決意
ちょっといつもより長くなってしまった。
外に出て、ひとまずオーラの調整のためにいつもの公園へ。
1時間ほど余裕がある。
気持ちの整理と普通に散髪してもらえるよう事前に準備しておこうと考えていた。
公園に到着。
いつも通りの光景。
心が落ち着く。
ひとまずベンチに座り、深呼吸。
(おい。今ならいけるだろ。)
(『あいよ。いけるぜ。』)
(今はどうだ?)
(『いつも通り、ピリピリするねえ』)
(あんま時間ねえんだからふざけんなよ。)
(『わぁったよ。状況伝えるから任せとけ。』)
あいつとの打ち合わせも完璧だ。
気が緩まぬよう見張ってくれる。
そして、目を閉じて集中。
深呼吸をして自分の内側へと意識を向ける。
自分を起点にオーラが漏れ出しているのがわかる。
それを自分の胸へと集めるように意識する。
胸の真ん中にブラックホールをイメージして、オーラを吸い込む感覚だ。
あいつらと遊びに出かけた後からずっと練習していた。
普段、あんなに人と話し、遊べたらどれほどいい思い出ができただろう。
喧嘩に明け暮れ、一人で拳を痛め続ける日々とどっちがいいだろうか。
(そんなの決まってる。)
今変わらずしてどうするというのだ。
その一歩として、ずっと練習し続けてきた。
あいつは失敗してもいいと言ってくれた。
じゃあ何度でもやってやる。
失敗の確率を減らせるように、何度でも。
そう思いながら常に練習し続けてきた。
そして徐々にオーラを内側へと吸い込んでいく。
体全体から出ていたものが徐々になくなっていく。
集中すること20分。
体から溢れていたオーラを全て内側へと吸収することができた。
「よし!」
(『見る感じ、漏れ出てねえぜ相棒!練習通りだな!』)
(ああ、どう見える。)
(『ピリピリどころか、だいぶ影薄いぜ相棒!』)
(それじゃあ、大成功ってとこだな。)
(『ああ。だが、持って30分ってとこだな。』)
(おい、全然たんねえじゃねえか。)
(『まかせろ!ここで俺の出番だぜ。』)
(は?)
(『俺を誰だと思ってやがる。今回だけ特別サービスな?』)
あいつがそういうとやけに体が軽くなった。
かなり頭がスッキリしている。
(おい、何をした。)
(『俺ってお前のオリジンだぜ?オーラ操作できないでどうする。』)
(・・・・・・・)
(『ちょっと集中するからもう喋りかけんな。俺だって膨大すぎる力抑えなきゃいけねえんだ。』)
(・・・・・っ。てめえ!初めから言えって!!!!)
(『だ!うるせえな!んなことしたらお前が使いこなせねえだろうが!!肝心なとこでやられて死ぬぞ!』)
(・・・・・チッ)
(『おこんなって!悪かったって!・・・・・・やべ!漏れてきやがる!』)
(・・・・はぁ。悪かった、急に。)
(『・・・・・・ハハ、終わったら今日も特訓だな。』)
(・・・ああ、頼むぜ。)
いつものように溢れていたオーラがすっかりなくなっている。
それどころか、この世界に溶け込んでるようだ。
すると子供が3人公園に遊びに入ってくる。
サッカーでもするのか、ボールを持っていた。
いつもなら俺からだいぶ距離をとって遊ぶか、公園に現れないかのどっちかだが、
今日は俺がいることに気がついていないようだ。
3人がボールで蹴り始め、パスしあっている。
一人の男の子がボールを取れない場所へ蹴ってしまい、流れ球が俺の方へ。
立ち上がり、転がってくるボールを足でとめる。
「あ・・・」
男の子が俺に気づいたようだ。
だが、その顔は恐怖に震えた顔ではなく、キョトンとした顔であった。
「ほらよ。」
軽く足のインサイドでボールを蹴る。
うまく男の子の足元ちょうどに蹴れた。
「あ、ありがとうお兄ちゃん!」
そう言って二人の方へ振り向き、戻っていく。
(『・・・大丈夫そうだな。』)
(・・・・・・・・あぁ。)
恐れられない。
それだけで感極まる。
深い喜びが込み上げてくる理由としては十分だ。
今後、より一層特訓しようと心に誓う。
そして時間も近づいてきたので、このまま美容院へ。
歩いて10分ほど、学校への最寄駅付近にある店舗へ。
学校への登校、ほぼ毎日見ていたので場所は知っていた。
事前にスマホで髪型を検索し、残しておく。
あいつにも相談しながら考えた髪型は、刈り上げベリーショート。
雰囲気をガラッと変えるには打って付けだとという。
あいつまじどこでそんな情報知ってんだ・・・。
5分前になると、ドキドキしながらというものの、店の前に着く。
何故か目の前になると体が動かない。
今までこんなことはなかった。
鼓動が早くなる。
周りから見ると、美容院の前で立ちすくむ変なやつに見えているだろう。
本人はいたって真剣なのだ。
すると、美容院の扉が開き、女性が出てくる。
「あの〜、予約された方ですかね・・・?」
「あ・・・は、はい。」
「あ、そうでしたか!よかったです!どうぞ入ってください!」
(た、助かった〜・・・・)
ドアを開けるのにかなり躊躇していたので、
定員さんが開けてくれたことに、ホッとした。
さらにこちらを見ても、いつものような怯えも感じない。
上々である。
美容院に入るといい香りがする。
何の匂いかわからないが、すごくいい香りだ。
入ってすぐにあるレジにお姉さんが戻り、こちらに顔を向ける。
「お名前お伺いしてもいいですか?」
「あ、粟生屋です。」
「粟生屋さんですね・・・・・・ありました!11時からのご予約ですね。
ちょうどよかったです。私の担当でした。よろしくお願いします。」
「お、お願いします・・」
「早速、シャンプーしますのでこちらへどうぞ。」
不安だ。
緊張が取れない。
いつまたあの表情がこのお姉さんから出てくるのかと思うと・・・。
このような場所も来たことないのでより不安だ。
お姉さんの後ろについていき、導かれるままに椅子に座る。
すると、背もたれが自動で倒れ、シャンプー台に首がのる。
「あ、少し上に行けますか?・・・・ありがとうございます!
それでは、お顔に布かけますね〜。」
布で視界が塞がれる。
初めはなぜ?と思ったが、すぐ横にお姉さんが立ち、シャワーを髪の毛に当て始めてから気づく。
(確かに目が合うと気まずいな・・・)
それから頭を洗ってくれた。
結果としては、かなり気持ちよかった。
もう一度やってほしいくらいに。
ハマりそう・・・・。
頭をタオルで拭いてもらい、椅子の背もたれが起き上がる。
「それではこちらへどうぞ。」
今度は鏡が目の前にある椅子へ。
座りやすくこちらに座席を向けてもらい、座る。
王様になった気分だ。
鏡が正面にくるよう、位置調整をすると。
「お兄さん長いですね。髪型、どうしますか?」
「こ、これってできますか・・・?」
「え、い、いいんですか?かなり切っちゃいますよ?」
「はい、これでお願いします。」
「わかりました!まかせてください。きっとかっこよくして見せます。」
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
そうすること40分。
完成したようだ、と思ったがお姉さんから一言。
「それじゃあ、シャンプーまたしますね。こちらです。」
嬉しい誤算だ。
まさか気持ちいのをもう一度やってもらえるなんて。
じっくり味わおう。
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
頭を洗い終わり、背もたれが起き上がる。
なんということだろう。
シャンプーの次はコンディショナー。
しかもヘッドマッサージをしてもらえるなんて・・・・・。
この時シュウは昇天しそうになっていた。
頭の凝りが全て飛んでいったようだった。
スッキリどころか、頭がどこかに行ってしまったようだ。
「はい、これで顔、拭いてくださいね。」
渡されたのは暖かいタオル。
顔に乗せると暑すぎないちょうどいい温度だ。
これでもかと言うほどリラックスする。
週1回通うべきか・・・?
タオルを離すと髪の毛がかなりついていた。
・・・・これが目的か。
納得である。
再び椅子へ戻り、最後の仕上げをしてもらう。
少し髪の毛を切り整え、産毛をバリカンで剃ってもらう。
「お兄さん、セットしてもいいですか?」
「お、お願いします。」
そう言った後は手際がよく、手にワックスをつけサッと整えてくれた。
「はい!いかがでしょうか!」
そう言われてみた自分はまるっきり別人であった。
あれだけ長かった髪の毛は見る影もなく、
顔全体がわかるようになり、キリッとした顔が鏡に映る。
「お兄さん。短いの、すごくかっこいいですね!私がゆうのもなんですが!」
そう言われても自分の姿を見るのに集中しており、言葉が出なかった。
「そんな顔してもらえると、私切った甲斐があります。さあ、こちらに。」
歩いてレジへ。
お姉さんが電卓を叩き、金額を見せてくる。
「初回ですので割り引いて、3500円になります!」
金額を言われて財布からお金を出す。
1000円札がなかったので5000円札をトレイに出し、会計をする。
「5000円お預かりします。・・・・・・1500円のお返しですね。」
「ど、どうも。」
お金を受け取ると、お姉さんがドアを開ける。
テキパキ、仕事が早いなと思いながらもドアを通り抜ける。
「ありがとうございました!また来てください!」
俺はペコっと少しだけお辞儀をして先ほどの公園に速攻で向かう。
その足取りは少しづつ早くなり、そして走り出す。
自然と嬉しくなり、込み上げてくるものが体を動かす。
(誰にも怯えられなかった・・・・・・っ!)
そして人が歩いていない路地に入るとオーラで足を包み、ジャンプ。
少しオーラを込めすぎたのか、7mほど飛んでしまった。
着地の衝撃も緩和されるので問題はないが見られていないか焦るものの、
溢れ出る喜びの感情には勝てない。
舞い上がりすぎている。
生涯、この喜びは忘れないだろう。
コンビニに寄り、ジュースとお菓子を買う。
公園にその足で向かい、到着。
ベンチに腰掛ける。
炭酸入りのジュースを開け、一気に半分まで飲み干す。
(『・・・・・っ!わりい・・・一旦オーラ出すぞ・・。』)
すると、自分でも分かるくらいのオーラを上空に放ち、霧散させる。
(『はぁ。俺もまだまだだな。自分をコントロールできねえでどうするってんだ。』)
(どうなった?)
(『とりあえず元に戻ったぜ。ピリピリしてやがる。』)
(そうか・・・・)
(『そう考え込むな。これからの特訓次第だろ?相棒。』)
(ああ。ぜってえ使いこなしてやる。)
ジュースを飲み干し、買ったチョコレートも食べ終わると公園にあったゴミ箱に捨て、家に戻る。
家に到着し、ドアを開ける。
靴を脱ぎ、リビングへ向かうと。
「!?シュウ!髪切ったの!?」
「おお!いいじゃねえか!」
「ま、まあな。」
「好きな子でもできたか!?」
「んなわけあるか!!」
「似合ってるよシュウ。」
「あ、ありがとう。」
そして部屋に戻ろうとしたが、カエデの部屋をノックする。
「・・・・なに〜?」
扉が開くと、カエデが部屋着で手に漫画を持っていた。
こちらを見るなり驚き、目が見開いている。
「ど、どうだ?」
「ちょっと!兄貴!いいじゃん!なに!?どうしたの!?」
「い、いやちょっとな。イケてるか?」
「イケてる!彼女でもできたの!?」
「なんでも前もそうなるんだ!!!」
それだけ言い残し、部屋へ戻る。
その後ろ姿を見つめるカエデは何処か安心したような表情だった。
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
そして翌週。
学校でも。
『ザワザワ・・・・・・ザワザワ・・・』
理由は明白、髪を短くしたのといつものオーラがないからだ。
今までの近寄れない雰囲気のある俺を知っているので、
周りの奴らは近寄ろうとはしない。
ただ、周りから痛く視線を感じる。
気にしないようにスマホを触っていると。
「お、おはよう!粟生屋君。か、かみ、切ったんだね・・・!」
「お、おう・・・」
この前アーケードで助けたサツキさんが話しかけてくる。
見る感じ、少し緊張しているのか、胸の前で両手を合わせている。
「な、何かあったの?」
「いや、別に。」
「か、彼女・・・・とか?」
「ちげぇっ!『ビクッ』・・・・っ!わりい。そんなんじゃねえよ。」
「そ、そうなんだ!・・・・・・ホッ」
『キーンコーンカーンコーン』
そしてチャイムがなる
授業が始まり、いつものように授業を受ける。
静かに、再開の時を待ちながら・・・・・。
心の中ではすでに決まっている。
後は、その言葉を伝えるのみ。
この大きな一歩が、人生の方向を大きくかえる。




