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宣戦布告


今日も彼女は仕事を押し付けられているようだ。

あの量の本を片付けるのは今の彼女には難しいだろう。

「随分たくさんの本ね。わたくしも手伝いますわ。」

本を手に取りつつ話しかけた。

「なりません!お嬢様のような方に手伝っていただくなど……」

「あなたの主に怒られてしまうかしら?でも大丈夫よ!わたくしが勝手にやってるだけなのだから。」

有無を言わせぬようにさっさと歩き始めてしまう。

彼女も残りの本を手に慌てて追ってきた。

「ベル。書架はこちらであってるわよね?」

ベルに案内され、書架へと向かった。


書架につき、本をしまい始める。

「あなた……名はなんというの?」

彼女は諦めたような顔で応える。

「マリアと申します。」

「ローザリア様のところ居心地はどう?」

「……お答え致しかねます。」

マリアの顔に警戒が表れる。私のことを知っているのかもしれない。

「内情を探りたい訳ではないの。ただ……こんなふうに仕事を押し付けられるの初めてではないでしょう?」

「……。」

「その無言。肯定ととるわ。」

「……なにかお望みのことでも?」

「あなた、わたくしの所へ来ない?」

一瞬。

ほんのわずかに——

マリアの目が揺れた。

(……今の)

迷いではない。

計算。

「何故、私にそのようなことを?」

声音は丁寧。

だが、探っている。

(やっぱり普通じゃない)

「あなたの能力、潰すには惜しいわ」

「……能力、ですか」

マリアはわずかに視線を落とし、そして戻す。

「それは……どのような点を見て、そう思われたのでしょう?」

(試してる)

「さあ?」

あえて曖昧に笑う。

「でも——分かるのよ」

沈黙。

「……面白い方ですね」

小さく、そう呟いた。

「では——条件が一つ」

(来た)

「私は、選ばれるためにここに来たわけではありません」

その言葉。

(……ヒロイン)

「それでも、よろしいのですか?」

私は微笑む。

「ええ。むしろ好都合よ」

マリアは一瞬だけ目を細めた。

「……では、お仕えいたします」


マリアを引き抜き数日が経った。

ローザリア嬢の集団と廊下ですれ違う。

「リオラルーシュ・ラピスラズリ様。」

どうやら意図的であったらしい。

「リオラルーシュ・リラ・ルクス・ラピスラズリですわ。ローザリア・スファレライト大公令嬢。」

「……わたくしの侍女見習いが世話になっているようですね。」

「ローザリア様の……ですか?最近入った王宮の侍女見習いはとてもよく働いてくれています。」

「あの子はわたくしの管理下にあったと記憶しておりますわ。」

「そうでしたか?……でも困っていたようなので。」

少し困ったような顔で微笑む。彼女の周囲の一部に動揺が走る。

「後宮の人員の扱いは個人の勝手は許されませんよ。」

「ええ。ですがなぜかわたくしのもとには王宮の人員がおりませんもの。」

悲しげに言う。そしてベルにしか分からぬように合図をする。

「ですから……正式にわたくしのもとへ配属させました。構いませんよね?」

書類を見せる。そこには王太后殿下のサインとともにマリアを私付きにすると書かれていた。

「……マリア。あなたはそれでよろしいの?」

「リオラルーシュ様にお仕えしたいと思います」

即答。

迷いがない。

一瞬だけ、沈黙。

ローザリアは——微笑んだ。

「そう」

(……あれ?)

怒りではない。

「では、好きになさい」

その声音は、あまりにも穏やかだった。

「ただし——」

わずかに視線が細くなる。

「その選択の責任は、すべてご自身で負うことになりますわよ」

(……来た)

私ではなく、マリアに向けている。

「承知しております」

マリアも揺れない。

ローザリアは満足そうに頷いた。

「ならば結構」

くるりと背を向ける。

去り際。

「……良い拾い物をなさいましたわね」

振り返らずに言い残す。

(これでようやく1枚の手札を手に入れた。)

だが……もう戻すことはできない。

――戦いの火蓋は切って落とされた。

Xでも書いたりしてますが、小説を読み返す手が止まらないためしばらく更新をお休みします。楽しみにされた方いらっしゃいましたら申し訳ございません。

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