20.不思議な夢と偶然の出会い
いつの間にかに私は見知らぬ森の前に一人で立っていた。
いつもよりも目の高さが低いので思わず自分の手を見た。
今の手の大きさよりも小さい...これは3歳ぐらいの手の大きさかしら...。
私は後ろを振り返って見てみる。
そこには街のはずれのような道があって、見る限りでは人がいない。
迷子になった可能性が高いのでその場に立ったまま、誰かが探し出してくれるのを待つ。
しかし、いつになっても自分を探してくれる人はいなかった。
どれぐらい時間が経ったのだろうか、森の奥から歌声が聞こえた。
澄んだ声でただ誰かを待っているかのような、その声は静かな森の中で響いている。
...この声知っている気がする...誰の声だったかしら?
その声の持ち主を探すために私は森の奥へと歩き始めた。
あともう少しで声の持ち主がわかると思った時に私は夢から覚めた。
目を開けると、昨日からいる別荘の白い天井が見える。
私は体を起こして朝の支度を始めた。
普段通り目覚めたのは早朝で、部屋の空気もまだ肌寒さを感じる中私はさっき見た夢のことを考える。
しばらく考えているとメイドのティナが朝食ができたと伝えに来たので私はそこで考えるのをやめた。
食卓に着くと他のみんなもちょうど来たようでそのまま話しながら席に着く。
今日見た夢の話をミラ達に言うと、首をかしげていた。
「夢ですか、不思議な夢ですわね。」
「私もそういう夢は見たことがありませんね...。」
「何かメッセージがあるのでしょうか?」
みんなは口々にそうつぶやいて考えている。
するとドアのほうから声が聞こえた。
「もしかするとそれは童話にでてくる『森の歌姫』ではないでしょうか。」
驚いてドアのほうを見るとシェイナスがそこに立っていた。
「森の歌姫っていうと、聖歴の始まりと言われているものですよね。」
私は昔読んでいた話を思い出しながら言う。
「その森にはある名前がついているそうですよ。名前は「迷いの森」と。」
間を開けて彼は話す。
「何かしらで気持ちの迷いや子供が迷子になったときに自分の目の前に現れるとも言われていますね。」
彼は食卓の席につきながら言った。
『森の歌姫』は昔、聖歴の始まりを作ったとされるある女神の話でどこの国の誰もが知っている話だ。
その話は小さいころに必ず親から子へと伝えられてきた伝統的なものでもちろん私も知っていた。
私が生まれる前に国々の議会で決まった正式版で出されており、確か話の著者はウルツライト帝国のサマルク・トーエと言われる有名作家が描いたものらしい。
少しアレンジが加えられているので、子供でも大人でも読みやすい本として世界各国に広まっていて今でも人気のある作品だ。
確かにその話の中には森が出てきていて、その森は今でもどこに存在するかはわからないらしい。
その森は迷った人を手助けするために突然目の前に現れると言われている。
シェイナスに言われるまで気づかなかったが夢で見た森は「迷いの森」かもしれない。
でも、なぜ私は小さかったのかしら、そしてなぜ歌声に聞き覚えがあるのかしら...。
謎は深まるばかりで解決はできなかった。
別荘に泊まるのは邪の日の49日までなのでその間私たちはいろんな場所を巡った。
少し海から離れている有名な湖に行ったり、隣の領地にある植物園を見行ったりといろんなところに行った。
そして一週間のうちの半分以上を過ごした聖の日の50日、領地から我が家の屋敷に帰ってきた。
屋敷に帰るとお父様は何やら急ぎの用事で登城した。
学園の休み期間も残り2日となったので私たちは王都のお店にこれから必要になりそうな品をそろえるために王都の街に出かけた。
今の時期の王都の街は店先に置いてある花が綺麗に咲き誇る時期なのでとても綺麗だった。
私たちは魔法学のための道具を買おうと魔法道具専門店に足を運んでいた。
道具が置かれている棚をみんなで見ているとふいに後ろから声がかかった。
「おや、そこにいるのはメンティー公爵家のキャロル嬢、それにヴェルディーン公爵令嬢にカサルト侯爵令嬢にガラトス男爵令嬢じゃないか。」
私は驚いて後ろを振り返るとそこにはキャロルの婚約者になったアンバー・デルタゴン様が立っていた。
薄茶色の髪にピンク色の瞳をしていてなんとなく不思議な雰囲気を感じさせる顔だ。
ああ、だからこの前ミサンガを濃い青にピンクと白の色にしていたのね。
とりあえず私は会釈をした。
婚約者のキャロルが一番彼の登場に驚いているようだ。
「ええ?!アンバー様?!なぜここに...?」
彼は目元を細めながら言う。
「お忘れですか?私も貴方と同じ学年なので、魔法学に使用するものを買いに来たんだよ。」
彼はキャロルに微笑みかける。
...これは、脈ありかもしれませんね。
「あ、そういえば同い年でした。すいません、驚いたりして...。」
とキャロルは謝る。
「いや、謝らなくていいんだよ。今日会ったのはたまたまだったからね。」
と彼は答えた。
...絶対たまたまではない気がしますけどね。
アンバー様は侯爵家の長男なのである程度他の貴族の動向を探るのは簡単だと思いますけど、言わないほうがよさそうね。
アンバー様が私に向かって怖い笑顔で見てきたので言わないことにした。
そのあとはせっかくだからとそれなりの言い訳を使ってアンバー様は私たちとともに昼食をとることにした。
本当は二人で食事がしたかったのかもしれませんね。
最初アンバー様は婚約者同士での食事をしないかと誘っていましたが、キャロルが「アリシナ様達とご一緒でもよろしいなら。」と意見したのでアンバー様は顔には出しませんが仕方ないといったような感じでその意見を受け入れました。
その日はアンバー様と私と私の友人達で王都を周りました。
食事の後も一緒についていきたいからか笑顔の圧が凄かったです...それはもう恐ろしいぐらいに。
キャロルはきっと彼と婚約して間違いはなかったと思うのでした。
この話に出てきた『森の歌姫』はいつか他の番外編で出すかもしれません。次回の投稿は明日の20時です。「Restart sideストーリー」のほうの投稿もぜひ見ていただけたら嬉しいです。




