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「トシオ。今日お父さん早く帰って来るからーー」
玄関に入るなり母親が声をかけてきた。
「だから?」
靴を脱ぎ捨て、2階に上がる。
オロつく母親に憎しみさえ覚えた。「ちっ」
派手な舌打ちが、対して広くない家に響く。
高卒で働く事も、彼女と結婚する事も、頭から否定だ。そうなっている現在でさえ、そうなのだからーー。
走り出している人を無理に止めたらどうなる、バランスを崩し転ぶだろ。
仰向けにベットに倒れ込む。スプリングが背中で軋んだ。
「あーあ、んだよ。ちくしょう」
いたたまれない言葉は宙に舞い、虚しく消えた。
スマホをボディバックから取り出す。おや、メールだ。彩子、彼女から。
『3人で幸せになろうね』ハートマーク。
僕の強張っていた顔の筋肉が緩む。人は恋をする為に生きているのだと思うよ。




