出会い刻 I
「んっ……」
私は目を開けた。
「……ここは…どこ?…」
そうポツリと呟き、辺りを見渡した。
地面には石畳が並び、建物は煉瓦造り、上を見上げると雪が降っているということがわかった。
しかし、ここがどこなのか見当もつかず、辺りは真っ暗で誰かが周りにいる気配もない。
とりあえず立とうと思ったが、足に力が入らない。
少しずつ体の感覚が戻ってきたのか、鈍い体の痛みと寒さが私を襲った。
「……誰か…助けて…」
思わずそう声を漏らしていた。
しかしその声は誰にも届かなかった。
そしていつの間にか私は意識を失っていた。
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「……み!君!大丈夫かい?!!起きて!!」
意識が戻り目を開けると、そこには緑色の目をした男性が、私に羽織っていたコートをかけ、一生懸命声をかけていた。
目を開けたことに男性は気づくと、
「起きたんだね!よかった…本当に心配したんだから……ここだとあれだし、僕の病院まで連れて行くね。ちょっと嫌かもしれないけど、僕の背中に乗っ……」
「貴方はだれ…?ここはどこなの…?」
私は彼の言葉を遮ってそう聞いた。
「……申し遅れたね、僕の名前はルシオだよ。医者をしてる。放浪しながらいろんな国の人の病気を見てるんだ。名乗りもしない者にノコノコ着いて行きたくないよね。……とりあえずゆっくり話をしてたら凍え死んじゃうから、まずは病院に向かおうか、それからゆっくり話そう。君、ここの村の子じゃなさそうだしね。立てるかな?」
「…は、はい。」
足に力を入れたが、さっきと同様立てなかった。
「すいません、足に力入らなくて……」
「そうか……じゃあ…よいしょっと」
彼は私に近づくと、お姫様抱っこをした。
「えっ?!」
声を出したが自分でもわかるほど弱々しく、
抵抗する力も残ってはいなかった。
でも、なぜか安心できた。
彼のことは信用して良さそうだと直感が言った。
ルシオは揺らさないように、早歩きで病院に向かっていってくれたのだった。