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「王宮内のどこかに落ちていると思いますので、お気になさらず」
「気にします」
「では正式礼装を転送しますね。着替えましょう」
「……スルーしましたね」
「正式礼装・紫盧遮那装」
ほぼ黒に近い装束ではあるが、ほのかに藍色を含む。
この国で「宇宙の色」とされている。
首元に紫のスカーフ。
実物を見るのも初めてだし、もちろん着るのも初めてだ。
特別な装束だと聞いている。
そしてカッコいい!
「とてもよくお似合いです」
「ありがとう」
馬子にも衣装……かもしれないけど。褒められると嬉しい。
「マントはそのままお召し下さい。色合いが素敵です」
夜に散りゆく夕日色の空。
それとも、消えゆく星を儚く思う夜明けだろうか。
「こちらを」
スカーフ留めの繊細な細工がキラリと首元で光った。
ほんとうに明けの明星みたい。
「カッコいい」
自分で言うのも何だけど、ほうっと溜め息が漏れてしまう。
「はい」
隣でにこりとゼフィルさんが微笑んだ。
……ん?
ところで何だかスースーしない?
着慣れない衣装だからだろうか。
(なんか体がスースー……)
「ギャアァアー!」
「どうしましたか、ヒイロ様」
「なんでっ?」
どうして俺は……
「パンイチなんだァァァーッ!」