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「国語辞典オープン!」
勇者装備の国語辞典によると……
「袋とじとは『ペーパーナイフ等で紙を切らないと見られない機密文書である』」
「では開けますよ」
護身用のナイフを素早く取り出すと、華麗な手さばきで、ものの見事に紙と紙を寸断してしまった。
アンティークのソファーに腰掛け、優雅に佇む、ニューンブル伯爵ご令息。
知的な相貌は、ほかの貴族さえ圧倒する気品を漂わせている。
それでいて眼差しは凛々しい。
(こんな高貴なイケメソさんが局部を晒す筈がない)
俺は信じている……
「ニューンブル伯爵ご令息ユリウス様は、近々家督を継がれて当主となるそうです。今回の婿取りも、ほかの皆様以上に真剣です」
元の世界で言うところの仕事ができるスパダリといったところか。
そんな人が……
(局部は晒さない)
しかし、砦は確かに存在した。
二重にしつらえられた『袋とじ』と呼ばれる最後の砦は、今まさに切り裂かれた。
この中に機密文書
(高貴な貴族のチソコ……)
「どうぞ、ヒイロ様」
かのお見合い写真がゼフィルさんの手から仰々しく、俺の元に差し出された。
貴族のチソコ
そんな物が、俺の手に渡ったお見合い写真の中に存在してはならない……
「袋とじオープン!」