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視界が暗転した。
刹那、網膜に光が差す。
眩しさに目を伏せた。
瞼の裏、光の輪がクルクル廻って広がっていく。
さわさわと空気の振動が鼓膜にそよいだ。
そして、静寂……
「ここは?」
息を一つ吐いて、ゆっくり瞼を持ち上げた。
「………………勇者様」
声が聞こえた。
……勇者様。
勇者様……
勇者様。
小さな波紋が水面を揺らし、さざ波が揺れ動くように。
声がさわさわ広がっていく。
「勇者様、ご帰還バンザーイ!」
ウオオォォオオオーーー!!
大喝采が広間を揺るがす。
「魔王討伐おめでとうございます!」
「よくぞご無事で!」
「無事で良かった!良かったです! 」
「お待ちしておりました!」
「ありがとうございます!」
皆からの歓喜の声援が飛び交う。
カッ
カッ
カッ
金属質の音が広間に響く。誰からともなく、右手に握る長槍の柄を床に打ち付け始めた。
ダッ、ダッ、ダッ、ダッ
ダッ、ダッ、ダッ、ダッ
左足でリズムを取って、足踏みする。
王国騎士団のセレモニー
最大の歓迎と、最高の敬意と喜びを表している。
カッカッカッカッ
ダッダッダッダッ
カッカッカッカッ
ダッダッダッダッ
ありがとう。皆、ありがとう。
俺を待っててくれて、ありがとう。
一緒に喜んでくれて、ありがとう。
「ありがとうございます!!」
ウオオォォゥオオオーーーッ!!