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23話 手伝い

ギルドの外に出て、倉庫のような場所に案内されると、毛布や予備の防具が置かれている。多くの種類の防具があるのだけはわかるけれど違いがよく分からなかった。とにかくたくさん置いてあるのだけは確か。


「ちょいと(ほこり)被ってるが、叩けば大丈夫だ」


 ガインさんがドアを開けた瞬間、鼻がむず(がゆ)くなり、くしゃみが出た。普通の人がどれくらいか分からないけれど、自分のくしゃみは4回も続くから何気に辛い。咄嗟(とっさ)に手で抑えたけど、手の中が凄いことに……。


「ごめんなさい、少しだけ顔逸らしてくれませんか?」

「あ、ああ。ただ、大丈夫なのか?」

「全然平気です」


 後ろを2人が向いた後、リュックからハンドタオルとティッシュを取り出して、拭いた。マスクがあればなと思いながら、なかなか止まらないものに苦戦する。なんでこんなに鼻が弱いんだろうって毎回思う。香辛料を少し嗅いだだけでもなるからな。

 しばらくはハンドタオルで抑えておくしかなさそう。


「も、もう大丈夫です」

「病気には気を付けろよ」

「うん、ありがと」


 ハンドタオルで鼻を抑えながら、もう片方の手で1枚だけ毛布を持ち、ギルドに戻る。ガインさんとエヴァンは6枚くらい持っていた。何度か行き来するけど、私が手伝えることってこういうことしかない。なら、皆に行き渡るように自分なりに頑張らなければ。


「あかりちゃん、どうしたの?」


ギルドのドアを開けて、中に入ってきた私を見た瞬間、目を見開いて驚いたゾーイが物凄い勢いで近づいてきた。鼻にタオルを当てているから鼻血が出たと勘違いしているのかな。


「大丈夫。くしゃみで飛散物が広がらないようにってしてるだけだから」

「あら、そうなの? なら、良かったわ」


 私の頭を一撫でした後、毛布を受け取ったゾーイは気絶している人たちのところに戻って掛け、まだ動ける人達に声をかけていた。突然現れたゾーイに不思議にそうにする人達や怒っている人たち相手に、自分は治療する側の者だと説得していた。言葉だけでは信じないという人には、脈の図り方を教えている。現代で生きる私にとっては、普通のことだったが、ここでは違うのかもしれない。そもそも異世界だしね!


「はぁ、疲れたわ」

「ゾーイ、お疲れ様」

(いや)してちょうだいな」


 私に近づき、抱きしめてきた。ただ、強く抱きしめてこないのは、最初召喚した時に自身の胸で苦しくさせてしまったことがあるから遠慮しているんだと思う。多分だけどね。


「よしよし……?」


 ゾーイの頭は私の身長的に届かないから背中を撫でているんだけど、これで(いや)されるかな。

 何度も撫でていると、ゾーイの体から力が抜けていくのが(じか)に伝わった。


「元気出たわ、ありがとう」


 そう言っているけど、まだ私から離れない。自分自身、抱き心地がいいってわけではないし、顔もそこらにいる普通の人と同じ。それでも、何故かまだ引っ付いたまま。ちょっと苦しくなってきた。


「ゾーイ、他の人に毛布かぶせてあげなきゃ」

「他の人たちがしてるから大丈夫よ。それに、(ほこり)吸ったら貴女くしゃみが出ちゃうでしょ?」


 そう言われると、何も出来なくなった。

 鼻が弱いといろいろと大変なことになる。鼻は荒れ、喉が痛くなり、(ほこり)を吸えば、呼吸器官が狭くなり、ヒューヒューと音がなる。これ程病気をもっているのは珍しいんじゃないかって言うくらい、自分の体は弱い。それでも生きているのは、薬と予防のおかげでもある。

 危ないところには行かない。それと同じ。

 苦しくなるとわかっているところには、なるべく行かないようにしてる。それでも必要な時は、対策して行くしかないけれど。


「くしゃみが出ようが咳が出ようが手伝いに行くよ。私に出来ることはこれくらいしかないから」

「あかりちゃんがそう言うなら」


 私を抱きしめていた腕をほどかれ、自由になると、私は手伝いをするためにさっきの倉庫に向かった。その後を付いてくるゾーイ。何かあるといけないからと言いながら付いてきている。


 案の定、くしゃみと鼻が酷くなってゾーイとエヴァンに更に心配されることになった。

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