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☆ Side イービス

 私は幼い頃から自分の境遇に不満を持っていた。

 村で一番の美人。それが何? 私なら国で一番の美人だわ! なのにこんな田舎に生まれ育つなんて、なんて不公平なの! ずるいわ!

 都会さえ行けば……。都会にさえ行けば、私にふさわしい財力と権力と身分を与えてくれる男が勝手にひれ伏するわ。だから、都会……できれば王都に行かなくちゃいけないのに、パパもママも分かってくれない!!

 だいたいママなんて、私()似た美人なのに、こんな田舎暮らしで満足するなんて、ありえないわ!! それにママの友達、その娘たち。少し年上な女性を見るたびに、いつか私もあんな風にこんなド田舎に埋もれていくんじゃないかって、不安と焦りで死にそうになる。



 そんな中、さえない村人のアークが魔術学園に入るために王都に行くと盗み聞いたの。

 アークは子供の頃に村に一人で村にやってきたかわいそうな子供。確か、なんでも自分の村が魔物に襲われたか大火事だかで、自分以外の村人は全員死んだんだっけ? 村の外にいたアークだけは無事だったとか聞いた覚えがあるわ。

 そんなアークが村を出て行く? 私を差し置いて!? 魔術学園? つまりはこの国の首都に行くって事でしょ!?

 そんなの許せない。私を差し置いて、あんなしょぼい男が都会に行くなんて……。それも、魔術学園を卒業して、魔術師になれば貴族のような生活ができるですって!?


 ……いいことを思いついたわ。アークに王都に連れて行ってもらって、その上、運命の相手と出会うまで生活費をアークに出させればいいのよ! なんて頭がいいのかしら?


 実際に行動いてみると、アークを落とすのは簡単だったわ。

 これなら、酒場の酔っ払いを落とす方が難しいくらい。自慢のおっぱいを触らせることすらしなくていいんですもの。

 パパとママは私がアークと一緒に王都に行くことを反対したから、私の僕たちに命令して「出て行け」って言われるまで殴らせたわ。だって、愛しの娘の旅立ちを祝福しない親なんて、ただの毒親でしょ?


 王都に来て、アークに借金をさせて、オシャレな屋敷を借りることができたわ。どんなドレスを買おうかしら? どんなアクセサリーを買おうかしら?

 そんなワクワクした気持ちは、王都の冷たい人間にズタズタに引き裂かれたの。

 マダム・ドリュー? 誰よそれ!? ただのお針子でしょ!? はあ? ドレスの予約に三年待ち? バカ言わないで! お金ならあるわ! 私のドレスをさっさと作りなさいよ!!

 なんで私の靴やアクセサリーを笑うの? え!? 偽物? 宝石じゃなくてタダのガラスですって? そんなバカな、この靴一足で村での生活費一年分は払ったのよ!!

 サロンでマッサージ? そんなの必要ないわ。完璧に均整のとれたこの体だもの。将来のため……? 痒い。痒い。痒い、痒い、痒い、痒い、痒い。全身が痒すぎて死にそう!!


 思い出しても腹立たしいことばかり。有り体に言って、私は王都の人間にとっては垢抜けなくて騙しやすい田舎娘だったのだわ。

 けれど、私は運命の人と出会った。


――ヘブライス・キール伯爵。


 伯爵よ、伯爵!! 本当の貴族!!

 そんな人が私を見初めたの!!

 そりゃあ、かなり年上だし、見てくれも性格もまだアークの方がまだましかも知れないわ。でもこれはチャンス。磨きに磨いたこの体を出会ったその日に差し出したわ。アークには、私の体には指一本触れさせなかったのにね!! 当然でしょ。あんな下賤な男。おまけに、魔術学園も退学の噂があるっていうじゃない。私の僕として貢がせてもらっただけでも幸せに思うといいわ。

 そしてヘブライスは私に結婚を申し込んでくれたの。結婚したら私自身も貴族なの! とうとう……とうとう、本当の私(・・・・)になれるのよ!!

 

 計算違いといえば、ヘブライスのバカ母親が豪華な結婚式を許さなかったこと。ヘブライスも母親の言うことなんて、聞かなくてもいいのに!!

 この償いはきっとしてもらうわ。

 けれど、なんて幸せなんだろう……私は……これでイービス・キース伯爵夫人! 本物の貴族よ!!



次回は、明日0時に予約投稿です。

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