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鳥居の島  作者: 青竹煤
護役サナギ
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閑話

 目を開ければ最近記憶したこげ茶色の天井が広がっていて、帰って来たんだということがわかる。

 額に何かが乗っているのが感じられ、首の両側には冷たい塊が寄りかかっていてその重みが不快だ。身体は怠く、少し動いただけでも気持ちが悪い。サナギは熱射病患者として、診療所ではなく家に帰された……いや、千松に持って帰られたのである。


 腹の中にぐるぐると渦巻く朝食だったものを抑えようと、サナギは覚醒しても目を閉じたままでじっとしていた。自分に向けられる扇風機の風さえ鬱陶しい。

 目を閉じると、セミの声に交じってツガと千松の会話が聞こえてきた。

 「そりゃね、私も悪かったよ。認める」

 「人間の脆さは俺にもわかる。けど、長い間日の下にいるだけでも体調を崩すもんなのか?」

 サナギを今まで連れ回していて具合が悪くなることはなかったため、千松の声は怒っているというより戸惑いの方が強い。

 「そういや、サナギは夏になると影に入りたがったけど、それ知ってたのか」

 自分の守護霊の声がこちらに向くのを聞いて、去年も一昨年も、何回も説明したじゃない!と怒りたかったが、今のサナギには動くことができなかった。

 「お前の言う通り、人間は脆い。しかしこのことに関しては、お前も悪いが私も悪い」


 サナギの額の上の物が外されて、枕元でカラカラと涼しげな音が鳴る。何かを絞る音の後に、再び額の上に物が置かれた。氷水で冷やされたタオルだ。

 「ちょっと待て、俺も悪いのか?」

 「守護霊が、護る対象を、病気にした。そうだろう?」

 はっきりわかるようにツガが区切って言葉を出すと、千松が呻いたのが聞こえた。

 「おっさんだってなぁ、自分の、え、えっと、弟子!弟子だ」

 とサナギの脚に大きな手を置いた。熱いものが乗って不快だ。

 「それを病気にしただろ!俺は人間の病気とかわかんねえし!」

 責任逃れでもしようというのだろうか。千松の慌てぶりに対して、ツガは冷静に返す。

 「だから、私も悪かったと言っているだろう。せめて家に入るよう注意すればよかった」

今度はツガの声がこちらに向く。


 「私は、お前たちと暮らすことにした。だけど、私はお前たちのことをよく知らない。どこまで何を知っているか、それを私は知らなければいけないんだ。それによって教えることが変わってくる」

 この島の守り神は、サナギを幼子だと言った。ここ数日サナギを見ていれば、確かに世間知らずなところがあるのがわかる。その他にも足りない部分はあるだろう。だからサナギに何が必要なのか、それを知りたいのだとツガは言う。

 少しの間のセミの声と、扇風機の音。ややあって、千松が何かをつぶやいた声がサナギの耳に入る。

 冷やされながら、サナギは思った。

ただこの家に住んで、手伝いをして、勉強をして。それだけじゃいけないんだ。

 ここに住むためだけに勉強をするんじゃだめだ。

 ここに住むみんなのために、たくさん知らないといけないんだ。

 だって、ここまで考えてくれているんだから。

 返す方法は、これしかないんだから。

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