71話
星と月が綺麗な夜をドラゴンが旋回している。
「ほら見てみろ」
その森の中にいるのは二足歩行でひとつ目の体の大きな魔物。腰蓑を身に付け棍棒を手に持っているのが10匹以上はいる。
「あそこに図体だけでかい頭の悪そうな魔物がいるだろ?あれを倒そう」
細長い体をしたストームドラゴンのドラは言った。
「サイクロプスか。いいわね」
黒髪天才剣術少女シャルルは答えた。
「全然駄目だよあんなの、違うのにしよう」
平凡な顔をした黒髪の少年レイは答えた。
シャルルが風邪から復活した後、なんとかドラに頼み込んでもう一度背中に乗せてもらって今日は魔物狩りへとやって来た。
「なんでだよ!せっかく見つけてやったんだぞ」
「見てみなよあの真ん中にいるサイクロプスの色。赤いじゃないか」
「それがどうしたんだよ」
「魔物の表皮の色で強さの判別ができるんだよ」
「なんだそれ?」
「魔物彩色識別法ね」
「魔物の体の色を見て強さを判断する方法の事だよ。青<黄<緑<赤の順番に魔物っていうのは強いんだ」
「なんだそんなことか、それなら見た感じでなんとなくわかるよ。わざわざ難しい名前つけなくてもさ」
馬鹿にした感じで言われた気がする。
「分かってるなら止めてくれよ」
「大丈夫だって、俺はあいつの強さは分かってるんだ」
「どういうことだよ」
「だってあいつとは前に戦ったことあるから」
「はあ?」
普段は外を自由に生きているドラがどんなことをしているのかは知らない。けれどまさか赤いサイクロプスを相手に戦いを挑んでいるとは思わなかった。
「危ないことするなよ」
「ちゃんと逃げれたから大丈夫だよ」
「どういうこと?」
シャルルも聞く。
「前に戦った時には勝てなくて逃げたんだ。けどあの時より今の俺の方が強いから大丈夫。今度こそ絶対に勝てるから」
自信満々にドラが答えた。
「前に勝てなかったんなら止めておけよ」
「何言ってんだよ、負けっぱなしだと悔しいだろ?それに前の時は周りにいる奴らが邪魔して来て集中できなかったんだ。今回はお前らがいるからそいつらは任せる」
そういう作戦か。けどまあ赤いやつと戦わなくていいのならこっちとしてはありがたいけど。
「そんなの駄目よ!一番強い奴は私が倒すわ」
「ちょっと落ち着きなさいよシャルルさん」
かなり厳重に防寒対策して気てモコモコのシャルルに言う。
「落ち着いてなんかいられないわよ!私は前からずっと悔しかったんだから。ようやく私の剣を試すチャンスだったのに風邪なんかで帰ることになっちゃって」
そう言って三日月宗近に触れる。
鞘を抜くとその刀身には三日月模様が浮かぶ大変美しい刀だが、前回は一度も使われることは無かった。
それが欲求不満だし自信もあるんだろうな。
「ドラ、もういいから行っちゃって!こんないつまでもグジグジ言ってるやつなんか置いて行けばいいのよ。あんな奴ら私たちだけで倒せるわ!」
「さすがはシャルルだ!よっしゃーいくぜー!」
急激に高度を下げてサイクロプスの群れへと向かって進んで行く。
「ほいっと!」
そう言って途中からシャルルはドラの背から飛び降りた。
マジか。
いくら高度を下げてくれたとは言ってもまだちょっとしたビルの屋上くらいの高さはあるぞ。
「上弦の雫!」
落下しながら地上に向けて刀を振るった途端、水面の波紋のような黄色み掛かった衝撃波が生まれてサイクロプス達が倒れた。
「俺も負けてられねえぜ!」
体の中心ぐらいからうねりが発生したと思ったら、ドラが光弾を吐いた。緑色をした光弾は地面に当たった途端に炸裂してサイクロプス達をなぎ倒した。
体を発光させながら切りかかるシャルル。
上空から光弾を吐くドラ。
ひとつ目の魔物が宙を舞う。
空気を読んで飛び降りていたレイは映画でも見ているような気持になっていた。




