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転移直後8

 無事な教室のひとつを使い、紅峰をはじめとした計七人の神剣使いが一同に会した。


「はああ、格好良かったよ~、楓ちゃんの勇姿!」


 話の口火を切ったのは左端に座った女子生徒だった。


「あー、うん、ありがとね、ハク」


 知り合いなのか、紅峰が若干困った様子で女生徒に答える。


「……あの、会長。どうして僕までここに……」


 女生徒の隣に座る男子生徒がもごもごと呟く。


「こら、マーくん! せっかくリーダーになったんだからもっとしっかりしなきゃ」

「姉さん、僕はどう考えてもリーダーに向いてないって」

どうやら二人は姉弟らしい。姉がたしなめると、弟の方は控えめに反論した。

「初めまして、先輩! 俺、二年の熊崎明日真です!」


 空気を読まずに熊崎が姉弟の元へ突撃する。弟は戸惑った様子を見せるが、姉の方はテンション高く歓迎している。


「おおっ、元気な子だね~。私は三年の柊白亜だよ~。気軽にハク先輩って呼んでね♪」

「はい! よろしくお願いします、ハク先輩っ。そっちは弟さんですか?」

「そうだよ~。可愛いでしょ? ほら、マーくん、ご挨拶は?」

「ちょっとやめてって、姉さん……あの、一年の柊護です。その、どうも」

「ごめんね~。この子ちょっと人見知りだから」

「全然気にしてませんよ! こちらこそよろしくっ。あ、そっちの先輩はお名前は?」


 熊崎が続けて進也の隣の女子生徒に話しかける。女子生徒はため息をついて熊崎を見る。


「……あのさ、うるさいから口閉じてくれる?」


 気怠げな声で指摘した。柊白亜とは対照的に、テンションの低さが見て取れた。


「え、いやでも、自己紹介くらいは。これからみんな一緒にやっていくんですし」

「うるさいっつってんの。死ね」

「え、ええっ!? 初対面で死ねはないでしょう!?」


 緊張感の無さに鬱陶しくなり、進也も口を挟む。


「俺も熊崎死ねに一票」

「ちょっと、天杉くんまで!? ひどいよ!?」

「そ~だ、そ~だ仲良くしろ~!」

「ちょ、ちょっと姉さんやめなよ……!」


 ひとり騒ぎ立てる熊崎を、白亜が援護する。それを護が止めようとする。いきなり仲良くする派と仲良くしない派が出来上がった。


「…………」


 右端にいる大柄な男子生徒は、無言のまま各自のやり取りを眺めている。紅峰の言葉を待っているのか、それとも単に口出しする気がないのかは分からなかった。


「はいはい、ちょっとちゃんと話進めたいから。自己紹介だけはよろしく」


 紅峰が手を叩いて仕切り直す。熊崎がすごすごと席に戻り、白亜もいったん口を閉ざした。


「……ま、いいわ。『おい』とか『お前』とか呼ばれたくないし。三年の桂木月乃。以上」


 桂木が端的に告げて、黙り込む。


「二年の天杉進也。同じく以上」


 口調を真似すると、桂木は一瞬だけ進也へ視線を向けてきたが、特にそれ以上は反応してこなかった。


「……三年の梅里南波だ。よろしく頼む」


 梅里が野太い声で名乗った。白亜がなぜか驚いた様子で口を開く。


「はえ~、梅里くん、喋れたんだ~」

「……柊、それはどういう意味だ?」

「だって普段全然喋んないからさ~。てっきり声が出ないのかと」

「柊は俺を何だと思っているんだ……?」

「ん~……大仏?」


 明後日の方向の答えに、白亜以外の全員が呆れ返る。


「……ぷっ、くっくっ。いーい性格してるね、アンタ」


 面白がるように桂木が白亜を見る。すると白亜はぷくっと膨れて言い返す。


「ちょっと~、バカにしてるでしょ~。さすがにそれくらい分かるからね~」

「何だ、自覚ありのバカだったんだ。それは失礼したわ」

「くわ~っ! すまし顔しちゃって~! あなた友達少ないでしょう!?」

「……ああ、そうだね。おかげでただでさえ少ないのが、今回の怪物騒ぎでさらに減ったわ。あんたはさぞかしたくさん友達がいるんだろうね。で、何人死んだの?」


 挑発的な桂木の物言いに、白亜が剣を構えた。


「それ以上言ったら許さない」

「ね、姉さん……!? ちょ、ちょっと」

「許さないって? 具体的に何すんの? その死んだお友達の話でもしてくれんの?」

「ううううううっ!」


 獣の唸りに等しい怒りの声を上げて白亜が地を蹴る。即座に桂木も剣を抜き、迎え撃とうと構え――


「やめなさい!」


 紅峰が一喝し、両者が動きを止める。


「私闘は禁止! 二人とも剣を納めて座りなさい。話し合いの最中なのよ」

「楓ちゃん、でも」

「ハク、親しい人間を亡くしたのはあなただけじゃない。ここにいる全員がそう。その悲しみを分かっていない人間は、ここにはいないわ」


 紅峰が、痛ましげな表情で白亜に告げた。親しさの混じる言葉遣いで怒気をなだめる。


「亡くなった人間のため、私たちは生きなければならない。そのための話し合いよ。お願いだから剣は納めて」

「ね、姉さん……」

「……わかった」


 白亜が渋々と言った様子で席に戻った。護が気遣うように姉の手を握った。


「桂木さんも挑発するような言い方はやめてちょうだい。まだみんな心の整理がついていない部分も多い。それを無闇に暴くのは、関心しないわ」

「勝手なこと言ってるね。正直あたし、あんたのこと信用したわけじゃないんだけど」

「……それはどういう意味?」


 桂木の言葉を受け、他の全員に緊張が走る。紅峰が戸惑いながら問い質した。


「そのまんまの意味だよ。神剣使いを集めて、部隊を作って、自分がその指揮を取る。どう見ても独裁じゃん? 女王様でも気取るつもり?」

「なっ――」

「教師共にトップをやらせるのは向いてない。それは分かる。実際、気に食わないしね、あの連中。けどね、同じくらい、あたしの首根っこをあんたに押さえつけられるってのも気に入らない」

(ふうん?)


 進也は桂木を観察する。桂木の目には隔意や敵意のようなものはない。面白がっている節さえなく、むしろ慎重にこの場を見定めようとしている。

 意図がどこにあるのかという点では桂木も気にはなるが、先に紅峰を確かめるため、進也は同意する。


「……そうだな。あの場じゃ俺も味方したが、桂木先輩と同意見だね。あんたの飼い犬になるのはお断りだ」


 紅峰と桂木が共に進也を見てくるが、桂木の方はすぐに視線を外してきた。

 紅峰の方は予想外だったのか、驚いて二の句が継げずにいる。

 様子を見かねたのか、熊崎が口を挟んでくる。


「ちょ、ちょっとそんな、二人とも。会長はみんなのためを思って」

「いいから黙ってろ、バカ」

「バカは座ってて、バカ」

「三回もバカって言われた!?」


 紅峰が執った指揮が間違いだとは思わない。今後を切り抜けるためには必要だ。だが実質的なトップの立場であることを、紅峰がどこまで利用するかはわからない。


「……つまり、二人は私が信用できないと? ならどうしたら信用するというの?」

「人間が一回や二回の行動で信用できるなら、その方が問題でしょ。そいつの人と成りなんて、積み重ねて初めて分かるもんなんだから」

「それって~、今は絶対信用しないってことじゃない」


 横から白亜が口を挟む。桂木は動じもせずに頷く。


「そうよ? それに対して会長さんはいかなるご意見をお持ちで? さっきの演説みたく、綺麗事でも説いてくれるの?」


 紅峰は震えていた。自身が信用されていない情けなさから、ではない。怒りからだ。


「……舐めたこと言ってくれるわね、ええ本当に。私が自分のために人材を集めてそれを好きに使おうとしてるって? 本気で考えてるわけ?」

「そうだけど?」

「――ふざけんじゃないわよ! 誰が好きこのんでこんな砂上の楼閣で裸の王様気取ろうとするもんですか! 私は全員を生きて無事に帰す! そのために手を尽くすって言ってんのよ! だからここにある物は全部使う! それが神剣使いだろうと誰であろうと、私自身だろうとね!」

「なら失敗したときはどうすんだ?」


 自分にも突き付けられた問いを、進也はあっさりと紅峰へ放る。


「ええ、いいですとも! 失敗したらきっちり責任取って、死刑でも極刑でも望み通りになってやるわ! それが私の決意よ! 文句ある!?」


 盛大に啖呵を切った紅峰へ、桂木がはっきりと笑みを返す。


「――くくっ、いや、無いね。言質取ったし、信用するわ、女王様」

「右に同じく」


 にやにやしながら進也も告げた。


「……この性悪生徒共……!」


 紅峰は怒りと疲れを半々にしながら二人を見ていた。


「えっと……どういうこと?」


 熊崎が要領をつかめず、疑問を口にした。


「……責任の所在を明確にした。そういうことだろう」

「あの、それ何か意味あるんですか?」

「…………」


 梅里は眉をひそめて熊崎を見返した。

 二人を無視して桂木が口を開く。


「バカは放っておいて、先にもうひとつ聞きたいことがあんだけど」

「またバカって言われた!?」

「何かしら? できるだけ建設的な話でお願いね」

「簡単だよ。天杉の話」

「天杉くんの?」


 全員が注目してくる。進也は桂木の方を見るが、彼女はペースを崩さず話を続ける。


「あのアホみたいな暴走を目の当たりにしてんのよ? また生徒に飛び火するかもしれないってのに、こいつをリーダーにしていいわけ?」


 桂木の話には理があった。さすがに熊崎ですら、即答でかばうことはしてこなかった。

 進也は重苦しい沈黙を破って告げる。


「もう、あんな無様な真似はしねえよ」

「あのさあ、さっき言っただろ。誰がそんなの信用すんのよ。仮にもう一度ああいう事態になったらどうするつもり?」


 先ほどと同じ目で桂木は言葉を浴びせてきた。つまりは試されている。

 進也は努めて冷静に答えを返す。


「そん時は会長さんと同じだ、好きにしてくれ」

「何、結局人任せ? そんなだから簡単に暴走すんだよ。どうせダチかなんか死んだのにキレて我を忘れたとか、その程度でしょ。いいから大人しくして、あの時飛び込んできた彼女さんにでも慰めててもらいなよ。後のことはこっちでやるから」


 一切遠慮のない口撃だった。傍で見ている熊崎たちはもちろん、紅峰でさえ言葉を失っている。

 進也にとっても聞き捨てならない言葉が混じっていた。『その程度』。確かに何の接点もない桂木にとっては、恭二の死は取るに足らない出来事だろう。

 多数の死者に紛れた、その他大勢の一人にすぎない。

 だがその言葉は気に食わない。

 めらり、と鎌首をもたげるように火が揺れる。じりじりと焦げ付くように進也の内で燻り始め――


「はっ――つまり、お前らまるで使い物にならねえってわけだな」


 進也は笑った。暴れ燃え立とうとする火を、抑え込むのでも制御するのでもなく、わざとくべて自分の火へと燃やし直す。


「どういう意味だい?」

「言葉の通りだ。あの時止められたのは梨子だけで、じゃあお前ら、俺が本気でここで力を使い始めたら、誰一人俺を止められねえんだろ? 御大層なことのたまってるが、お前らの使う剣は全部、ゴミカス以下の飾りってわけだ」


 進也も桂木並に手加減なく言葉をぶつけた。進也と桂木以外の顔色は、もはや青を通り越して完全に白い。


「……言ってくれるね」

「暴走したら大変だって? ああそうだな。じゃあせいぜい、お強くなって俺を止められるようにしてくれよ。そうすりゃ俺が剣を使う機会も減って、暴走せずに済むからよ」


 凶悪な笑みを浮かべて進也は全員へ告げた。火は自分の内で燃えている。だがあの時のような暗い情念に取り憑かれた火とは違う。煌々と赤く輝く意志の火だ。


「こ、この子、完全に私たちのこと役立たずだって言ってる……!」


 白亜がショックに震えながら進也の意図を代弁した。


「クッ――あはははは! なるほど。あんたの言ってることはある意味正しい。怪物に襲われて死ぬのと要は同じだ。止められなかったら、あたしらが弱くて悪い。そういう話だ」


 桂木はツボにはまったのか、爆笑しながら進也の言い分を肯定した。


「せいぜい無様な真似しないでよ、後輩くん?」

「こっちのセリフだ。足引っ張らねえでくれ、先輩よ」

「惜しいね。リーダーじゃなきゃ首輪付けてでもあたしの部下に連れてくところだ」

「冗談。こっちが躾ける立場だろ。何しろ踏み応えがありそうだからなあ」

進也と桂木はお互いに酷薄な笑みを浮かべて、視線で火花を散らす。

「り、理解しがたい……!」


 紅峰が頭を抱えてうめいた。慰めるつもりはないが、進也は紅峰へ向けて言う。


「別に理解する必要はねーよ」

「そうね。あ、こいつをリーダーにすんのは了解したわ。ていうか、代わりがいない」

「え、えー、あー、うん。分かったわ」

「……楓ちゃん、大丈夫~?」


 既に疲れの見える紅峰を気遣って白亜が声をかけた。


「だ、大丈夫。じゃ、改めて話を進めましょう」

「まずは何をするんですか?」

「そうね。ひとまずの方針は、拠点である学校の防衛組と、この周りを調べる探索組で分かれて活動するってわけだけど」

「組み分けの基準は何?」

「実力を考えると梅里くん、桂木さん、天杉くん……としたいとこなんだけど、残念ながらはそれは無理なのよね」

「何で? 問題ありそうには思えないけど」

「生活の必需品。火を外に追い出して活動できる?」

「あ」


 全員が一斉に進也を見る。


「……だろうと思った」


 進也はぼやいた。物資の少ないこの状況だ。いつでもどこでも使える燃料など、拠点へ必須に決まっている。防衛組に配置されるのは至極当然のことだった。


「あ、てことは俺も……?」


 熊崎が自分を指差した。紅峰は艶然と微笑む。


「もちろん、防衛組ね。水と火が最初からあるって心強いわ」

「そうすると私かマーくんが探索? それとも両方?」

「どちらかだけね。また怪物の襲撃があるかもしれないし、戦力はなるべく残しておきたい」

「そ、そうですか……」

「だいじょ~ぶ、マーくん。私たちならやれるって! で、どっちをやればいいの?」

「それも決まってるわ。柊護くん、あなたは防衛組。これは絶対」

「ええ!?」

「じゃ、私が探索だね~。でもなんでマーくんが防衛じゃないとダメなの?」

「あなたの剣の能力。植物を成長させるみたいね?」


 その言葉に、熊崎と護以外の全員が反応した。視線が集中して、護はびくりと震えつつ口を開く。


「あ、はい……でもそれが何か」

「というわけで防衛組のメンツは熊崎くん、天杉くん、柊護くん、そして私。探索組には残りの三部隊で行ってもらうわ」

「「「「了解」」」」


 熊崎と護以外の全員が声をそろえた。


「え、あの……説明は?」

「え、今のでなんでみんな分かるの? え?」


 戸惑う熊崎と護に対して、紅峰が丁寧に解説する。


「理科や家庭科の授業用に種や野菜があるから。それを使って食料の確保を試みるのよ」

「あ、なるほど」


 ようやく得心のいった様子で熊崎が頷いた。


「つまり……園芸? 農業?」

「両方かしらね。当然大量の水も必要になるし、熊崎くんと柊くんには頑張ってもらうわ」

「任せてください! 一緒に頑張ろう、護くん!」

「は、はあ……大丈夫かな……自信が……」


 熊崎がいつもの調子を発揮していると、それまで黙っていた梅里が口を挟んだ。


「……土質は大丈夫なのか? 土壌が悪ければいくら何でも」

「そこは少し実験してみたんだけど、どうも神剣に宿っている力を注ぎ込むと土地が活性化するみたいなのよ」


 紅峰は言って神剣をかざした。怪物たちと同じあの発光現象を通じて、周囲の大気に光が霧散していく。


「これは共通の能力みたいね。神剣に宿るエネルギー、よくある用語で言うなら魔力とかマナとかいうやつになるのかしら?」

「あのバケモン共も使ってたな」


 進也は怪物の挙動を思い出す。怪物たちの場合は魔力を利用して筋力や頑丈さを上げていたようだった。

 桂木が剣を指先でつつきながら言う。


「あいつらをぶった斬ったら吸収してたわ。ため込んだらパワーアップでもするんじゃない?」

「え、それって天杉くんの剣、やばいことになってない?」

「……いや、別に変わってねーと思うが」


 熊崎が見てくるが、進也の体調に違和感はない。


「でも暴走してたでしょ~?」

「順番が違う。ありゃ斬りまくる前になったんだ。その時点じゃ三匹しか倒してねえよ」

「そっか~。じゃあパワーアップはしないのかな?」

「他によくあるタイプだと……能力を使うコストじゃないですかね。入っている魔力分、使えるとかの」


 またぞろ漫画やゲームを思い浮かべてか、熊崎が言った。着眼点自体は悪くない意見だ。


「ふむ。そこは留意した方が良さそうね。無制限だと考えるのは早計だし」

「神剣自体についても調査は必要か」

「現状だと何ができるかの話くらいだけどね」


 そう言って、各自で確認した神剣の情報を共有する。

 身体能力及び治癒能力の著しい上昇。斬った対象の魔力を吸収。魔力を放出しての土地の活性化。後は各自個別の能力の発動。そして本人以外には使えない。

 まとめ上げたところで、桂木が言う。


「個別の能力ってのは厄介ね。どうも未覚醒なのか、持ってない奴もいるし」

「条件があるか、あるいは強さに上限があるのか。考えられそうなのはその辺りかしら」

「神剣同士にも格差か。上下関係が捗るな」

「躾が楽でいいじゃない」

「そこの不良生徒二人、嫌なこと言わない。格差問題もできるだけバランスは取るけど……その余裕を生むためにも、あなたには期待しているからね、柊くん」

「頑張ってねマーくん!」

「う、うん……」


 頷く護だが、なんとも頼りなさそうな返事だった。


「……能力はともかく、リーダーは別に据えたほうがいいんじゃないの、この子?」


 桂木が穏やかに提案した。進也はなんとはなしについ軽口をぶつける。


「俺の時と態度違いませんかね、先輩よ?」

「あんたの扱いはあれで十分でしょ。で、どうなの、紅峰?」

「そうしたいけど代用の利かない能力だし、何よりこの子に命令権が無いとトラブルがあった時マズいわ。いちいち自分のリーダーか他のリーダーを通さなきゃいけなくなるから」

「……ああ、かえって手間が増えそうだね。当人が強権を発揮できるかは別として」

「本人が一番狙われそうだしね……というわけで護衛は頼むわね、天杉くん」

「俺かよ。……このメンツ、防衛に不安しかねーんだが」

「そこはまあ色々フォローするから」


 進也がぼやくと、紅峰は曖昧な笑顔で受け答えた。

 いよいよ話がまとまった、と悟ったのか、熊崎が進也の方へ寄って来る。


「これから一緒に頑張ろう、天杉くん!」

「近寄ってくんな。話しかけるな。呼吸もするな」

「何でそんなに拒否するの!?」

「うう、どうして僕がリーダーに……」

「しょうがないよ。マーくんにしかできないことなんだから。しっかりね~」

「探索か……人間がいればいいけどね」

「…………」

「人材に関しては明日までにはリストにまとめるわ。今日はひとまず交代で見張りをしましょう」

「異世界生活の開始か……不謹慎だけど、ちょっと楽しみだね!」


 脳天気な熊崎の一言が光る。だが、全員笑いこそすれ、バカにはしなかった。

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