おしょうがつ
「今日が明日のためにあるのなら、
明日が明後日のためにあるのなら、
明日のないぼくにとって、今日ってなんなんだろうね」
ひねくれたキミが言う。
わたしに問いかけるように。答えを待っているように。
都会というところは、ずいぶんと便利なところだけれど、そのために犠牲にしてしまっていることも多い。
星が見えない。緑が少ない。熱が人工地面にこもるせいで、雪が降っても積もらない。
こうして外にいる今は、楽しくないのかもしれない。
キミがいなかったらの話。
街を冷たい風が吹きぬける。内からじわじわ寒さを感じる。
今日は大掃除をする日。
なぜ、今日に限ってそんなことしないといけないのだろう。
昔、母親にそれをきいてみたら、「あなたも主婦になったら分かるけどね、大晦日が特別ってわけじゃないんだからね」って。叱られた、のかな。
覚えてないけど。
「明日からおしょうがつだね」
わたしの言葉に、キミはうんうんと頷いた。
ちょっと嬉しい。
「明日ってさあ、なんなんだろうね」
つけ加えるようにキミが呟いた。
もうすぐ今日が終わる。
今ならいいかな。わたしは、キミの肩に頭を添えた。
向こうで喧騒がする。カウントダウン。
「ご! よん! さん!」
今日がもうすぐ終わる。
明日からおしょうがつだね。
「にぃ!」
今日に限ってみんなが騒ぐ。
「いち!」
今日が過ぎる、ただそれだけのことなのに。
「ぜろっ」
こうして、今年という、今日という世界は消滅した。
それに付随して、わたしたちの体も無に帰する。
世界は滅んだ。
一瞬後、今日のわたしが形成される。前回に比べ、蛋白質の量が多い。ケラチンの塗りが悪い気がする。神経細胞に損傷がないのは良かった。
隣にキミはいない。
おしょうがつだね。
「ハッピーニューイヤー」
■初出一覧■
〈即興小説トレーニング(http://webken.info/live_writing/top.php)〉
/丁史ういな名義
・「孝行息子」
・「あなた、ほら、またわたしを捨てるのね。」
・「マイナス祈願に車が走る」
〈テンミリオン オリジナル小説投稿板〉
/u17(ういな)名義
・「おしょうがつ」
(その他作品は初公開となります)
ちなみに、「メイドロボットのリア充計画」は、〈空想科学祭FINAL〉参加作「ム」の末尾に、おまけとして投稿するつもりで書き、没になったものであります。とだけ、私事を。
お読みくださりありがとうございました。
2013年も、テイブミウイナをよろしくお願いします。




