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余裕

*


 大学四回生のNは、卒業論文を手に事務室へと駆けていた。汗を垂らしている。というのも、締め切りまであと二十分しかないのだ。


**


 光素(エーテル)の除外(オミット)された空間(エリア)では、暗闇(ダークネス)という概念(コンセプト)さえ通用(カレント)しない。一対(ワンペア)の無(カオス)が拡散(ディヒゥーズ)した。宇宙(ユニバース)のように拡大(スプレッド)してゆく。


*


 Nは事務室の窓口にようやく到着した。残り十五分であった。「す、すいません!」


**


 超光速粒子(タキオン)が飛び交う(コンプリケイティド)、虚数(アイ)の中(インサイド)で。分子(モーリキュオ)の負(マイナス)の揺れ動き(オーシレイション)によって絶対零度(ゼロケルビン)を下回(アンダーエクシード)る温度(テンパラチャー)が生(ディプロップ)じていた。もうすぐ(インァミニット)だ。


*


「あのね、きみねぇ」当然のことながらNは職員に叱られた。くどくどと説教を聞かされる。


**


 Sは能源(エネルギー)を物質(マテリアル)に変換(コンバート)した。対極(アウトペア)の無(カオス)を圧縮(コンプレス)する。次元(ダイメンショナル)を飛行(フライト)した。


*


「きみは人生をなんだと思っているんだ」締め切り時間になった。「あ、あの、時間……」


**


 超光速粒子(タキオン)では時間遡行(アップァタイム)できない。しかし複素数(コンプレックス)は両面(ビーメン)を備(プリペアー)えている。それ(イッツ)を用いる(ユーズド)。


*


 Sの行動によりNの周辺の時間が逆戻りした。締め切りまでの猶予を獲得することができたのだ!

 卒業論文が白紙へと退行した。

作者註)筒井康隆のオマージュです。

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