるのはうれしいけど、その話はともかくとして、おねえちゃんと3年接してて、そんな話は初めて聞いたよ。」

「ふ~ん、具体的には?」

「なんか、胸が苦しいとか、ショーツが上まで上がらないとか。」

そうは言われても、おとといエッチした時には、そんなことを言ってなかったし、まさか急に大きくなるようなこともないだろうし。だいたい、裸より、下着姿のほうが、僕にとってはレアだったりするからなぁ。イマイチ想像が出来ない。中年が盛ってると言われるほど、しょっちゅうしてれば、少しの変化は気づかないものなのかな。

「でも、本人しか、分からないことだよね。私もおねえちゃんに下着のサイズって教えてもらったけど、ちゃんと測ってもらって、Fカップだって分かったよ。」

「僕はなおのこと分からない。彼女はパーフェクトボディって言えるぐらいキレイな体型なんだし。」

「それはオトーサンが、私服より、スーツより、裸を見てる時間が長いからだよ。見飽きるぐらい見てるでしょ?」

「......返す言葉もない。」

「本当、エロガキだよ。自分の恋人で、奥さんなんだよ。もっと親身になって、見たり触ったりしてあげなきゃ。」

「あの、それは僕への不満ですか?」

「そうそう。お盆休みにあの人に会ったら、またにぶいって言われちゃうよ。」

「あのさぁ、僕の知らないところで、彼女に連絡を取らないでくれるかな。思い出の印象ぐらいは、キレイなままにしておいて欲しい。」

「ロマンチストだよねぇ。その思い出だって、にぶかったから、苦い思い出になったじゃん。」

「お互いに今が幸せだからいいの。あとで、連絡しておこう。」


「ふぅ。ビール、ちゃんと冷えてる?」

タオルを頭に被りながら、パジャマ姿で出てきた奥様。服越しに胸の形が分かる。さっきの話が本当だとして、やっぱりキツイから、夜はノーブラだったりするのかな。いや、それだったら、去年から寝る時はほとんどノーブラだし、彼女自身が変化に気づかないわけがないと思う。

「冷えてるよ。セルフサービスね。髪はどうする?」

「お願い。愛する旦那様。」

「バカップルめ。仲良くしてなさい。私はお風呂入ってくるね。」

「あ、僕はシャワーだけでいいから。お湯は抜いておいて。」

「分かった。じゃ、夫婦水入らずの時間、ごゆっくり。」

あの娘も言うようになった。全然うれしくない。だけど、こういう何気ない会話で、僕らはバランスを保って生活出来てるんだよなぁ。感謝しとこう。

「ビールの前に、乾かして。お願い。」

「ずるい人だよ。あの娘より可愛い顔しちゃって。ちゃちゃっと乾かすよ。」

しかし、寸分違わず、キレイに切りそろえたミディアムボブだよなぁ。普通、人間の髪の毛は、まばらに伸びていくものだと思うけど、彼女は髪の毛の伸び方まで完璧なんだ。あの娘には悪いけど、彼女は、本当に、僕の理想が現実に現れた人。あ、そうか。理想だと満足してるから、僕はにぶいのかもな。もしかして、病気だったりしたら怖い。けど、そんなデリケートなことを、僕が切り出すことなんて、また怒られるどころか、相手すらしてくれなくなるかもしれない。

「どうしたの?」

「ん、気にしないで。ちょっと不思議に思っただけ。」

「え、何を不思議に思ったのよ?私のこと?」

「まあ、そうだけど。髪の毛乾かしてるから、動かないでね。」

「終わったら聞き出すわよ。覚悟しなさい。」


「で、何を思ったの?言ってみなさいな。」

なんで、僕を問いただす時は、母親みたいな口調になるのだろうか。それだけ母親も板についてきたってことなのかな。

「あのね、さっきあの娘から聞いたんだけど、なんか下着のサイズが合わないんだって?」

「あの娘、また大きくなったのね。成長期が完全にズレてるわよね。」

「そうじゃなくて、君の話。」

「ああ、その話ね。そうなのよねぇ。最近は体型が変わらないと分かってから、カップの入ってるキャミだったり、ソフトブラを好んで着けてたんだけど、外部の人と会う時には、しっかりとブラを着けてるの。」

会社で内勤する時間が増えてきたりして、ちょっと楽してたってことか。それに、洗濯してると分かるけど、彼女の下着は、娘みたいに装飾のついたものを見たことがない。シンプルなものを着用しているのも、彼女らしい。

「でね、あんまり気にしてなかったんだけど、今日、あの娘とスイミングに行ったじゃない?その時に、まず水着がうまく着られなかったのよ。」

「それは、君が着ている水着が、本格的な競泳水着だからじゃないの?」

「それもあるのかしら。でも、着てみたら、どうも胸の締め付けが強かったり、お尻にも食い込んだりしてるわけ。」

あっけらかんと話してるけど、妄想を掻き立てるような言い方はやめて欲しいよ。僕も見てみたくなる。

「ふむ...、それで?」

「でも、大した問題じゃないし、体調不良でもなかったから、ちょっとむくんでるのかもしれないと思って、気にせず泳いで、帰ろうと思って二人で更衣室に戻って、着替えてたのよ。その時に、さっき着けてたブラだと、やっぱり胸が苦しい感じがしたのよ。鏡をみたら、ショーツもいつもの位置まで上がってなかったし、それで下着のサイズが変わったのかなと思ったのよね。」

「あんまり言いたくないけど、太った?」

「体重計に乗ったけど、いつもと同じぐらい。え~と、」

ストイックだから、彼女は自分専用の体組成計を持っていて、iPhoneと連動させている。この姿勢が、自慢の奥様たる所以の一つだと思う。敵わないよね。

「あ、ほらほら、ここ1週間では、日によってプラマイ300g程度ぐらいね。」

すげえ、体重の推移ってこんなに細かく測れてるのか。技術の進歩は恐ろしいな。

「1ヶ月ぐらいの記録って見られるの?」

「そんなの当たり前よ。ほら、こんな感じ。」

直線だよ。日常生活でカロリーの接種と消費があるのに、こんなにまっすぐな線になっているって。本当に会社に行ってる?実はジムトレーナーとかやってるんじゃないの?

「......怖い。」

「バケモノ呼ばわり?心外なんですけど。」

「君が体を動かして、色々な気持ちを整えてるのは分かってるけど、それにしても、これはボクサーとかで体重制限をしてるような人のラインだよ。」

「ストイック過ぎるのもどうかとは言ったけど、染み付いた習慣はなかなか変えられないものよ。スイミングにいく分、ランニングはあの娘と併走して5キロにしたしね。」

「いやはや。それで下着のサイズが小さくなることって、考えられないんだけど。」

「そこよ。私も自分の体だけど、変だと思うのよ。」

「まさかとは思うけど、病気とかじゃないよね?」

「健康診断を見る限りでは、まったく問題ないけど、確かに見逃しがあって、今発症してるとかいうのは、嫌よね。」

「健康第一だし、病院に行って検査を受けたほうがいいのかな...。う~ん。お酒飲んでるしなぁ。」

「お酒だって、適量ならば健康にもいいって。それに、あの娘が監視してるから、私もこの家では、特別なことがない限り、羽目は外せないわ。」

「それならいいけど...。心配だよ。」

「ま、とりあえず、私も下着に横着してた部分はあるし、休みにサイズを測ってもらって、合うサイズのものを買ってくるわよ。」

「うん。本当は、僕が口を挟むことじゃないんだろうけどさ。」

「心配してくれてるんでしょ?もっと心配してくれていいのよ。」

「そんなことしたら、僕は気苦労で倒れてしまって、また迷惑を掛けるよ。強い女性だと知ってるから、君の思うようにして欲しいんだ。」

「少しは......あ、でも、実益という点で、私の体型の変化は、君を誘惑するのには使えるわね。」

「それはいつも使ってる。言ってるでしょ?僕の理想の女性は、君なんだから。」

「その言葉を聞きたかったのよね。やっぱり、言ってもらえるだけで、嬉しいものなのよ。」

「そう。あのさ、僕が出来ることがあったら、ちゃんと言ってね。」

「じゃあ、毎日今の言葉を言って欲しい。」

「......却下。僕の理想は、安売り出来ない。」

「もう。理想の女性がいいって言ってるのに、難儀な人ね。」

「......そりゃ、娘にバカップルって言われるわけだ。」

「本当ね。ま、それが悪いことじゃないだけ、あの娘には分かってもらってるから、良しとしましょう。」

まあ、いまは良しとして、やっぱり不可解なことは多いよなぁ。もしかして、母性が目覚めると、女性ホルモンが活性化して、本来普遍的な体型であるはずの彼女も、娘のようにフェロモンを撒き散らすような人になるのだろうか。それはそれで、心配になるなぁ。



さらに後日。時間が19時を回っていた。貴重な休日だと、なんかウキウキしながら下着を買いにいった奥様からの連絡がまったくない。

「おねえちゃん、遅いね。」

「何にも連絡ないし、どうしたんだろうね。」

「でも、おねえちゃんが帰ってこなければ、私がオトーサンを一人占め出来るもんね。」

「そう言っても、別に何かするわけでもないし、先に夕飯を食べる?」

「そうだね。なんか作って?オトーサン。」

「はいはい。冷蔵庫に何かあるかなっと......なんにもないね。」

「じゃあ、デリバリー?」

「三人でいるならそれでいいけど、行方不明者がいる以上は、注文しにくい。」

「ピザとか食べようよ。私の体がジャンクフードを求めてる。」

「食べたいだけでしょ?まあ、適当にセットでも頼んで、サラダでも付ければいいか。いや、でもそんなものに3000円は高いよなぁ。」

「おねえちゃんがいないだけで、食費の単位にシビアになるよね。」

「僕らは出されたものをただ食べるだけで満足する人間だから、正直これからマックでもファミレスでもいいけど、彼女は割といいものを食べてるから、嫌がるんだよ。」

「その割に、羽目を外して、ファミレスで昼間からビール頼むじゃん。」

「お酒のアテにしか、食べられないってことだよ。そのビールだって、発泡酒は飲まないと来たもんだ。なのに、お酒には強くないっていう。」

「お酒に弱いから、ある程度の健康は守られてるってことか。なんか、納得する。」


ガチャ

「っと、帰ってきたかな?」

玄関に行ってみる。そこには、両手いっぱいに袋やら、手提げやらを下げた奥様が、ニヤニヤしてる。緩みっぱなしの顔だ。

「たっだいま~。」

「あ、うん、おかえりなさい。」

「ねぇねぇ、お刺身の盛り合わせ買ってきちゃった。みんなで食べましょう。」

「ちょうど良かった。夕飯どうしようって、話してたところだよ。」

「あの娘にもちゃんととんかつを買ってきてるわよ。肉食でしょ?」

「準備がいいね。ちょっと呆れる。」

「なによ。もっと盛り上がってよ。あなたにも関係ある話なんだから。」

「まあ、玄関で立ち話もなんだし、ご飯食べてから聞くよ。」


だけど、ご飯を食べて、食休みをしたら二人はランニングに出かけていった。そんなに溜めるようなことなのかな?

まさか、明るく振る舞ってるだけで、実は日帰り検査とかして、良くない結果でも出たからとかじゃないよね。自分でもそんなことはないと分かってるけど、彼女はカラ元気で乗り切ることも多いから、心配になる。性分とは言え、心配性過ぎるよなぁ。


定例会の時間になってしまった。二人は一緒にお風呂に入り、その後、僕もお風呂から出てきたところ。

「さてと、その話ってなんなのか、教えて欲しい。」

「聞きたい?じゃあ、言って欲しい言葉、聞きたいなぁ。」

なんか変なテンションというか、自分に酔ってるような感じというか。

「あなたは、僕の理想の女性です。」

「はい、よく出来ました。」

「なんだそれ...、おねえちゃん、もしかしてクスリとかに手を出してないよね?」

そういう解釈もあるか。情緒不安がそのままテンションを上げることもあるし、僕の飲んでる安定剤だって、普通の人が飲めば、テンションが上がってしまうのかも。

「そんなわけないでしょ。ゴホン、私、ついに胸がCカップになったんです。」

「「えっ、」」

娘と顔を見合わせてしまった。それだけ?

「ごめん。あのさ、それは嬉しいんだけど、それだけ?」

「あと、お尻のサイズも若干大きくなったみたい。どう?苦節20年以上。私にもようやく成長期が到来よ。」

いや、安心したけど、拍子抜けした。そんなことをここまで引っ張るの?あ、まあ、彼女に身体的な変化が起きたら、確かに一大事か。

「ふぅ~ん、要は、下着のサイズが、本当に合ってなかったと。」

「やっぱり普段から下着に横着してちゃ、変化に気づかないものね。測ってもらったら、Cカップあるって。」

「でも、今ってノーブラだよね?それに、カップサイズが大きくなったってことは、スリーサイズも変化したってことだよね?」

「それが不思議なのよね。スリーサイズは、胸は変わらないけど、ウエストが1cmへこんで、お尻が1cm大きくなった。」

「微々たる変化...、いやいや、じゃあ、胸の周りは、逆に細くなってるってこと?」

「アンタみたいにどんどん大きくなっていくだけじゃないのね。私もちょっと驚いてる。」

「ぐぬぬ、納得いかない。そんなのずるいよ。」

「ずるいとはなによ。私だって、よく分かってないんだから。」

女性同士の会話だよな。僕、全然分からない。でも、カップサイズが大きくなるってことは、胸が大きくなるってことは分かる。でも胸の全体的なサイズは変わらない?そんなこと...あったから騒いでるんだよなぁ。ん、そもそもに、BカップとCカップって、どれぐらい違うのだろう?

「あの、すごくいやらしいことを聞くんですけど、」

「あら、あなた、きょとんとして、可愛い顔ね。」

「BカップとCカップって、どれぐらいサイズが違うの?見た目で分かったりする?」

「う~ん、オトーサン、それはあなたが一番分かってるはずなんだけどなぁ。」

「えっ、そうなの?」

「見分けがつかないのも分かるわよ。アンタみたいに1年そこらで、BカップからFカップまで大きくなれば、変化に気づくけど、大きくなったと言われると、見た目で判断しろって言うのは、なかなか難しい。私だって分からなかったんだから。」

「そういうものなのか...。」

「でも、私は嬉しいわよ。20年以上スリーサイズが変わらないことがコンプレックスだったんだから、体型の変化が少しでもあったら、テンション上がっちゃう。」

「言ってることが普通じゃないんだよなぁ。ま、おねえちゃんはバストアップしたくでも、ならない体のはずだもんね。」

「アンタが自分の体型を気にする気持ち、ようやく分かったわ。普通は、維持するだけで大変なのよね。知らず知らずとは言え、私はランニングで鍛えてたから、変化がないものだとずっと思ってたけど、逆にそれをこんな歳で知れて、一喜一憂する気持ち。親なのに、まだまだ知らないことは多いわね。」

「ようやく分かってくれた。だけど、私は私で、おねえちゃんとトレーニングすれば、おねえちゃんみたいになれるかもしれないから、続けるよ。」

「あったりまえよ。私も甘んじる気はないし、トレーニングとマッサージをすれば、希望が持てると分かった。このまま一緒にトレーニングしましょう。アンタもせっかくのメリハリボディを、もっと磨き上げないとね。」

「負けないんだからね、おねえちゃん。」

微笑ましい光景なんだろうけど、女性の体型の話を、僕の前でする必要ないと思うんだよなぁ。目ざとく見るのが彼氏の仕事って話で聞かせてるのかな。


「ところで、胸をマッサージしてるの?」

「えっ、それをオトーサンが言う?」

「マッサージは例えよ。本当、にぶい人なんだから。」

......そういうこと。エロガキ、ちゃんと役に立ってるじゃん。




でも、この話には後日談がある。

この日、下着を1週間分買ってきてたり、娘や僕に胸を揉ませる始末。もちろん、トレーニングも欠かさなかったし、こまめにエッチに誘われては、胸を強調していた。そんな自慢のCカップが、8月に入る頃には、今度は買ってきたブラがゆるくなったと言い出し、前のブラをしたらちょうどいい、Bカップに戻ってしまった。ある意味、彼女にとって、ひと夏の経験となってしまったわけ。それでもめげずにバストアップを目指す奥様だけど、僕と娘は、ある仮説を立てた。

「そう言えば、7月の頭に、こんな感じで朝ご飯食べてる時、君のくだらないお願いとかなんとかを話してたよね。」

「ああ、そんなことを話してたっけ。ん、もしかして、そういうこと?」

「あ、気づいちゃった?おねえちゃんが自分の体型を解釈した時、君の願った体型になったと自分で言ってたじゃん。」

「あの時、くだらないけど、願ってみたら、ほんの少しだけ、サイズが変わったってこと?」

「私にはそう思えるんだよね。今はそんなことをお願いしてないでしょ?」

「う~ん、じゃあ、願ったら、あの人もメリハリボディになるってことなのかな?」

「さすがにそれはないんじゃない。オトーサン、試しに毎日お願いしてみたら。」

「ものは試しか。この前のことが偶然だったと考えて、毎日祈ってみようか。」


結果?言う必要ないよ。でも、その後、奥様の胸のサイズは、BとCを行き来するようになったから、やっぱり単なる体調の問題なのかもね。




つづく

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