傍に一番似合うのは
「優孝を好きになったのは、中1の時だった。私は、今みたいに授業は、寝てるし先生とよく言い合いとかよくして孤立してた。むしろ1人になりたかった。その方が静かだし喋るとかめんどくさかったから。お陰で誰も私の声を掛けたりしなかった。……優孝は、違ってたけど」
フンッと鼻で笑う。それでちょっと優しい眼差しで海沙に言う。
「私がどんな場所にいても優孝は、私を見つけ出して『やっぱりここだったか』って言ってちょっと離れた場所に座って本を読みだすんだ。変な奴だろ?昼の時だって近くに来るし、自分の友達と一緒にいればいいのに。……優孝は、私が1人でいるのが気になってどうしようもないみたいだったよ」
「川中君は、優しいから」
「そんなある日。優孝が言ったんだ。『部活に入れば』って言われた時は、笑っちゃったよ。急に何言い出すんだよって思ったよ。でも、部活に入れば毎日私の傍に来なくなると思ってソフトボールに入った」
「どうなったんですか?」
「毎日は、来なくなったよ。時々部活の調子はどうだ?みたいのはあったけど。これで少しは、楽になれるはずだった」
急に悲しそうな表情になって席を立って窓際に移動して、振り返り寄り掛かる。自分の身体を抱きしめるかのように両腕を身体に回す。
「……寂しくなった。屋上で1人でいる時とか教室の時、あんなに私の傍に来てくれたのが時々になって。……もっと私の傍にいてほしい。くだらない話とか何も言わなくていいから、傍で本とか読んでいてほしい。そんな風になって、私は優孝のことが好きなんだって気がついた」
「じゃあ、この高校に入ったのって」
「そう。好きな人と同じところに行きたかったからここに来た」
「高1でも同じクラスになって嬉しかった。また、優孝と一緒だって。だけど、優孝は、あの金髪生徒会長と付き合うことになって。知った時は、辛かった。悔しかった。だけど、優孝が幸せなら……私は、没頭するかのようにソフトボールを続けた」
夏織の心の中に合った気持ちを聞いた海沙は、なんだか自分と似ているところがって共感していた。
「神山さんも優孝が好きなんでしょ?」
「えっ!やっ!そ、それは」
急に自分に振られあたふたしてしまう。
「分かるよ。隙があればよく優孝のこと見てるじゃん。バレバレだよ」
図星で何も言えなくなり顔が熱くなる。
「優孝は、私の傍が一番似合うから諦めてね」
「わ、私は」
――ガラガラ。
再び教室のドアが開きそこにいたのは優孝だった。
「あれ、神山さん。何でいるの?」
「わわわ。川中君!!わ、私は、その」
慌ててる海沙にアハハっと笑う夏織。
「女同士の秘密の話だよ」
「なんだそれ?まぁいいや。帰るぞ夏織」
なんだかもう慣れた感じで夏織の荷物を持って体を支える。
「神山さん。さっきの分かってね」
さっきの夏織が言った『優孝の傍にいるのは私が一番似合う』この言葉みたいに今、海沙の目の前に優孝の傍にいる夏織。その表情は、凄く満足そうでドヤ顔していた。




