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ザーッと外から本降りの雨の音がする。
アルフォンソの寝室の窓にはレースのカーテンがかかっていて雨の様子を直に見る事は出来ないのだが──。
ミーシャは窓の方を見つめ、ただその雨の音を聴いていた。
ミーシャのすぐ目の前には、ベッドの上でクッションに身を預ける形で上半身を起こしているアルフォンソの姿がある。
目こそ開いているのだがそこに生気はなく、ただただ虚空を見つめているだけだ。
寝たきりではどんどん体が弱ってしまうので少しずつ体を起こして過ごしてもらっている。
アルフォンソの体調は、初めの頃よりも随分良くなってきていた。
顔色もいい。
意識がはっきりしていたなら本人が『もう大丈夫だ』と言って仕事を始めそうな気さえする。
意識がはっきりしていれば──……。
詮無き事を考えかけ、ミーシャはその考えを振るい落とす様に頭を振って気を切り替える。
そうして“ぼんやり”のままのアルフォンソへ向かって微笑んで話を切り出す。
「兄上、今日ね、兄上に私の作ったお料理を食べて頂きたくって城の厨房を少し借りたの。
だけどすぐに追い出されてしまったわ。
私の手つきは危ないんですって。
怪我をしてはいけないからお願いだから私たちに任せてくれって。
失礼しちゃうわ。
私、シエナさんに教わってちゃんとお料理を作れる様になったのよ。
リッシュもジュードもおいしいって食べてくれていたし。
ちゃんと包丁だって使える様になったのに」
思い出し、最後の方は少しむくれながらもミーシャは言う。
いつものアルフォンソなら『まぁまぁ』と宥めながら苦笑いしそうな所だ。
けれど今は何一つ反応がなくて……。
ミーシャはふいに──ずっと不安に思っていた事を口にする。
「兄上……。
兄上が父上や母上を手にかけただなんて、ウソよね……?
ジュードはきっと、何か思い違いをしたのよね……?」
そっと静かに問いかけた先で、やはりアルフォンソからの返答も反応もない。
──気長に語りかけるしかない。
そう頭では理解していても、ただただ一方通行の会話は何だか淋しく、悲しくなる。
どうして、なのかしら。
どうしてリッシュには、口を開いたの……?
リッシュは右塔からアルフォンソを救い出したあの短い時間に、アルフォンソからの言葉を引き出したと聞いている。




