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マイナス祈願に車が走る

 車が走る。反重力を応用したその車は、エンジンをかけたと同時に地面から離れ、ぐんぐん上がり、そびえたつビルを追い越した。運転手は小柄な男である。顔を真っ赤にしてハンドルを握っていた。助手席にはまるまると太った女が座っている。運転席の男を圧迫するほど体が大きい。さらにはなぜか、マイナスドライバーを片手に握っていた。

 車が走る。男は手汗に焦ってさらに手汗を流す。女がドライバーを楽しそうに振った。

「お願いだから、ただでさえ恥ずかしいのだから、せめてそれはしまってくれ……!」

 小柄な男は、少々キーの高い声で言う。額にも汗がたれている。

「いいじゃない。これはアタシの代名詞よ。マイナス祈願に使えるわ」

「そんな迷信、いまどき流行らないよっ!」

 車が走る。情景が次々と移り変わった。

 その動きに、周囲の人間がちらちらと目を遣っていた。

「なによアンタ、だったらアンタはプラスドライバーでも握ってなさいよ。そんな弱っちい体して。恥ずかしくないの?」

「この車が恥ずかしいよ! なんだよこれ!」

 情景が映写機によって次々と移る。反重力によって浮かんだ車体は、背後の映像に合わせて揺れた。車が走る。

「ママみてー、女の人と男の人が、子供用の偽物車に乗ってるよー」

「しっ、目を合わせちゃいけません」

 ここはビルの屋上。

 幼稚な音楽を流しながら、車は動くことなく走るのであった。

「体重よマイナスしろ!」

「お願いだから静かにしてくれよ……」

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