白百合の面影を抱いて
暫くの間、わたしは由里絵が亡くなった現実を受け入れられなかった。食事も喉が通らず、毎日、由理絵の夢ばかりを見ていた。全て他愛もない、日常を切り取った風景が、走馬灯のように浮かんだ。けれども最後に見た由里絵の惨憺たる姿も、悪夢として時折、訪れたのだ。
雨晴病院のベッドの上で、由理絵は静かに眠り続けていた。今にも目覚めそうな、見慣れた寝顔だったのだ。あの光景は何かの見間違えかもしれない。きっと、今は怪我も相まって眠りについているだけだろう。明日になれば、目を覚ましてくれる。また元気な笑顔を見せてくれる。最初は、そう信じていた。
しかし、いくら彼女を眺めていても、その双眸は閉ざされたままだ。顔色も見たことがないほどに青白く、腹部の運動も見受けられない。段々と、現実と妄想の間に、わたしは苛まれていた。
死因は自殺。手首をナイフで切ったことが原因と聞かされた。しかし、わたしは自殺の原因に繋がるであろう、或る心当たりがあった。
原因は、イジメだ。由里絵が部活グループのLineで同性愛だとバラされ、酷く傷ついたと相談された。わたしは怒りを抑えられなかった。だから、由理絵の顧問である青山に相談をしたのだ。彼女も、相当なショックを受けたらしく、意気消沈としていた。
同性愛だとバラされてから、間違いなく由理絵は病んでいた。学校に行きたがらず「わたしって、変じゃないよね?」と何度も問いかけていた。それが口癖のようになっていった。きっと不安で、自分でも、どうしようもなかったのだろう。変なわけがない。変なわけ……。
わたしは、由理絵を愛していた。いや、今でも愛している。彼らは、わたしから、大切な存在を奪った。それは断じて許せない。彼らにも、わたしと同じ思いをしてもらわねば、気が済まない。もしかすると、由理絵はそれを望んでいないかもしれない。それでも、この気が鎮まらないのだから、許しておくれ。全てが終われば、わたしも、じきに逝く。だから、待っていてほしい。由里絵。




