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11話 そして物語は動き出す



「ん……」



カーテンの隙間から部屋にさす光で目が覚める。

気付けば腕の中には、フェリクスが丸まっていた。

その温かさに思わず二度寝をしようかと考えて目を閉じる。

といっても隙間からわずかに見える外の様子をみる限り間もなく侍女が起こしにくるだろう。



(……となれば、二度寝は出来ないか)



一人そう結論を出すと、フェリクスに顔を埋めながらまだ覚め切らない頭を動かす。



「もうあれから四年半も経ったのね……」



自分が転生者であることを自覚した事件から四年半経ち、私はもう間もなく15歳になる。

腕の中で眠るフェリクスも拾った頃は子猫だったのが、もうすっかり成猫なり、成長期である私の身体も大きくなった。

身長は、20センチ程のびたしただの寸胴だった身体も少しは凹凸が出来るまでにはなった。



(といっても、巷で噂になる令嬢は容姿端麗だけど)



やはり、ゲーム本編に出てくる悪役令嬢や他のルートで出てくる他の恋敵は、

本格的な社交界デビュー前でも巷で噂に上がるし何度か開かれたお茶会で実際に会うと格の違いを感じた。

実際ゲーム内で主人公の親友として出てくる私の身体は平凡そのもので秀でているものは家柄。

主人公が攻略相手に上手く出会うためのきっかけになる都合のいいキャラクター。

まさにモブ街道を突き進んでいるのだ。



といってもここは『今の私』にとっては現実なのでこの四年半間、

淑女としての礼儀作法を学ぶだけでなく魔法についてもあれからずっと学び続け、今では兄にも一目を置かれる程の腕前になった。

結婚をしなければ家の穀潰しになるかと思ったが、この力を鍛えて就職までこぎ着ければ役に立てるのではないかと思えてきた。



(これも殿下のご配慮のお陰ね)



あれから、光属性の魔法について扱える人間が少ないためかよく殿下は気を遣ってくれていた。

段々と座学だけでは学ぶに足りなくなってきたと思っていたら、殿下は光魔法に長けている宮廷魔術師を紹介してくれたのだ。

しかも紹介することと併せて父上たちにも話をつけてくれていたようで、スムーズに宮廷魔術師に学ぶことが出来たのだった。

お陰で2週間に1度宮廷図書館に通いつつ、週に1度屋敷へと来てくれる宮廷魔術師に本格的な光属性の魔法について実践を交えて学ぶことが出来たのだった。




……




「殿下、この度は本当にありがとうございました」


すぐに感謝の気持ちをつづった手紙をお送りしたものの、直接感謝の意を伝えたかったので後日メリルお兄様に会いに屋敷に来られていた殿下に声をかける。

こうして兄たちに会いに来た殿下とこうして殿下の帰りの迎えを待っている間、庭先で少しの雑談をすることも気づけば日常とかしていた。




「ああ、カメリア嬢か。有意義な時間を過ごせているか?」

「はい。殿下の細やかなご配慮のお陰でとても有意義な時間を過ごせております」

「それならよかった」




まだ若いというのに、直属の部下ではない私にも気遣う殿下は本当に優しい方だと思う。

ゲームのエンディングでも語られていたけれど、殿下が国のトップについた未来は明るく善良で仁君として殿下は後世に語られるのだろう。

流石、ゲームのメインヒーローであり、メイン攻略相手といったところだ。

思わず神様だと拝むと、それに気づいた殿下が呆れたような様子でこちらを見る。



「カメリア嬢、何故急に拝みだしたんだ?」

「いや、殿下は優しくて神のような方だなあと」

「ふっ……なんだそれは」

「だってこんな私のために魔法を学べるように、力を貸してくださったじゃないですか。

 普通、私みたいなただの令嬢が魔術師の中での選ばれた者しかなれない宮廷魔術師に直接魔法を学ばせてもらえる機会なんてなかなか得ることができないです」




公爵家といってもここまで殿下に力を貸してもらうなど滅多にない。

それでもこうして気にかけてくれているのは優秀な兄や父のこれまでの活躍があったからだろう。

私自身は何もしていないのに、家族たちの活躍の恩恵を私が受けてしまうのはなんだか少し申し訳なくなる。




「こんな私のために、などと自分を卑下するな。それに私は、自分がしたいようにしているだけだ。

 以前も言った通り、光属性の魔法を扱える人間は少ない。

 それを扱える人間が増えればそれは国のためにもなる。だから、別に優しいわけではない」

「そうだとしても、有難いのです。

 それに、私が魔法について悩んでいることを話す前から、悩んでいる様子の私に声をかけてくださったではないですか」

「……そうだったか?」

「はい。声をかけてきた相手が殿下でとても驚きましたけど……とても嬉しかったです」




あの日の事は私の中ではとても強い印象である思い出だったから今だに鮮明に覚えている。




「……確かにカメリア嬢と初めて会った時は驚かされたな」

「へ……?」



殿下の言葉に、何のことかと一瞬首を傾げそうになったものの、

その後殿下が少し悪戯っぽう笑みを浮かべて告げた言葉に自分の失態を思い出す。



「なんせメルリを待っていたら突然猫が胸元に飛び込んできたと思ったら、その後にカメリア嬢もすっ飛んできたのだからな」

「あああ!! 本当に申し訳ありません!! あれはどうか忘れてくださいませ」

(は……恥ずかしい!!)



そう私がうなだれると殿下は肩を震わせながら笑うのだった。




……



今も思い出すと羞恥で顔に熱が集まるのを感じる。

そう言えば、淑女たるものあのような状況は、とても恥ずべき思い出だ。

私にとって大切な思い出だったが、その日から少しほろ苦い思い出になったのだった。




(この御恩は、主人公と殿下の恋愛サポートで返さなければ……!!!!

そう……あれから四年半経ったということは、もう間もなくでシナリオ本編が始まるということ)




あと半年ほど経てばこの世界が舞台である「音色奏でる世界で~truth Kiss~」が始まる。

推しである主人公に会えるというのが楽しみな反面少し不安な点がある。




「……よくある転生ものみたいにオリヴィアの性格が改変されて、

 悪役令嬢みたいな感じになっていませんように」




ただただそれだけどうしてもかなえて欲しい。

折角楽しみにしていたのにそんな悪改変はごめんだ。



(まあ、私は悪役令嬢ではないからその改変は可能性は低いはず)

(推しというのもあるけど……せっかくなら本当の意味でも親友になりたいし)



そう物語に決められた『役柄』だとしても本当の意味でも親友になれたら嬉しい。

そして本当の意味で親友が幸せになるための手助けになれたらそれはとても嬉しいものだと思うのだ。




(それに殿下にも幸せになって欲しい……)



元々はゲームのキャラクターとても好きだった殿下だったが、

魔法について手配してもらったことは勿論直接かかわっていく内に殿下の深慮深さや賢明な部分を垣間見る機会がありより尊敬する気持ちが募った。

何年もこう交流をしているとやはり親しみを覚え、幸せになってほしいと思うようになったのだ。




「二人が出会うシーン、私が鍵なんだもんね。緊張するけど……楽しみだなぁ」





何度もゲームで繰り返しみた恋愛物語が自分の眼の前で始まるのだと思うと、気持ちが高揚して思わずベットの上でゴロゴロと転がる。

すると、私が急に動いたものだがら足もとでくつろいでいたフェリクスが驚かせてしまったようでベットから飛び降りる。



「わ!! ごめんフェリクス。まさか、足元にいるとは気付かなくて……!」




そうフェリクスに慌てて謝っていると、朝の支度を手伝いに来たアリアが寝室の扉をノックするのだった。


















またのろのろですが、更新していけたらいいなと持っています><

気長に更新を待っていただけると幸いです!


(追記2025/11/16)

久々に更新となりました。

見直した流れで色々なところを修正しました。


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