模擬戦(訓練)①
「3、2、1、スタート!!」
飛騨隊長からの合図とともに、
中央に浮いていたオービットが緑色に光る。
「とりあえず俺がまず前に出る!
援護頼んだぞ!」
俺が前に立ち、相手の攻撃を引き出す。
それに対し、哲が先輩たちの情報収集をしつつ、援護する。
朔は哲から、オリジンで”改変”済みの道具を何個も手渡されており、
いざとなった時は目線を惹きつける。
その他は、哲からの道具で支援を行う。
(どう出る・・・)
相手のオリジンも把握していないまま挑むことになるこの模擬戦。
飛騨隊長から、先輩たちも俺たちの能力について伝えられていないようだ。
(初めからなかなかリスキーな訓練だよな・・・。)
相手を見ると、いつの間にか神谷先輩しかいない。
まずいと思い、2人に状況の確認を行う。
「気をつけろ!リーゼント意外見失った!!」
「ごめん!私も気づいたらおらんかった!」
「とりあえず周りを警戒!愁は神谷先輩を頼む!」
「おう!」
(とも!頼むぜ!)
(『あいよ!やばくなったらなんとかしてやる!』)
事前にともへ、一旦俺の力だけでやらせてくれとお願いしている。
あいつもその方がいいと思っていたのか、一言目で了承してくれた。
(頼りになる相棒だが、基本軸は自分の力でやれって方針だからな。
なんとかしてやる。)
神谷先輩を見ると、目がギラギラしてにやけていた。
「待ってたぜ・・・粟生屋!!!」
叫びとともにこちらへ空中を蹴り、攻めてくる。
オリジンは不明、どうしたもんかと思いながら警戒しながら対処する。
近寄ってくると、勢いのまま右ストレート。
体をそらして避けるも、そのまま回転し、踵おとし。
ブーツの影響で、ジェットの勢いがそのまま上乗せされる。
頭上に腕をクロスにして守るも、うまく体制が取れず、そのまま飛ばされる。
威力もかなり強く、腕に衝撃が走った。
「チッ!」
なんとか無重力空間で体制を盾の直そうとするも、
体のコントロールが難しく、ゆっくり体が回転したままとなる。
(んだよこれ!)
「ボルテージあげてくぜ!!!」
いつの間にか背後に現れた神谷先輩になすすべなく背中を蹴られる。
宇宙空間に漂うボールのように。
蹴られては浮遊し、蹴られては体制を整えられず、を繰り返される。
「んなことだとやられっぱなしだぜ!!」
(んなことわかってんだよ!!)
考える。
体制の立て直し方。
足で空中を地面に成し、移動することができる。
空間そのもの、全てが足場となる。
・・・・・・試す。
回転している体のまま、思いっきり空中を蹴る。
すると、回転が止まり、踏ん張った1からまっすぐに体が進む。
空中で体の向きを変えることもできるので、
そのまま体を、水泳選手の切り返しを元に、
体を捻り、神谷先輩の方へ跳躍する。
「ほぉ。やるな。」
無事成功。
勢いが足りないので、
いつものように、オーラを足元へ集中させる。
そのまま突っ込み、攻撃できるようにイメージ。
「オラァ!!」
建物など、動きを感じ取れるものが宇宙空間にないので、
どれだけの速さで移動しているかわからないが、
あっという間に神谷先輩の元へと迫る。
「っ!まじか!」
あまりの速さに驚いたのか、目を見開く先輩。
しかし突如、姿が消える。
そのまま体を捻り、跳躍の威力を殺し、周りを探す。
・・・・・見つけた。
少し離れた場所に先輩の姿を見つける。
見つけたことに油断していると・・・・。
突然目の前に。
「油断してんじゃねえぞ!」
「やっべ!!」
手を伸ばされた先は、胸に浮くバッジ。
咄嗟に反応できず、そのまま回収される。
「あめえな。」
「っ!!」
突如、スタート地点に体が引き寄せられる。
移動スピードは凄まじく早く、あっという間に飛騨隊長の元へと到着した。
「くそ!!!」
「意外ですね。粟生屋さんが一番最後だと思ってました。」
「・・・・・・・・」
思い返しても、全くわからない。
突如目の前に現れ、目にも止まらぬ速さでバッジを取られた。
(おい!とも!なんだあれは!!)
(『クソッ!悪いな相棒。俺も同じ感想だぜ・・・。』)
(っ!・・・・・)
(『ただ、明らかに速えな。』)
(・・・・だな。)
移動系?とも思いながらとにかくあいつらに知らせる。
「悪いお前ら。俺やられちまった。」
『なんやて!?』
『ごめん。援護まで手が回らなかった。』
「いや悪い、なんとかなると思ってた。」
『なにかわかったか?』
「とにかく速え。遠かったのに突然目の前に来やがった。」
『わかった。朔、なんとか対処しよう。』
『了解。なんとかやってみるわ。』
あとは見守るのみ。
不甲斐ない。
自分が前に出てなんとかすると思っていたのにこの様。
どうすればよかったのやら。
「粟生屋さん。
まずはお疲れ様です。
私から見てて、あなたは1人でどうにか解決しようとするタイプですよね?」
「・・・・・・・・・・」
「おそらく、今までそうするしか無かったからこそ同じ選択をしてしまうのでしょう。
人には得意不得意があります。
悩んだ時には、一度立ち止まって周りに目を向けるといいですよ。」
「・・・・・・・・・・」
「ふっ。ヒントです。
力の使い方をもっと広げてはいかがですか?
意外と効果あるかもしれませんよ?」
「・・・・・・助かる。」
愁自身、聞いていないわけではない。
何もできなかった悔しさもあるが、意外と清々しい。
頭がクリアな分、話をしっかり理解するために喋らなかったのである。
その上で、自分に何ができるのか、考えるのだ。
◇
朔サイド
「まずい。愁がやられたのにどーしたらええねん・・・。」
(未だ先輩も見えへんし、絶体絶命やん・・・。)
そう、未だにどこにいるのかわかっていないのだ。
360度見渡しても、見えるのは神谷先輩のみ。
その神谷先輩もひと仕事終わったかのように、だらけていた。
自分にできることは、人の目を集中されること。
哲から渡された道具で切り抜けること。
ポケットに入っている渡された物を確認する。
(丸いボタンが敵にひっつくやつで、顔につけたらええねんな。
プレパラートはシールドになるやつ。
豆電球は光らせて目眩しにするやつやな。
・・・・あ!この棒!武器になるってゆうて渡されてたわ!)
道具をあさっているうちに思い出したそれぞれの役割。
棒を取り出し、上から下に振り下ろす。
すると、突如爪楊枝ほどの棒が、身長ほどの大きさの棍棒となる。
(よし!あとは・・・)
作戦を思いついたのだ。
早速それを実践するよう動く。
「すぅ〜、はぁ〜。すぅ〜・・・・『こっちを見ろお!!!!』」
瞬時に全員の目線が朔に釘付けとなる。
効果を確認したあと、時間もないので瞬時に豆電球を取り出す。
効果はまだ試していないが、自分は目を瞑り、
豆電球の接続部を握る。
すると、目を瞑っていてもわかるほど眩しく光り出す。
哲のみは効果を知っており、
その効力はネット上で見つけた閃光手榴弾を参考にした物である。
効力は絶大で、光にさらされて隠れていた人影が浮かび上がる。
朔は光を見ないよう、片手で遮り目を少し開ける。
周りを確認すると、光に照らされ、半透明な人の姿を2人発見する。
そう遠くないようだ。
(おった!!)
見つけると、豆電球を放し、人にくっつくボタンを投げる。
なんと、見事ヒットし、思い切り跳躍。
「そこやああ!!」
バッジがあるであろう部分に手を伸ばす。
すると、ボタンが消え、場所がわからなくなってしまった。
「え・・・。」
そして・・・・。
気づいた時にはバッジも取られており、
体が基地へと引き戻される。
「うぎぃ」
なかなかのスピードで基地に戻されるせいか、
変な声と共に、シュウの前の前に到着。
「んだ今の。」
「なんでもいいやろ!」
「お疲れ様です新田さん。」
「あ、お疲れ様です。」
「おしかったですね。流石にいい作戦でしたよ。」
「いや、そんなことは・・・。」
「なんで照れてんだよ。」
「うるさい、黙れ!真っ先にやられてるやつに言われたないわ!」
「んだと!!」
負けたという感情はどこへ行ったのやら。
いつも通りのやりとりである。
「あとは宮城さんですね。」
「ああ。」
「なんか馴れ馴れしない?自分。」
「・・・・・・・はい。」
「す、素直やん。」
「わかってんだよ、ダメだって。」
「2人とも。見なくていいんですか?」
「あ、はい。」
「すいません。」
「後2戦やる予定です。
しっかり情報収集してくださいね。
体の使い方などは、ある程度皆さん筋がいいようですし、問題なさそうです。
さあ、最後にどうしますか?宮城さん。」




