コーヒーと酒の香り
冬の寒さが無くなり少しずつ春の暖かさが感じられる3月になった。あれほど慌しかったクリスマスなのに今優孝の周りは、平和になっていた。来週から四月に突入し次、学校に登校する時は、三年生になる。
そんな今日この頃春休みを満喫している優孝は、鞄に本を数冊詰め込む。これから図書館に向かいそこで本を読むことにしている。カルネを呼んで車で送ってもらう。
「頼むよカルネ」
図書館までは車で10分の道のり。車内でも真剣に本を読む優孝。
車が図書館に到着したことにも気がついていない優孝に車から降りてドアを開く。
「優孝様。到着しましたよ」
そこでようやく気がつく。鞄を肩にかけて車から降りる。
「それじゃ、3時間ほどしたら迎えに来てくれ」
「かしこまりました」
図書館内に入ると運がいいのか今日は、人がほとんどいなく席に座ると数人しかいないこれならリラックス出来て集中して読める。優孝は、先ほどの本を取り出して一人の世界に入り込んでいった。
それからどれくらいの時間が過ぎたのだろう。いや、実際はそんなに時間は進んでないのかもしれない。読み始めた時本のページは、残り300ページほどあったが今はあと、100ページほどになっていた。あと少しで読み終わり次の本に入ろうとした時だった。
――ガガッ。
優孝の隣に誰かが座ってきた。全然人がいなくて周りにたくさん席が空いているというのになぜすぐ隣に座るのか。
少しの間隣に座って来た人が気になった。だけど目線は本のままで。その隣の人は、なんだか香ばしいコーヒーの香りがする。だけど嫌いじゃない。
その直後。アクセサリーを机の上に置く音が聞こえ少しだけそちらに目線を向ける。
――おもちゃの指輪を銀のチェーンに繋げてる。変わった人だな。
それから優孝はまた、本の世界にのめり込んでいった。
「……おっと。もう時間だ」
3冊目を読み終えて時計を確認すると、丁度3時間をむかえるところだった。帰る支度をして不意に隣の席を見るとそこには、誰もいなかった。
図書館から出て駐車場に向かう。すぐにカルネの車を発見。車からカルネが出てきた。
「読書はどうでしたか?」
「うん。人が少なかったから良かったよ」
「……」
「どうした?」
カルネの視線が優孝の後ろに向けられていたので振り返る。だけどそこに誰もいない。
「誰かいたのか?」
「いや、なんだか女の人がこちらを見ていたので……でも、気のせいかもしれないですね。さっ、お乗りください」
屋敷に戻ってきてカルネが玄関を開けると。
「ゆたかぁさまぁ~」
「うわわぁっと。ミ、ミーヤ?」
いきなりミーヤが優孝に飛びついてきた。そして、なんだか酒臭い。
「ミーヤもしかして酒を飲んだのか?」
「へぇ?お酒ぇですか?飲んでなんかぁないですよ」
誰がどう見てもミーヤは酔っぱらっていた。
「離れなさい!」
カルネが引き離す。ミーヤは華麗に後ろにステップを踏んで、距離を置く。
「うむむ。カルネ。ゆたかぁさまの独り占めよくないぃ」
すると、トランプを取り出して不敵に笑いながらシャッフルし始める。
「こうなったらやるしかないですね。優孝様はお部屋に。ここはお任せください」
「ま、任せた」
「さて、お仕置きの時間ですよ」
パタパタと扇子を取り出すカルネ。
「負けないよぉ~」
カルネとミーヤの戦いは数時間続き、1階のフロアが荒れ放題になってしまったのだった。




