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2.縁組2

 人生とは分からないものですね。

 フランツ皇帝が選んだのは、私ではなく、妹のユリアだったのですから。


「な、何を言っているの!? フランツ!」

「ですから、私はユリア王女を妻に迎えたいのです」

「自分の言っている意味を理解しているの!?」

「もちろんです」

「ユリアを妻に迎えるということは、彼女は帝国の皇后になるということなのよ!」

「私の妻になるのですから、当たり前ではありませんか」

「フランツ! 結婚は国家間の問題なのです! 未来の皇后にはそれなりの品位が求められるのですよ!」


 伯母様は顔を真っ赤にして、皇帝を諭していますが、ユリアに一目ぼれしてしまった皇帝には何も聞こえていないのでしょう。先ほどからユリアに釘付け状態。きっと、伯母様の言葉は半分も頭に入っていないのは明白でした。

 当事者のユリアは目を白黒させて、何が起こったのか理解できていない様子。両親とお兄様は顔を真っ青にしていますし……。ユリアは私より三歳年下の十五歳。まだまだ子供です。いえ、この場合、ユリアの精神が幼い、というべきでしょうか。

 私は両親をちらりと見ると、顔色が青から白くなり始めているのが分かりました。精神負荷が酷いようです。逆に、お兄様はもう顔色が元に戻っていました。諦めと今後の算段を考えているのかもしれませんね。


「母上、私の運命の女性はユリア王女です」


 フランツ皇帝は、きりっとした表情で言い切りました。

 知らない者が見たら、とても素敵に見えたでしょう。

 ただし、周囲の雰囲気を絶望に落とし込んでいましたが……。

 帝国側は、「エウニア王国の王女なら問題ないのでは?」「結婚相手が姉から妹に変わっただけで……」と、内心思っているのが透けて見えました。

 どうやら、事前調査を怠っているようです。

 伯母様の推薦だからでしょうか?

 それとも王女ならば、一定数の教養を持っていると、捉えているのかもしれませんね。

 他の姉妹たちなら問題はなかったでしょうけれど、ユリアは別です。亡き祖母に生き写しの美貌を誇るユリアは、お父様に溺愛され、教養を身に付けていません。

 賢王と名高いお父様の唯一の欠点がユリアを甘やかすこと。

 王妃であるお母様が諫めてもダメで、なかばユリアの教育には匙を投げていたのです。

 諸悪の根源であるお父様といえば——


『ユリアは国内の貴族に嫁がせる』

 その一点張り。

 国内の貴族なら目をつぶってくれると踏んでいるあたり質が悪いですわ。押し付けられる側の迷惑も考慮してほしいくらいです。

 黙って嫁がせると間違いなく苦情がきます。

 それを伝えても……。

『文句を言わない貴族家を幾つか選んでだ。その中から候補を絞ってる最中だ』

『美しいユリアを娶れる栄誉を得られるのだ。皆、泣いて喜ぶはずだ』

 とのこと。

 文句を言わない、のではなく「文句を言わせない家」の間違いでしょうに。まったく。

 確かにユリアは美しいですわ。

 人並外れた美しさに天真爛漫な性格。

 私だってすぐ下の妹は可愛い。お兄様も同じです。

 お兄様は王太子として、私もまた「王太女になれる器いざというときのスペア」として教育されてきました。自由奔放に振る舞えるユリア()を羨ましいと思わなかったのは、偏に、お兄様と一緒に勉学に励んでいたからでしょう。同時にユリアは、私とお兄様にとっては癒しの存在でもあったのです。……お父様が大の動物嫌いで、王宮でペットを飼えなかった反動とでもいいましょうか。ユリアの後に産まれた弟や妹がいるにも拘わらず、今に至るまでユリアを愛玩対象にしていました。

 本当に、今更です。

 まさか皇帝相手に「その娘は王族としての振る舞いはできません」など、言えるはずもなく……。いえ、流石に詐欺だと思われては困りますので、遠回しな言い方で伝えたのですが……。どこまで理解しているかは定かではありません。伯母様は察している様子でしたが、恋に目が眩んでしまっている皇帝には何を言っても無駄だったのでしょう。ユリアは、帝国に嫁いでいきました。



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― 新着の感想 ―
なんというか、エリザベートですねぇ…
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