放課後の教室で
「夏織。鞄持つよ」
朝。階段を上っていると一段一段慎重に上がっている夏織がいたのですかさず手助けする優孝。鞄を預かり体を支える。
「私。借りを作りすぎじゃない?」
「そんなのいいさ。というか、エレベーター使えばいいのに」
「……忘れてた」
「帰りも付き合ってやるから」
「ありがとう」
教室に到着し夏織を椅子に座らせる。
「先生にエレベーターの鍵下さいって言えよ?」
「えぇ~。優孝が言ってよ」
「自分で言えよ」
「ケチッ!」
「何がケチだ!笑わせるな」
「笑わせるつもりなかったんだけど!」
「いいから。ちゃんと言えよ」
ポンポンっと2回頭を優しく叩く。プクッと頬を膨らませて舌をちょっと出す夏織だった。
2人のやり取りを少し離れた席から、海沙が気になって見ていた。
その日の帰りのホームルームで担任からエレベーターの鍵を貰い、ありがとうございますっと言う。いつも態度が悪いがさすがに感謝の言葉を返した。
部活がある優孝は、終わるまで待っていてくれと言って教室を後にした。夏織は、また窓からグラウンドを見る。雲が増えてきて今にも雨が降りそうだ。
「……部活やりたいな~」
1人だけになり廊下からも生徒の声、気配が感じられなくなった。夏織は、松葉杖をつきながら優孝の席に移動して座る。そして、机に頭をつける。
「……優孝。優孝。優孝。もっと私を見なさいよ」
――ガラガラ。
教室のドアが開き優孝だと思い起きて確認すると。
「鹿野さん?」
「なんだ、神山さんか」
優孝だと思ったら海沙だった。残念がる夏織また寝ようと頭を下げた時。
「ど、どうして川中君の席に座ってるんの?」
夏織が優孝の席に座ってることに疑問を感じて声を掛ける。すると、めんどくさそうに海沙の顔を見て。
「別に優孝と一緒に帰るからここで待ってるだけだし」
優孝と一緒に帰るこのフレーズに海沙の心が揺らぐ。少し鼓動が速くなる。
「き、聞いてみたかったことがあるんだけど。……鹿野さんは、川中君のこと好きなの?」
数秒の沈黙のち夏織が言った。
「好きだよ。中学のころから」
当たり前のように普通に夏織は、言い放った。海沙の心がズキズキ苦しくなった。




