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「……様、ヒイロ様」
「はは、はいっ」
「そろそろ謁見のお時間です」
「はは、はい。……謁見?」
「我が君主との謁見ですよ。話聞いてましたか?」
「はい」
「ほんとうに?」
「……いいえ」
「やっぱり」
ふうっとゼフィルさんが溜め息をついた。
だって……
ノーマルな俺が見目麗しい貴族のご令息とお見合いなんて、ハードル高すぎる。
なんなんだ?このBL展開は?
(もしかしてBLスキル?)
ブンブンブンッ
勢いよく首を振る。
そんなスキル身についてない!
(……筈だ。たぶん)
「だめですよ。いくら巨根好きだからといって、陰茎の事ばかり考えていては」
「考えてません!」
「はいはい」
軽くあしらわれてしまった。う〜……
「お話聞いていなかったでしょうが、この後は私がレッスン担当です」
「レッスン?」
マナーとか礼儀作法とかだろうか。
それとも。
「舞踏会のダンスのレッスン?」
異世界で王宮で貴族といったら、これだよね!
「それもありますが。ヒイロ様には立派なゲイになるべく、受け様レッスンを受けて頂きます。座学で知識を身につけ、実習で技能を身につけて頂きます!」
「なにそれーッ」
座学で知識は何となく分かるとして……
(実習って、なに?)
(技能って、なに?)
なにするのー!?
「私のレッスンは厳しいですよ……フフ」
最後のフフって、なに?
なぜに笑った?
……最早恐怖でしかない。
俺の明日はどっちだ?
「おやおや?そんな怯えた顔をされると、食指が動いてしまいますよ」
フッと笑んだ吐息の音が首筋を撫でた。
いつの間にか、ゼフィルさんが背後に立っている。
「ねぇ、ヒイロ様。王様なんかほっといて、今ここでヤっちゃいますか?」
指先が髪をすいて、囁く息の熱が耳朶を這った。
ゼフィル……さん?
「ヒイロ様が望むなら……」
「侍従長、ほんとうにお時間ですよ』
「わっ」
「わっ」