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 ドア寄りの壁側。

 色素の薄い栗色の髪の小柄な青年が、礼儀正しく佇んでいる。


(いつの間に?)

 まるで気づかなかった。

 隣でゼフィルさんも声を上げたって事は、俺だけでなくゼフィルさんも気づいていなかったんだ。

 彼の存在に。


 魔物って訳ではなさそう。

 王宮では訓練のために、わざと魔物を見過ごしていると聞いたが、そういうのではないようだ。

 人型の魔物もいるけれど。

 危険は感じない。《直感》がそう告げている。

(彼は人間だ)

 たぶん。


「いつから?」

「えぇっと……結構前からですね」

 全く気配を感じなかったのだが。

「前からって言うと?」

「袋とじオープン!……のあたりです」

「エエエッ!」

 それっ

「前も前。かなり前ですよ。ほんとうですか?」

「はい、ファイナルアンサーです」


 ……いたんだ。

 静かに微笑した彼は、ゼフィルさんとのやり取りをしっかり把握している。


「すごいです!気配を完全に消すスキルなんて。隠密か何かですか」

「えっと……これは〜」

「入る時はノックしろと、いつも言っている筈ですが」

「申し訳ございません、侍従長。ノックしたのですが〜」


 ハァァとゼフィルさんは、額を抱えて溜め息をついた。


「いつものですか」

「スキルが常時発動するタイプなんですか?」

「いいえ、違います。気配を消すスキルなんて持ってませんよ」

 しかし、完全に気配を消していた。

「じゃあ魔法?それともマジックアイテムですか?」

「ハズレですよ、ヒイロ様。勇者様といえども彼の特性の解析は不可能です」

「エエエッ」

 想像の遥か上をいく。それほどの逸材なのか。

「そして彼は隠密ではありません。私の部下で侍従です」

「エエエッ」


 気配を消せる彼を隠密ではなく、侍従にするなんて。王宮の人事はどうなってるんだ?


「人事に期待しないで下さい。そもそも私が侍従長である事自体おかしいんです」

「アハハ……」

 笑うしかない。

「話が逸れました。気配を消す彼の能力についてですが……」



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